「平成16年版青少年白書」(内閣府の青少年育成推進本部発行)にある、平成15年度の小学校・中学校・高等学校及び中等教育学校における生徒の身長、体重の全国平均値は以下の通り。
身長(cm) | ||||
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男子 | 女子 | |||
H15 | H14 | H15 | H14 | |
10歳 | 139.0 | 139.0 | 140.2 | 140.2 |
11歳 | 145.2 | 145.2 | 147.1 | 146.8 |
12歳 | 152.6 | 152.8 | 152.1 | 152.1 |
13歳 | 160.0 | 160.2 | 155.1 | 155.2 |
14歳 | 165.4 | 165.5 | 156.7 | 156.7 |
15歳 | 168.6 | 168.3 | 157.2 | 157.3 |
16歳 | 170.0 | 169.9 | 157.7 | 157.7 |
17歳 | 170.7 | 170.7 | 157.9 | 157.9 |
体重(kg) | ||||
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男子 | 女子 | |||
H15 | H14 | H15 | H14 | |
10歳 | 34.9 | 34.9 | 34.7 | 34.8 |
11歳 | 39.4 | 39.4 | 40.0 | 39.8 |
12歳 | 45.1 | 45.2 | 44.8 | 44.9 |
13歳 | 50.3 | 50.6 | 48.1 | 48.3 |
14歳 | 55.4 | 55.5 | 50.9 | 50.9 |
15歳 | 60.4 | 60.3 | 52.3 | 52.4 |
16歳 | 62.2 | 61.9 | 53.4 | 53.3 |
17歳 | 63.5 | 63.2 | 53.5 | 53.5 |
男子の身長は前年度に比べ9歳、15歳、16歳で伸びているが、反対に12、13、14歳の中学生時期の平均値は前年度より低くなっている。女子の身長は11歳が前年度に比べて伸びており、7、8、13、15、17歳では前年度より低くなっている。ちなみに、女子の身長は10、11歳で男子を上回っている。男子の体重は15、16、17歳の高校生時期が前年度に比べ増加している傾向にある反面、女子の体重はほぼ横這いだ。また、女子の座高は10、11、12歳の間に男子を上回っている。
また、15~19歳を対象に行った「適切な食品選択や食事の準備のために必要な知識や技術があるか」という質問に対しては、「十分にある」と答えた男子が3.3%、女子は1.9%と低い結果だった。「あまりない」「まったくない」と答えた10代は男子で78.1%、女子75.5%という結果から、10代には栄養・食生活や健康に関する知識や関心が乏しいことが伺える。また、近年は10代の食生活問題で「欠食」の習慣化も挙げられている(下表参照)。自活機会の増える20代に比べると約半分の数値だが、10代のほぼ10人に1人が週に2~5回欠食しており、そのほとんどが親と同居している状況を考えると、決して低い数値でないことが推察される。欠食は摂取栄養素のバランスを乱し、貧血症等の原因にもなるため、成長期の10代の欠食習慣は成人後の健康状態に影響を与えると懸念されている。
ほとんど 毎日欠食する |
週2~5回 欠食する |
ほとんど 欠食しない |
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男 | 15-19歳 | 9.8% | 11.5% | 78.7% |
20-29歳 | 23.4% | 22.9% | 53.7% | |
女 | 15-19歳 | 6.9% | 12.5% | 80.7% |
20-29歳 | 13.6% | 21.1% | 65.3% |
