特集

コドモからティーンまで幅広い集客力で
未来の顧客を創造する「渋谷の夏休み」

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■ティーンのメッカ、センター街にも防犯カメラを設置へ

多くの若者で賑わう渋谷センター街では7月28日から、今年6回目を迎える「七夕まつり」が始まった。8月10日までセンター街の街路灯が七夕飾りとイルミネーションで彩られる他、統一のTシャツを着た組合員が街の清掃活動を行う。渋谷センター街商店街振興組合副理事長の小野さんは「イベントも大事だが人の多いセンター街では防犯と美化に力を入れている」と話す。「人が大勢集まる場所なのでゴミが多く出るのは当然。出たゴミをいかに処理するかが問題」で、これを解決するためには「(渋谷に)来る人のモラルよりも、街のモラルを高めていくことが大事」だと加える。特にセンター街周辺で大きな問題となっている「シャッターへの落書き」も、描かれてもすぐに消すことの繰り返しが功を奏して、最近では被害の件数が減少傾向にあるという。一方、街の整備面では井の頭通りの整備を陳情し、第一期として歩行者と車が混在する宇田川町交番~東急ハンズ間の整備工事が間もなく始まる他、センター街の安全強化対策として今年12月までに8基の防犯カメラを設置する。

渋谷センター街(でじたる渋谷)
渋谷センター街:七夕まつり

■コギャル世代の遊び場は、卒業してもまた渋谷

ティーンを対象にした市場調査やプロモーションを手掛けるアイ・エヌ・ジー(宇田川町)は、同社が独自にネットワークした10代の女の子たちが同世代の消費者を対象に街頭インタビューやサンプリングなどを通じて「口コミ」プロモーションを行っている会社。それだけに今回の事件後、インタビューの対象とる女子中学生や女子高生の警戒心が急速に高まったという。

同社では独自の調査データをまとめたレポート「女子高生事情」を毎月発行している。最新号では、渋谷センター街を訪れる女子高生100名を対象に行った「夏休み目前」のトレンドリサーチを特集している。それによると夏休みは、普段は校則に縛られている女子高生たちが「長期間の休みだからこそできる」髪型やファッションに思い切ってチャレンジできるのが特徴だという。「夏休みにしたいファッションは?」という質問に対しては(1)エクステンション(32人)、(2)金髪(26人)、(3)日焼け(19人)、(4)ヘアカラー(16人)、(5)タトゥ(12人)の順となった。今年の夏は「超ロング」のエクステンションが注目を集めており、スタイルは「サラサラ系のストレート」が一番人気だが、選ぶ色は様々だという。上位トップ5の中にヘア関連が3項目を占めており、やはり普段できないことへのファッション欲求が高いことを伺わせる内容だ。

同社の中山さんに事件後の渋谷の様子を聞いてみた。「事件後は、中学生の女の子が母親を伴って渋谷に来るケースを目撃することが多くなった。どうせ止めても行くのであれば、せめて『母親同伴』ということで折り合いをつけているのかも。見方を変えると母親という『財布』を同伴させることで、かえって売り上げが伸びた店もあるという。また、渋谷での最近の微妙な変化についても話してくれた。「昔、渋谷で遊んでいたコギャル世代は、今20代になってもやはり渋谷で遊んでいる」。中山さん自身も横浜在住でありながら「今も昔もずっと渋谷が遊び場所」と話す。

アイ・エヌ・ジー
アイ・エヌ・ジー:女子高生事情

渋谷では今、こうした「コギャル卒業」世代をターゲットにした市場が注目を集めている。「お姉系」の人気ブランド「セシルマクビー」を手掛ける婦人服のデリカ(本社:中野区)は夏休み後半戦の8月23日、新業態店舗「mimily(ミミリー)」の1号店を渋谷109の6階にオープンさせる。店舗は「セレブのプライベートルーム」をイメージしたゴージャス感を演出する。同店のターゲットはズバリ「セシルマクビーを卒業した」20~27歳の女性。テーマは「Always ontime」で、セレブカジュアルをベースに月替りでテーマ設定を行い、毎週新製品の投入を予定している。価格帯も「セシルマクビー」より高めに設定され、カットソー、ニットで4,900~15,000円。「セシルマクビー」発の新ブランドとして注目を集めそうだ。

セシルマクビー

一方、ナルミヤインターナショナルの人気ブランドが集積する109-2でも、夏休みに入ってジュニアファッション売り場が活気付いている。主要ターゲットは小学生であるため、同店の来店客は「ほとんどが親子連れ、もしくは祖父・祖母を伴ったファミリー層」(同社広報、室田さん)だという。8月2日には7階の「デイジー ラバーズ」がリニューアルオープンする他、同日、3階には同社とエスペランサのコラボレーションによる「ジュニアシューズ」専門店「Shoe Cream Bar(シュークリームバー)」1号店がオープンする。オープン当日はジュニア世代向けファッション誌「ニコラ」や「ピチレモン」のモデルが「1日店長」を務めるなどのイベントが予定されている。小学生の中でも「高学年だけでなはく、今はお姉さんの影響などで、小学1~2年生でもすでにファッションの意識が高まっている」(室田さん)と、ファッションの低年齢化を示唆している。

