株式会社フジクラ(代表取締役社長CEO:岡田 直樹)は、ドイツに本拠を置き、ステラレータ方式(※1)によるフュージョンエネルギー(※2)発電所の開発を進めるProxima Fusion GmbH
(以下Proxima Fusion社)と、高温超電導線材の安定供給ならびに現地生産の可能性を共同で検討することについて、MOU(基本合意書)を締結しました。
本MOUに基づき、両社は今後、フジクラが長年培ってきた高温超電導線材の技術および製造に関する知見と、Proxima Fusion社が有するフュージョンエネルギー発電所の開発計画および将来需要に関する知見を活かし、欧州における高温超電導線材の安定的な供給基盤の構築に向け、製造拠点の技術面・事業面および経済面での実現可能性を評価していきます。

都内でMOUを締結
・フジクラとProxima Fusion社は、高温超電導線材の安定供給ならびに現地生産の可能性につ
いて共同検討を行います。
・フジクラの高温超電導線材に関する技術・製造ノウハウと、Proxima Fusion社の長期的な需
要および要求仕様に関する知見を組み合わせ、欧州における供給基盤の構築を目指します。
・本取り組みを通じて、フュージョンエネルギーの社会実装に不可欠なサプライチェーンの強靱
化と、日独両国の産業連携の発展に貢献します。
【本MOU締結の背景】
フュージョンエネルギーの実現には、超高温のプラズマを強力な磁場によって閉じ込め、安定的に制御する必要があります。高温超電導線材は、強磁場を発生させる超電導マグネットの中核材料であり、コンパクトで強磁場のフュージョンエネルギー発電プラントを実現するうえで重要な役割を担います。
フュージョンエネルギーの研究開発が実証段階から商用化に向けて進展するなか、今後、高性能な高温超電導線材に対する世界的な需要の拡大が見込まれます。こうした需要に対応するためには、生産能力の拡大に加え、複数の地域における安定的で強靱なサプライチェーンの構築が重要になります。
Proxima Fusion社は、マックス・プランク・プラズマ物理研究所におけるWendelstein 7-Xの研究成果を基盤として、QI-HTSステラレータ方式によるフュージョンエネルギー発電所の開発を進める企業です。これまでに累計6億5,000万ユーロ超を調達し、欧州で最も多くの資金を調達したフュージョンエネルギー企業です。
同社が開発する実証装置「Alpha」には約20,000km、将来の商用発電プラント「Stellaris」には約
40,000kmの高温超電導線材が必要になると見込まれています。
【今後の検討内容】
両社は、本MOUに基づき、主にドイツにおける高温超電導線材の安定供給ならびに現地生産について、技術面・事業面・経済面から実現可能性などを段階的に検討していきます。
Proxima Fusion GmbH CEO兼共同創業者 Francesco Sciortino氏
「ドイツおよび欧州は、フュージョンエネルギーの実現に向けて明確な意思を示しています。しかし、フュージョンエネルギー発電プラントに必要なサプライチェーンは、プラントそのものに先立って構築されなければなりません。
このため当社は、正味エネルギー生成を目指すステラレータ型実証装置『Alpha』、さらに将来の商用発電プラント『Stellaris』を見据え、今から高温超電導線材の供給基盤の構築に取り組んでいます。高温超電導線材の製造分野をリードするフジクラとともに、ドイツにおける高温超電導線材の安定供給、さらには製造拠点の可能性を検討できることを大変嬉しく思います。
欧州におけるフュージョンエネルギーのサプライチェーンは、世界の優れたパートナーとの信頼に基づく長期的な協力を通じて、一歩ずつ構築されていくものと考えています。」
株式会社フジクラ 代表取締役社長CEO 岡田 直樹
「フジクラは、長年にわたり高温超電導線材の研究開発と製造技術の高度化に取り組み、世界のフュージョンエネルギー開発を支える製品の供給を進めてきました。