日本生活習慣病予防協会の理事を務める池田義雄氏は、内科学、健康医学を専門とする医師で、中でも糖尿病と肥満の研究、生活習慣病予防活動において多くの業績を持つ。その池田氏に、現在の10代の健康状態や健康管理意識について話を聞いた。「今の10代の健康状態として特徴的なのは、第一に肥満が増えていること」と池田氏は話す。現在は10代のうち、男子は約10%、女子は約5%が肥満で、その数値は決して大きくはないものの、ここ20年間で見ると倍増しているそうだ。10代の肥満の中でも、とくに著しい肥満にあたる男子はそのうち約2%、女子は約1%で、血縁者に糖尿病患者がいる10代は特に、糖尿病にかかる人が増えているという。池田氏は「糖尿病には1型と2型があるが、近年はこれまで成人がかかると言われていた2型糖尿病の若年発症が増えている。また、今は病気になっていなくても、10代からの肥満が持続して成人になった場合、糖尿病や高脂血しょうを発症する確率は高まる。事実、成人の糖尿病患者はこの20年間で20倍になっている」と続ける。今の10代の健康状態では、今後生活習慣病を発症する危険度が高いということだ。
こうした背景には、10代のライフスタイルの変化が影響しているという。池田氏は「食生活では、手軽なファストフードを多く摂取し、家庭でも外食が多くなっている」と話す。母親が働いている家庭では、10代の子供が一人で食事をする「個食」の傾向もあり、食生活が偏りがちとのこと。また「生活環境、住環境の変化によって、昔に比べて明らかに運動が足りないことも原因の一つ」と池田氏は付け加える。パソコンやテレビゲーム、携帯などを使用する頻度が高い今の10代は、活動性の高い生活をしにくい環境にある。池田氏は「パソコンとパーソナルフォン、この『2P』が10代の肥満の要因とも言える」という。また、10代の不健康生活の特徴として、池田氏は「3S」を挙げる。「3S」とは、sex、smoking、snackである。親の目が届きにくくなっていることから、不純異性交遊のsexをする10代が増え、性感染症にかかることも多い。また、中学生での喫煙率が高まっており、15歳未満の喫煙経験者は7%、19歳未満の喫煙経験者は37%だそうだ。特に男子だけで見た場合、19歳未満でほぼ半分が喫煙を経験しているのが現状だという。そして、スナック菓子の氾濫と過剰摂取が、食生活を乱しているということだ。
10代の肥満が増えている一方、反対に痩せの問題も大きいと池田氏は言う。「10代のうち痩せの範疇に入るのは女子で13%、男子で10%。さらに、自分が痩せかあるいは適正な体重であるにも関わらず、痩せ願望の強い10代が多い」と池田氏。その原因として、池田氏はマスメディアによる体型に関する価値観の植付けを指摘する。完全に痩せの範疇にあるモデル体型に憧れる10代は、無理なダイエットをしてしまう。その結果、リバウンドで元に戻るか、それ以上に太ってしまい、また無理なダイエットを行なう。そうした繰り返しが精神的なひずみを生み、10代に拒食症や過食症を引き起こしているという。また、池田氏は「こんなに痩せの人が多いのは、世界でも日本だけ特異だ」と言う。痩せの問題は骨の密度にも影響を与えるため、将来骨粗鬆症になる危険性が高いそうだ。骨の密度は若いうちにしか高めることができないため、10代のうちにあまりにも痩せている人は、骨粗鬆症になりやすい。その結果、女子は生理不順になったり、生殖能力が衰えたりする。「10代の痩せ問題が深刻になればなるほど、少子化に拍車がかかる」と池田氏は懸念する。「きちんと規則正しい生活を送り、健康な10代も全体の2割程度はいる。しかし、健康に対してあまりにも無意識・無頓着な10代も同じ2割程度はいるだろう。残りの6割はほどほど、といったところ。この割合はいつの時代もどの世代も、ほぼ変わりはないだろう」と池田氏は見ている。
