ベネッセ未来教育センターから刊行された2003年版「モノグラフ・高校生VOL.68」に「自分の部屋」に関する調査データが発表されている。調査は2002年11月、東京・群馬・新潟の公立高校1~3年生の計1,387名を対象に行なわれたもの。「家の中に自分専用の部屋があるか」という問いに対して「ある」と答えた生徒は77.2%、「兄弟と共有の子供部屋がある」が15.6%、「そのような部屋はない」が5.0%、無回答2.1%だった。92.8%の高校生は、ある程度プライベートな空間を確保していると言える。次に「自分の部屋にあるモノ」について尋ねた結果は以下の通り。
全体(%) | 性別(%) | ||
---|---|---|---|
男子 | 女子 | ||
机 | 97.2 | 96.5 | 97.7 |
ラジカセ、MD・CDプレイヤー | 91.7 | 89.6 | 93.2 |
エアコン | 68.9 | 66 | 71.1 |
テレビ | 34.2 | 44.8 | 26.7 |
ビデオ・DVD | 24.9 | 32.9 | 19.2 |
テレビゲーム | 23.8 | 40.7 | 11.6 |
電話(親子電話) | 20.8 | 19.5 | 21.7 |
パソコン | 17.3 | 20.1 | 15.3 |
掃除機 | 13.4 | 14.1 | 12.8 |
内鍵 | 9.4 | 8.2 | 10.3 |
冷蔵庫 | 1.7 | 2.6 | 1.1 |
その他 | 30.4 | 26.6 | 33.1 |
ほとんどの高校生の部屋には「机」と「ラジカセ、MD・CDプレイヤー」があると言えそうだ。一方、「テレビ」「ビデオ・DVD」「テレビゲーム」「電話」「パソコン」は、多くの高校生に所有されているとは言えないが、約5人に1人の割合で部屋にあり、電話を除く4つのアイテムは女子に比べて男子の方の所有率が高かった。中には「掃除機」や「冷蔵庫」など、家電製品が充実した部屋で過ごす高校生もいる。また、部屋に内鍵があり、家族の出入りが出来ないようになっている部屋を持っている高校生も約1割いた。
彼らは、自分の部屋でどんな過ごし方をしているのだろう。
全体(%) | |
---|---|
音楽などを聴いていることが多い | 74.9 |
寝ていたり、横になっていたりすることが多い | 67.5 |
自分の好きなことに没頭していることが多い | 65.4 |
電話で友だちと会話したり、携帯のメールをしていることが多い | 62.6 |
ゲームをしていたり、マンガを読んだりしているこが多い | 52.2 |
ただボーっとしていることが多い | 50.4 |
机に向かって勉強していることが多い | 44.8 |
テレビやビデオを見ていることが多い | 30.4 |
部屋の模様替えや掃除をしていることが多い | 27.7 |
部屋は寝るためだけに使っていることが多い | 26.5 |
1位は「音楽を聴いている」が74.9%、次いで「寝たり、横になっていたりする」が67.5%、3位「自分の好きなことに没頭している」65.4%、4位「電話や携帯のメールをしている」62.6%、5位「ゲームやマンガを読んでいる」52.2%という結果だった。8位の「机に向かって勉強している」は44.8%と、半分以下だった。
ベネッセ未来教育センター「モノグラフ・高校生」KKベストセラーズから発行されているインテリア雑誌「インテリアJack(ジャック)」は、中高生男子を読者対象とするファッション誌「street Jack(ストリートジャック)」のムック版。10代のインテリアに関する意識について、同誌編集長の白井さんに話を聞いた。「読者は15~16歳の高校生から20代後半まで幅広いが、中でも大学生になってから一人暮らしを始めたという20代前後の方がコア・ターゲット。男女比は7対3で男性が多い」と白井さんは言う。中でも特に、10代読者からの反響によると、「昨年までは、実家の一室である和室6畳の自分の部屋を、おしゃれに改造したいという要望が多かった。特に白黒のカッティング・シートを市松模様に敷き詰める手法などは人気が高い」(白井さん)という。しかし今年あたりからは、和室の改造に関する要望が若干減ってきたという。現代の建築様式では和室が少なくなり、10代の悩みも減りつつあるのだろう。