フュージョンエネルギーの社会実装には、高性能な高温超電導線材を安定的かつ大規模に供給できる産業基盤の構築が不可欠です。
今回のMOUを通じて、フジクラが培ってきた高温超電導の技術とものづくりの知見を活かし、ドイツおよび欧州における供給基盤の構築に向け、実現可能性を検討してまいります。両社の協力により、
フュージョンエネルギーの社会実装と、持続可能なエネルギー社会の実現に貢献していきます。」
【Proxima Fusion社について】
Proxima Fusion社は、ドイツ・ミュンヘンに本社を置くフュージョンエネルギー関連企業であり、
マックス・プランク・プラズマ物理研究所から初めてスピンアウトした企業です。
同社は、ドイツのWendelstein 7-Xプログラムにおける科学的成果を基盤に、QI-HTSステラレータ方式による商用フュージョンエネルギー発電所の開発を進めています。2030年代初頭には正味エネル
ギー生成を目指す実証装置「Alpha」、その後、商用発電プラント「Stellaris」の実現を目指しています。
この構想は、50社を超える産業パートナーで構成される「Alpha Alliance」と、各分野の有識者からなるIndustrial Development Boardに支えられています。Proxima Fusion社はミュンヘンに本社を置き、チューリッヒおよびオックスフォードにも拠点を有し、エンジニアリング、科学、オペレーションの各分野で約200人の従業員を擁しています。
本社所在地:ドイツ・ミュンヘン
代表者 :CEO兼共同創業者 Francesco Sciortino
事業内容 :ステラレータ方式によるフュージョンエネルギー発電プラントの研究開発

Proxima Fusion社が開発を進めるフュージョンエネルギー実証装置「Alpha」のイメージ
【フジクラの高温超電導線材について】
一定の温度以下で電気抵抗がゼロとなる超電導材料のうち、従来の超電導材料に比べて比較的高い温度で超電導状態となり、強磁場中でも高い性能を維持できる材料です。フュージョンエネルギー、高性能な電力機器、医療機器、モーターなど、さまざまな分野への応用が期待されています。
フジクラは30年以上にわたり、高温超電導線材の研究開発および製造技術の高度化に取り組んできました。
フジクラの高温超電導線材は、1991年に独自開発したIBAD法(イオンビームアシスト蒸着法)を基盤としており、細い断面でありながら大電流を流すことができ、強磁場中においても高い通電性能を発揮することが特長です。
これらの特長から、フジクラの高温超電導線材は、フュージョンエネルギー発電プラントのプラズマを閉じ込め、制御する強力な超電導マグネットの重要な材料として期待されています。フジクラは現在、世界的な需要拡大を見据え、高温超電導線材の生産能力増強と安定供給体制の構築を進めています。
※1 ステラレータ方式
ステラレータ方式は、複雑な三次元形状の外部コイルが作る磁場によって、超高温のプラズマを閉じ込めるフュージョンエネルギー装置の方式です。プラズマに大きな電流を流す必要がないため、原理的に長時間の安定した連続運転に適していることが特長です。一方、プラズマを閉じ込める磁場を形成するため、複雑な形状の高精度なマグネットが必要となります。ドイツのWendelstein 7-Xは、この方式の発電プラントへの適用可能性を検証する世界最大のステラレータ型装置です。
※2 フュージョンエネルギー
フュージョンエネルギーとは、太陽で起きている反応と同様に、重水素や三重水素などの軽い原子核が融合し、ヘリウムなどの別の原子核になる際に放出されるエネルギーです。
燃料となる重水素は海水中に豊富に存在し、発電の過程では二酸化炭素(CO2)を排出しません。
また、少量の燃料から大きなエネルギーを生み出せることから、資源制約が少なく、長期的なエネル
ギー安全保障への貢献も期待されています。
このため、カーボンニュートラル社会の実現を支える次世代エネルギーとして、世界各国で研究開発が進められています。