日本生活習慣病予防協会渋谷センター街を歩いていた高校生に、健康に対する意識について話を聞くと、大半の10代が健康を意識しているにも関わらず、自分の現状を不健康だと言い切っていた。現在高校3年生のユミちゃんは「健康のために早寝早起きを意識しているけど、実際は寝たり寝なかったりしてるから、私は不健康。食生活では野菜をよく食べるようにしているけど、ご飯も食べたり食べなかったりする」と話す。同じく高3のユリちゃんは「食事は、今日肉を食べたら次の日は魚、次の日は野菜っていう風に1週間でバランス良く食べるようにしている」と言う。1日のうちの食事ではなく、1週間のサイクルでバランスを考え、アルバイト中に食べる賄いのメニューなどを選んでいるそうだ。リエカちゃん(16歳)は「ビタミンCと鉄分のサプリメントをよく飲んでいる。ビタミンCは風邪の予防に、鉄分は貧血症だから。体質的なもので貧血がひどいから、自分は不健康だと思う」という。タカコちゃん(15歳)は「健康には特に気を遣っていない。肉が嫌いであまり食べないし、自分は不健康だと思うけど、別に意識したことない」と言う。
食べ物の好き嫌いがある10代も多く、16歳のアヤネちゃんは「肉は好きだけど魚は嫌い。部活が終わって疲れた日に、家に帰って食卓にアジの開きとか出されるとヤダ」と話す。そういう時はどうするのか、と聞くと「ママに『なんか肉出して』って言う。アジは食べなくてもママはうるさく言わないし・・・」とのこと。ちなみにアヤネちゃんはニキビがひどくなって病院に通ったことがあり「お医者さんにポテチ(ポテトチップス)とチョコは食べちゃダメって言われてから、ポテチは食べてない。でも、チョコは我慢できないから食べてるけど・・・」と言う。同じく16歳のミキちゃんも「好き嫌いは多い。トマトとかナスとか食べれない。でも、健康のためにはご飯をよく食べなくちゃいけないとは思っている」と話していた。18歳のタカフミくんは「俺、イチゴが好きだから、イチゴさえ食べてればいい」と言う。この春に卒業し、美容師になるための専門学校に通うというタカフミくんの健康法は「夜、お腹を出して寝ないことと、風呂上りは髪の毛を乾かして寝ること」とのこと。風邪さえ予防できれば健康を維持できると思っているような様子だった。
摂取しなければいけない栄養や、その栄養が含まれた食べ物などの知識はほとんど持っていない10代だが、ことダイエットに関しては、効果は別としていろいろな知識を持っていた。ユリちゃん(18歳)は「1日にお水を2リットル飲むダイエットをしたことある。辞めた途端にリバウンドで3キロ太ったけど」と話す。ユミちゃん(18歳)は「炭水化物を抜くダイエットがいいらしい。でも私は続かなかった」。この「炭水化物抜きダイエット」については16歳のミキちゃんも挑戦したが続かなかったと言う。タカコちゃん(15歳)は「よくやるダイエット法は、豆乳を1日1パック飲んで、腸の働きを良くして糞を出す!このダイエットをしてる時はすごく健康になる」と言う。リエカちゃん(16歳)は「ゆっくり噛むと食べる量が少なくなるからダイエットにいいって聞いて、カップラーメンを2時間かけて食べたことがある。麺が伸び切ったけど、食べるのがだるくなってお腹いっぱいになるからおススメ」とのこと。
しかし、中には「自分は健康」だという10代も。部活でチアリーディングをしているという16歳のアイコちゃんは「睡眠は1日7時間、夜ご飯は少なめに食べることを心掛けているから、私は健康」と話す。同じく健康体だと言う16歳のムツミちゃんも「夜は10時に寝る。健康法はうがい手洗いくらいだけど私は健康だし、ダイエットも間食をしない程度にしかしない」と言っていた。
ある程度規則正しい生活を送り、睡眠時間や食事をきちんととっている健康的な10代もいることにはいるが、多くは寝たり寝なかったり、食事を食べたり食べなかったりという不規則な生活によって自分が不健康だと自覚しているようだった。しかし、大病をしない限りは不健康のままでもとくに気にしない、という傾向が強いようだ。10代のうちは健康よりも肥満に対する意識のほうが大きいようで、ダイエットのための食事規制などは進んで行なっている様子が伺えた。10代は今後、健康とどう向き合っていくのだろうか。