企業向けのマーケティング・データ・サービスを提供するインフォプラントのC-NEWSでは、2004年8月、家庭用ゲーム機でゲームをする10代のインターネットユーザー男女各150名、計300名を対象にゲーム事情を調査した。その結果、現在自宅にある家庭用ゲーム機で一番多かった回答は男女共に「プレイステーション2」が7割半ば、「プレイステーション(初代)」「スーパーファミコン」「ゲームボーイ(アドバンス以前すべて)」が各6割強、「ニンテンドウ64」が5割弱という結果だった。1位「プレイステーション2」の所有率は、ほかの年代と大差はないが、2位以下も6割台と高いのが10代の特徴だという。また、現在持っているゲームソフトの数は「6~10本」が2割強で最も多かったが、男性は4割強が21本以上所有しており、女性の2割半ばと比べるとかなり多かった。ゲームソフトの購入頻度は、男性は「2、3か月に1本程度」が3割半ばで一番多いが、女性は「1年に1本以下」が5割で最多という結果だった。
今後、自宅でゲームをする時間の変化について「増える」「やや増える」と答えたのは男性で1割弱、女性は1割強。一方、「やや減る」「減る」は男女共各6割弱で、全年代の中で一番割合が高かった。その理由については「受験だから」という回答が多く、「部活が忙しいから」などもあった。中には「面白いソフトがない」という意見も見受けられる。家庭用ゲーム機対応のゲームソフトに望む点については「コントローラーの操作を、これ以上複雑にしないで欲しい(アルバイト・19歳、男性)」「画質の向上よりもソフトそのものの面白さを重視した作品を出して欲しい(大学生・19歳、女性)」などの意見が寄せられた。
同じくC-NEWSでは、昨年12月12日にソニー・コンピュータエンタテインメント(SCEI)から発売された「プレイステーション・ポータブル(PSP)」に関する調査を発売前の11月に実施した。10歳~49歳のネットユーザー計300名の回答を集計した結果、PSPでゲームを「是非したい」「できればしたい」と回答したのは全体で4割。年代別に見ると、10代が5割強、20代は3割半ば、30歳以上で3割強と、若年層ほど要望が高いことがわかった。また、PSPについて「機能などを詳しく知っている」「機能などを何となく知っている」と回答したのは、10代で3割半ば、20代2割半ば、30歳以上は1割強という結果で、PSPに関する発売前の認知度は10代が一番高かったことがわかる。
インフォプラントインターネット総合ポータルサイトの「インフォシーク」と三菱総合研究所は2004年6月、15歳~59歳の男女を対象に「第9回携帯電話コンテンツ/サービス利用者調査」を行った。そのうち、携帯電話のゲーム利用と、ゲームボーイアドバンス等の携帯型ゲーム機の利用状況に関する質問項目について、以下の結果になった。
ともに 利用 |
携帯電話 のみ |
携帯型 ゲーム機のみ |
ともに 未利用 |
|
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全体 | 36.2 | 18.9 | 18.1 | 26.9 |
男性 | 35.0 | 19.5 | 18.2 | 27.4 |
女性 | 37.3 | 18.2 | 18.0 | 26.4 |
10代 | 67.0 | 14.0 | 14.0 | 5.0 |
男性10代 | 68.0 | 11.2 | 14.8 | 5.9 |
女性10代 | 66.1 | 16.4 | 13.2 | 4.2 |
携帯電話のゲームと携帯型ゲーム機、共に利用したことがある人は全年代で36.2%であるのに対し、10代は67.0%が両方のゲーム経験があると答えている。反対に、どちらも利用したことがない10代は5.0%と、全年代の中でも一番少なかった。また、全体的に男女の差がほとんどないこともわかった。
次に、両方のゲーム利用者に対してゲームの利用場面を尋ねると、10代が携帯電話のゲームを利用する場面で多かったのは、1位「平日移動中」38.3%、2位「平日すき間時間」37.5%、3位「休日自由時間」33.3%という結果だった。一方、携帯型ゲーム機を利用する場面で多いのは、1位「休日自由時間」で61.3%、2位「平日自由時間30.8%、3位「休日すき間時間」12.1%。携帯電話のゲームはほぼ満遍なく、平日・休日を問わず使われているのに対し、携帯型ゲーム機は休日や平日の自由時間という、次の予定がない時間帯に集中していることから、両方のゲームはしっかり使い分けられていると言えそうだ。こうした傾向は、ゲームをする1回あたりの時間とも関係があると考えられる。
そこで、ゲームの利用時間についての調査結果を見てみよう。携帯電話のゲームで一番多かった利用時間は「5~10分未満」で39.6%、携帯型ゲーム機の利用時間は「30分~1時間未満」36.3%が一番多かった。こうした利用場面や利用時間の都合によって、プレイするゲームの種類も両方のゲームでは大きく異なってくる。携帯電話ではパズル(クイズを含む)やテーブルゲームといった、比較的短時間で終えることができるゲームが多く利用されているのに対し、携帯型ゲーム機のほうではロールプレイング・ゲームやシミュレーション、アクション、アドベンチャーなど、長い時間を要するゲームが利用される傾向にあった。
三菱総合研究所ゲーム業界は、ターゲットとしてのティーンをどのように捉えているのだろうか。ゲームアナリストとして活躍するインターラクト代表の平林久和さんに聞いた。「昔はゲームと言えばティーンしかしないもの、という時代だったが、現代はキッズからシニアまで利用層が広がっている。しかし、家庭にゲーム機があるのは当たり前、という意識が定着している反面、特にやりたいゲームソフトはなく、大人もティーンもゲーム離れを起こしているのが現状」と、平林さんは話す。
