「Cafe J Net NEWNEW渋谷店」(宇田川町)は、話題のオンラインゲームが揃う最新のネットカフェ。同店が設けている「ペアシート」は「男女のカップル以外に女性同士、男性同士、親子での利用が多い。特に女子高生同士の利用が目立つ」(同店スタッフの田中さん)という。ペアシートの利用率がアップするのは金曜・土曜・日曜と深夜。シングルシートが「8時~23時」240円/30分、「23時~8時」180円/30分に対し、ペアシートは「8時~23時」440円/30分、「23時~8時」360円/30分。「8時~23時」の時間帯にペアシートを利用すれば、シングルシートを2席使うより安くなる。同店では利用客が増える深夜帯には「ナイトパックS」(受付時から5時間・1,960円) 「ナイトパックL」(受付時から8時間・3,060円)を提案している。田中さんは「当初予想した通り、ペアシートで朝までゲームを楽しんでいるカップルや女性同士の客が多い」と手応えをつかんでいる。
Cafe J Net NEWNEW「インターネット未来マンガ喫茶バグ-ス」(宇田川町)もペアシートを設け、カップル需要に対応している。同店ではマンガ50,000冊が揃う都内屈指のマンガ喫茶。パソコンやテレビも備えてあり、利用の仕方は様々。ペア席は1時間840円(金・土・日・祝・祝前日は30円アップ)。「ナイトパック」(23時~8時)のペア席は2,100円(金・土・祝前日は100円アップ)。同店でもペアシートは人気が高く、「互いに好きなマンガを何時間も読み続けるカップルは少なくない」という。
インターネット未来マンガ喫茶バグ-ス「セルリアンタワー東急ホテル」(桜丘)で2月9日~14日まで実施している期間限定宿泊プラン「バレンタインスペシャル」は、2月12日現在「すでに予約は一杯」(同社広報部の塚原さん)の状態。また、3月31日まで開催する宿泊プラン「ながれ星」(1名33,500円)も、カップルに人気の高いプラン。特徴は東京の夜景が見渡せる「ビューバス」。デラックスツインが用意され、シャンパン(カナッペ付)、朝食はルームサービス、フィットネスクラブの利用もできる。塚原さんは「バスルームから夜景が見えるとあってカップルに大好評。大々的に告知はしていないが、予約が殺到している」と話す。“思い出づくり”と共に、手の届く範囲の“プチ贅沢”や都会の“プチ・リゾート”感覚が利用者に受け入れられている。
セルリアンタワー東急ホテルカップル御用達のフレンチやイタリアンレストランではグラスワインサービスなどを取り入れるケースも少なくないが、デフレ経済を反映し、2人で食べる“お得感”を訴求するレストランも増えてきた。「カプリチョーザ公園通り店」(宇田川町)はレギュラーメニューに「2名様のウキウキセット」(3,180円)を設け、人気を集めている。内容は、「お好きなドリンク2杯」+「オリジナル特製アンティパスト」+「お好きなスパゲッティ・ピザ」+「自家製ケーキとジェラートの盛り合わせ」+「コーヒーまたは紅茶」。同店を運営するWDI広報担当の大林さんは「同セットの場合、単品で注文する合計料金より1,000~1,500円安くなるので人気が高い。また、単品の組み合わせを迷う顧客にとっては、これ位のボリュームを2人で食べると、丁度満腹感を感じる量の組み合わせになっている」と説明する。同店では3~4名で入店して、「2名様のウキウキセット」+単品を選択するグループも多く、「値頃感とボリュームに加え、フレキシブルな組み合わせも可能である点が人気のポイント」(大林さん)だそうだ。
WDI道玄坂のミニシアター「シブヤ・シネマ・ソサイティ」では、毎週月曜を「カップルディ」と定め、カップル(男女不問)で入場すれば通常1,800円の映画を1人1,400円、合計2,800円で観ることができる。カップルで800円得するとあって好評とのこと。利用客は男女のカップルはもちろん、女性同士、男性同士という組み合わせも多く、デート需要だけでないようだ。同社の近藤さんによると、「サービスを開始したのは2001年。カップルディは多くの支持を集めているので、今後もサービスを継続する」とのこと。