10代に人気のインテリア・コーディネートについて聞いたところ、白井さんは「大きく分けて二通りあり、一つはインテリア業界ではミッドセンチュリーなどと呼ばれる、フィフティーズっぽい雰囲気のアメリカン・ポップ調。もう一つは、例えば木材などに色の濃いニスを塗ってわざと古く見せる加工を施す、レトロ調のコーディネート」だそうだ。市松模様の床のほか、壁に板を張り巡らして赤一色に塗るなど、アメリカン・ポップ調の改造は、特に賃貸マンションで生活している一人暮らしの大学生よりも、実家の一室を自分の居室として使っている高校生の方が規制もなく、とことん改造する傾向にあるそうだ。「とにかく、10代にとっては白い壁に明るい色目のフローリングの部屋が一番ダサイ、という意識が強い」と白井さん。
10代に人気のインテリア・ブランドについては「憧れのインテリアと言えば、ダントツで『イームズ』の椅子が挙げられる」と白井さんは言う。次いでデンマークのデザイナー、バーナーパントンによる『パントン・チェア』も人気が高いそうだ。また、フィンランドのテキスタイルブランド「マリメッコ」の布を使ったクッションやベッドカバーなどは、カラフルで大胆な柄がアメリカン・ポップ調の部屋作りに欠かせないという。「しかしどれも高額な商品で、例えばパントン・チェアは最も安くても3~4万円。10代の場合は『頑張って一つだけ持っている』という子や、『いつかは持ちたい』と思っている子がほとんど」だという。やはり、インテリアにかける予算が限られている10代は、おしゃれな部屋を「安く」作る方法へのニーズが強いという。「ホームセンターなどで購入したレンガやブロックと、板を組み合わせてテレビ台や靴棚を作ったり、カラーボックスに布を巻いてオリジナルの家具を作ったり、10代はお金がない分、手間を惜しまずに工夫をしているようだ」と白井さんは見ている。
部屋を改造する10代の特徴として、白井さんは「実家暮らしの子も一人暮らしの子も、共通して自分の部屋が『友達の溜まり場』になっていることが多い」と言う。つまり、部屋に訪れる友人に見せることを意識して、おしゃれな部屋にしようという訳だ。例えば、カラーボックスやスチールのラックなどは布で覆って隠したり、「生活感を見せない」ことが重要なポイントとなるらしい。「10代の子の部屋を取材すると『居心地がよく和める部屋にした』などというコメントが多いが、アメリカン・ポップ調の部屋などは、どちらかと言えば『和める』という雰囲気ではない」と白井さん。あくまでも、友達を呼んだときにオシャレな部屋だと言われたい、自慢できる部屋にしたい、という意識が働いてるようだ。
KKベストセラーズ渋谷センター街のティーン10人に、自分の部屋について話を聞いた。その結果、「自分の部屋」がないと答えた子は皆無。その広さは5畳~7畳が平均的で、一番広い部屋を持っていると答えたのは現在16歳のモモコちゃんで25平米。「元々ゲストルームとして造った部屋だから、収納式のベッドが2つあるのが自慢。友達が泊まりに来た時とか、便利」とモモコちゃんは話す。部屋には好きなイラストレーター「綾野伊都子」さんのポスターが貼ってあるそうだ。モモコちゃんの友達のナツキちゃん(16歳)の部屋は5畳くらいとのこと。ナツキちゃんは「ベッド付近のカバーとか、カーテンとかは全部くまのプーさんでコーディネートしているところがこだわり」と言う。17歳のトモミちゃんの部屋は7畳で、「部屋中全部、ピンクで揃えてる。特徴としては、なぜか無駄に窓がデカイこと」とのこと。トモミちゃんは2人兄弟で、それぞれ別に自分の部屋を持っているのだそうだ。
現在中学2年生のミキちゃんは、「部屋は6畳で、フツウに机とベッドがある感じ。あと、ジャニーズのポスターが7、8枚貼ってある。赤西くんが好きで、『KAT-TUN』とか『NEWS』とか、ジャニーズばっかり」と話す。同じく中2のミカちゃんは「部屋は5畳くらい。3人兄弟でそれぞれ自分の部屋がある。私の部屋の自慢はマンガが100冊くらいあること」と言う。また、15歳のマサオくんは「部屋の中はサッカー選手のポスターがたくさん貼ってあって、天井にだけ上戸彩のポスターを貼ってある」と話す。現在18歳のダイチくんは「二人兄弟で、それぞれ6畳くらいの自分の部屋がある。俺の部屋の自慢は500冊くらいあるマンガ。中でも『スラムダンク』は宝物」と話す。さらに、ダイチくんは「特徴としては、部屋が散らかりすぎて床が見えないことかな。どこに何があるかは把握してるから、片付けても意味ないし」と付け加えていた。
ティーンの部屋と言えば、アイドルのポスターが貼ってあるイメージが強いが、実際はハイティーンになるに連れて卒業していくのが現状のようだ。一人っ子の10代が多い中、自分だけの部屋を持っている10代は明らかに増えている様子で、好きな色やオリジナルの家具でコーディネートし、心地良い空間作りをしている。特に部屋の改造に手を加えている10代の場合は、自分自身の居心地の良さよりも、友人を呼んだ時のことを考慮している割合も高いようだ。