ナルミヤインターナショナル

■渋谷周辺には多彩なファミリー向けイベントが集積

一見「若者の街」というイメージが強い渋谷だが、周囲には児童を対象にした公的機関なども集積しており、毎年夏休みに入ると様々なイベントが開催されている。

国立代々木競技場オリンピックプラザ特設会場で7月16日から10月26日までの100日間開催されているのが「ウェンディーズ ジュラシック・パーク・インスティテュート・ツアー」。映画「ジュラシック・パーク」のストーリーをモチーフにした「研究所内」を、最大100名程度で「キャラバン」を組み、ガイドの先導で恐竜のラボエリアや飼育センター、トレーニングセンターなどを約60分かけて巡回する体験型イベント。エンディングには来場者を驚かせる演出も用意されている。

同イベントは、事業資金の集め方でも話題を集めた。イベントを運営するジュラシック・パーク・インスティテュート・ツアー社では事業資金の一部を証券化して、個人投資家などから資金を公募した。「ジュラシック・パーク証券」は1口50万円で販売され、入場料や物品販売などで利益が出た場合は出資者に利益が分配される。また、7月26日には同イベントのPRのため、イベントのTシャツを着た約1,000人のスタッフが「瞬時に」ハチ公前のスクランブル交差点を交差させた。また、同時にハチ公前の3つの大型ビジョンを使ったCMのシンクロ放映も行い、行き交う人の注目を集めた。

ジュラシック・パーク・インスティテュート・ツアー
ウェンディーズ ジュラシック・パーク・インスティテュート・ツアー ジュラシック・パーク・イベントPR

公園通りにある「たばこと塩の博物館」では夏休み期間中、塩の学習室「Dr.ソルトの冒険島」を開催。サバイバルゲームや体験・質問コーナーを通じて、塩の働きや役割が学べる。料金は大人100円、小・中・高校生は50円。

たばこと塩の博物館/Dr.ソルトの冒険島

神南にある電力館は「サマーフェスティバル」を開催。「めざせ電気の博士号」をキーワードに、早押しパネルクイズや各種ワークショップ、科学実験メニューを用意するほか、懐かしのヒーローから最新キャラまでを集めた展示イベント「テレビアニメ大集合!」も開催。8月22日から31日までは、現役大学生による「宿題相談コーナー」も開設される。一部イベントを除き、入館料は無料。

電力館

東京都児童会館では8月10日まで「夏休み児童少年演劇フェスティバル」を開催中。同フェスは、子供たちのために劇を創作する劇団の協同組合(児演協)と同館の共催によるもので、人形劇、ミュージカル、舞台劇、音楽劇など20の演目が上演される。

東京都児童会館

こどもの城でも夏休み期間中、多彩なイベントが用意されている。世界各地の楽器やがらくたを集めて作った楽器など、見たことも聞いたこともない楽器を集めた「面白楽器商店街」や、様々なスポーツ遊びに挑戦しながら体の各部位の機能を学ぶ「からだ体験ツアー」など、同館では体験型のメニューを各種揃えているのが特徴。入場料は3歳以上18歳未満の子供が400円、大人500円。

こどもの城/2003夏休み特別期間

こどもの城に隣接する「UNハウス」では、日本における「アフリカ年」を記念して、「「5つのアフリカ物語~アフリカの自然と文化展~」を8月31日まで開催。期間中、週替わりでアフリカ大陸の5つの地域を特集し、パネル展示や人形劇などを通じて各地域の文化を伝える。入場無料。

UNギャラリー

夏休み期間中、上記の「UNギャラリー」「こどもの城」「東京都児童会館」「電力館」「たばこと塩の博物館」「NHKスタジオパーク」の6つの施設に隠されたキーワードを見つけてパスワードを完成すると記念品がもらえる「渋谷スタンプラリー」を開催する。

今回の事件に関連して「渋谷の街そのものが悪いのではなく、渋谷の街を利用する大人の問題」という声をよく耳にする。元来、渋谷周辺にはこども向けの施設が多く、さらにファッションに対する目覚めの低年齢化などを背景に、「渋谷に行きたい」と願う子供たちの気持ちを抑えるのはもはや難しくなっている。来街する若年層が増えると客単価が下がることに懸念を抱く声も少なくないが、元コギャル達が未だに渋谷に居ついている例を見ると、少子化の進む中、若年層の取り込み=未来の顧客づくりとも映る。マーケティングの視点で捉えると、「コドモの街」だと言われて久しい渋谷の底力はこの辺にあるのかもしれない。当然のことながら、未来の顧客である若年層の取り込みに「安全」は不可欠な要素。1日約220万人を誇る巨大ターミナルである以上、他の都市同様、様々なリスクをはらんでいるのもまた事実。美化活動や防犯カメラの設置など、目立たない部分での地道な努力が華やかな表舞台を支えていく。

たばこと塩の博物館 電力館 東京都児童会館 渋谷スタンプラリー
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