シブヤ・シネマ・ソサイティ完全予約制のリラクゼーションエステサロン「プトリ・デヴィ」(南青山)は、マンションの最上階に広がるエキゾチックムードにあふれる空間。美白コース、部分スリムコースなど女性向けエステのほか、首・肩・腰すっきりコースなどマッサージも充実している。同店では2002年5月に始めた「ペア特典」(2名で予約すると、全メニュー2名で2,000円割引)が好評で、継続して実施中。男女問わず、友達、家族などで利用できるのがポイント。女性同士の利用が多いが、カップルの利用も少なくないという。
プトリ・デヴィ2000年に池袋から渋谷に移転した「渋谷占いの館」(道玄坂)でも、カップル需要は少なくない。スタッフの板東さんによると、カップルで同館に足を運ぶケースで最も多いのが「お互いの気持ちを確かめたり、相手がどう思っているのかを知るため」だという。一方で、バレンタインシーズンのこの時期は恋愛相談に訪れる女性のひとり客が目立ち、「チョコレートをあげるか否か、相手が自分のことをどう思っているのか」などの相談が増えるという。同館では電話鑑定を合わせると50名の占い師が登録しており、館内の占い師は常時4~5名スタンバイしている。人気の占いは「タロット」と「四柱推命」。板東さんは「相手の生年月日から相性を占うパターンが多い」と話す。客層は若者が中心だが、年配の利用客もあり幅広い。料金は20分3,000円で、以降10分毎に1,000円。
渋谷占いの館一方、カップルのためのカウンセリングを手掛けるのは「こころのマッサージルーム ピースマインド渋谷」。同店はJR東日本との提携により、JR渋谷駅新南口に直結した「ホテルメッツ渋谷」内の「ヘルシーアンドビューティキングダム」内に設けられたカウンセリングルーム。結婚前のカップルや夫婦間の様々な問題や悩みを、二人の相互作用やコミュニケーションに重点を置きながら改善を図るのが同店の特徴となっており、専用の個室で「臨床心理士」が対応する。相談内容は、コミュニケーションの改善、マリッジブルー、束縛・嫉妬、浮気、暴力など幅広い。渋谷という利便性の高い立地に加えて、カウンセリング機関としては珍しく「カップルカウンセリング」をメニューに掲げていることもあり、20~30代の利用が多いという。同店を経営するピースマインドの荻原社長によると「1年の中でもバレンタインやクリスマス前はカウンセリング件数が増える傾向にある。これは、この時期に多く組まれる雑誌の恋愛特集に刺激を受ける読者が多いからでは」と分析する。カウンセリング料金は50分12,000円、100分24,000円で完全予約制。
ピースマインド渋谷ここ数年、飲食業界では「個室・仕切り系」空間への人気が一気に高まった。青山通り沿いの「マトリックス・ワン・ビル」地下に広がるディナーラウンジ「SOUEN」(TEL03-5468-2933)もそのひとつ。さらに、同ビル屋上に設けられた完全予約制のペントハウス「シャンパン・ガーデン」は、まさにカップル向けの究極の「仕切り系」スペース。ジャグジーが配備されたこのプライベート・スペースの利用料金は、飲食代とは別に2時間30,000円(2名~8名での利用可能)が必要。「ジャーディン・ワインズアンドスピリッツ」(ジャーディンマセソン、モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン、ユナイテッド・ディスティラーズ3社による合併企業)の協賛により、ジャグジーの周りにはフランス産の高級シャンパン「モエ エ シャンドン」のボトルがズラリと並び、利用客にはフルボトル1本がサービスされる仕掛け。「シャンパン・ガーデン」の利用状況について「SOUEN」の岡部さんは「カップル利用とグループ利用はちょうど半分。グループの場合、男性2名+女性2名というパターンが多い」と話す。「カップルの場合、5,000円のコースを注文の上、別途ジャグジー利用料が加わり高額になるが、それでも全体の半分がカップル需要であるということは、求められているサービスであることの証しだろう」と、マーケットの存在を示唆する。ちなみに「シャンパン・ガーデン」の稼働率は70%。
キューブ飲食業界に「個室・仕切り系」を定着させたのは「忍庭」(恵比寿、青山、神南他)や「萬葉庭」(代官山)などの企画・運営・プロデュースを手掛ける「メッドグループ」(本社:恵比寿)。同社が展開する飲食店10店舗のうち8店舗が個室を設けていることから、「個室系の仕掛け人」「個室ブームの牽引者」と呼ばれることも多い。もともと2000年に誕生した、同社にとって国内第1号店となる「忍庭」(恵比寿)は「大人の男女のお忍び空間」を標榜して生まれた飲食空間。内装に竹や石、水など自然をふんだんに使い、個室やすだれを駆使した艶っぽい空間はすぐさま情報に敏感な大人に受け入れられていった。同社が提案する飲食空間は「デートレストラン」とも呼ばれ、デートスポットとして利用したカップルが系列店のリピーターになるケースも少なくない。
同社の「デートレストラン」は、個室以外にも自然を配した内装に特徴がある。石や水が利用客に「癒し感」「くつろぎ感」を与えており、「個室だけでなく差別化できるプラスアルファが求められる」と同社広報担当の大島さんは話す。こうした独自の空間づくりは進化を遂げ、2002年4月、骨董通りに面した「HUGO BOSS」地下に誕生した「川のほとりで」(南青山)は、店内中央に25メートルの川が流れ、川面には2人用の個室やカウンターのカップルシートが用意されている。部屋はのれんや格子戸で仕切られたオープン式の個室になっており、25室すべてに「姫」「鈴蘭」「月光」など、全国の川の名前が付けられており、こうした個室がカウンターのカップルシートと共に人気を集めている。2002年12月には「忍庭」の5店舗目に当たる「忍庭 泉」が神南にオープンし、店内に泉があふれる同店は早くも幅広い客層で人気を集めている。
一方、同じ12月、同社は北青山に新業態「ho乃ca」(ほのか)をオープンさせた。同店では、光る壁と床のスタイリッシュな空間の中で提供される70種以上の料理や10種以上の甘味など、モダンな感覚の「おばんざい」メニューを特徴としている。同店はこれまでの「個室・仕切り系」とは異なり女性客をコア・ターゲットにした展開で、既に道を隔てた場所に出店している「忍庭AOYAMA」との使い分け提案を含め、新たな領域開拓も同時に進める。
2月14日までは、期間限定で「忍庭」全店、「萬葉庭」、「RETOH」(表参道)、「AZOOL」(西麻布)、「川のほとりで」の各店で「バレンタイン限定特別プラン」を実施。カップル限定で4,000円のコースをペアで7,000円、5,000円のコースをペアで9,000円にするなど、特別価格でのサービス(全コースに特別デザート付)を行った。さらに希望に応じてフォトフレーム付きポラロイド写真撮影をサービスするほか、「RETOH」(表参道)ではメッセージプレート付ショコラデザートも付く。ただし「もともとデート利用率が高い」(大島さん)こともあり、この「バレンタイン限定特別プラン」は同社サイトのみで告知され、13日で予約が締め切られた。
大島さんによると、最近のカップルの傾向は「女性のさりげないリードが目立つ」という。情報に敏感な女性は予めデートで行きたい候補店などをチェックした上で、何気なく男性を目的の店に誘導するケースが少なくない。ただし、あくまでも「彼氏が連れて行ってくれた店」という建前は尊重されるのがポイント。しかも「忍庭」の客単価は4,500円。カップルで利用しても1万円でお釣りが来る絶妙なプライス感もカップルの日常利用を後押ししている。
メッドグループ「物を売るのでなく、感動を売る」とは、近年、飲食・物販・サービス業を問わず浮上しているキーワードだが、一見「アナログ」に映るこのキーワードは「カップル向けサービス」にこそ合致する姿勢。バブルの頃とは異なり、可処分所得が伸びないことで、価格以上の「何か」を求める傾向は加速している。
中でも、カップルから支持される飲食空間は、今や女性の支持なくしては成立しない。「デートレストラン」は一見、男性が女性を「口説く」ための空間でもあるが、実は男性より空間に執着を見せる女性側の視点に立った「口説かれたい」空間づくりが鍵になっている。そのためには、目的の店自体に「特別感」が必要となる。個室+αの「付加価値」の高いデートを体験したカップルは、極めて顧客満足度の高い「体験」を心に刻み、再びその店を利用する。つまり、リピート率の向上に結びつく。
景気低迷が長引く今、一昔前は「特別な日」感を前提に提供されていたカップル向けサービスは今、急速に「普段使い」対応へのシフトを急ぐ。一定の「付加価値」を感じながらも「敷居は低く」、カップルがいつでも「気軽に使える」空間・サービスが求められている。