平林さんによると、1983年の「ファミコン」が発売時は、ローティーンを中心としたティーンの間でゲームが流行し「ゲームはティーンのもの」という風潮が強かったが、1994年にソニー・コンピュータエンタテインメント(SCEI)から発売された「プレイステーション」が、ティーンだけというゲームの壁を突破し、ヤングアダルト層までユーザーを広げていった。ところが2000年を境に、ティーンもヤングアダルト層もゲームソフトを買わなくなる。2003年に売れたゲームソフトは1993年に比べて約半分となり、市場は沈み込んだ。しかし、ゲーム機本体の売り上げは1993年と比較すると2003年は約2倍に増えていて、PS2やゲームボーイアドバンスなどのハードは売れ続けていた。そんな中「ゲーム市場は沈み込みながらも、棲み分けが明確になっていき、任天堂はキッズやローティーン、ソニーはハイティーンの人気を掴んでいった」と平林さんは言う。つまり、家庭にゲーム機がありながら、消費者にとって魅力のあるゲームソフトが不足する状況に陥っていた。そうした状況を打破するため、昨年末に発売されたのが「ニンテンドーDS」や「PSP」だ。「ニンテンドーDS」は面白さを追求し、「PSP」は綺麗さを追及することで、ゲーム市場を活性化する新しいゲーム機として登場。平林さんの推察では、1月現在の販売台数はニンテンドーDSがおよそ150万台、PSPが60万台だという。しかし、PSPの人気がないのではなく、予約殺到で品切れが続出、生産が追いつかないだけで、逆に市場の熱はPSPにあるとの見方が強いようだ。
この2機種の違いについて「ニンテンドーDSの購入層はキッズやローティーン、そしてファミコンブームの際にキッズだった30代に集まっている。30代は親として子供と遊ぶために購入するケースも多い。一方PSPは画像やスタイルの美しさに価値を見出し、iPodを欲しがるような層とかぶっていると予測されるため、20代が中心になっている」と平林さんは見ている。つまり、ハイティーンはゲームユーザーからすっぽり抜け落ちてしまっているというわけだ。その要因について、平林さんは「高校生を中心としたハイティーンは、携帯電話にかかるお金が最優先で、ゲーム機まで小遣いが回らないのが現状」だと言う。さらに「昔はゲーム機が売れる時期と言えば夏休み、クリスマス、ゴールデンウィークが一般的だったが、現在は給料日のある月末と言われている。このことからも、ゲームの購買層にいかにサラリーマンが多いかがわかる」と付け加える。
ゲーム業界では今、ハイティーンは特に掴み難い客層と捉えられている。その理由のもう一つに、インターネット上で手に入るフリーウエアを利用したオンラインゲームの存在。「オンラインゲームのユーザーは30万人と少ないが、その中でも高校生の占める割合は高い」と平林さん。そうした背景には、小遣いの問題だけではなく、10代のある傾向が見受けられるという。「高校生を中心としたハイティーンは人間関係を重視する傾向が高い。よく言えば人とのコミュニケーションを大切にしていると取れるし、悪く言えば仲間外れになるのを恐れているともいえる」と平林さん。10代がゲームをしなくなる理由として「仲間と話が合わなくなった」という子が多く、高校生になると、特に10代男子は友達同士の会話で音楽の話や彼女の話などが中心となり、ゲームの話は浮いてしまうのだという。「ゲーム離れをするティーンは4月に多く、その背景には学校やクラスが変わって一緒に過ごす仲間が変わるという環境の変化がある。反対に、人に誘われてオンラインゲームに登録する10代も4月に増える傾向にある。それらはすべて、自分で決めるというよりは人に誘われることが多い」と平林さん。こうした10代のゲームとの関わり方は、メールやインターネットなどのオンラインコミュニティ文化が確立しているからこその特徴だとも言えそうだ。
ゲームへの関心は、女性よりも男性のほうが高いことは容易に予想されるが、男性より女性に人気の高いゲームもある。ティーンズマーケットの市場調査やプロモーションを手掛けるアイ・エヌ・ジー(宇田川町)が2004年11月、渋谷の女子高生200人を対象に行ったアンケート調査によると「友達の間で流行っているグッズ・ゲーム」で最も多かった回答は「たまごっち」。同社の中山さんは、女子高生のゲームに対する関心について「女子高生で、自宅にいる時に家庭用ゲーム機で遊ぶ子はほとんどいない。女子高生のゲームと言えば『たまごっち』と、携帯電話にダウンロードして遊ぶゲームが主流」だという。兄弟の影響でニンテンドーDSやPSPを知っている、やったことがあるという女子高生もいるが稀なケース」だという。携帯電話のゲームで女子高生に人気があるのは「テトリス」で、「授業中や移動中にやる子が多い。簡単に始めてすぐ終われるゲームを好むことから、ゲーム自体が目的というよりも、単なる暇つぶしの感覚が強い」(中山さん)とのことだ。
1996年発売の初代「たまごっち」は、全世界で4,000万個を販売したバンダイの大ヒット商品。当時、たまごっちブームの火付け役は女子高生が中心だったと言われている。現在流行っているのは、昨年発売された「かえってきた!たまごっちプラス」で、赤外線による通信機能が付いているため、女子高生は友達同士でやりとりしたり、友達と色違いで持ったりすることを楽しんでいるようだ。中山さんは「今の女子高生は以前の『たまごっちブーム』の時は小学生だったため、欲しくても買ってもらえなかった世代。そうした思いの蓄積もあって、現在購入する女子高生が多いのでは」と見ている。現在、渋谷の女子高生の場合、クラスで2、3割の子が「たまごっち」を持っているそうだ。
「たまごっち」の発売元であるバンダイ広報チーム、中西さんに話を聞いた。2004年3月に発売された「かえってきた!たまごっちプラス」は、2004年末までで日本で100万個、海外で325万個、計425万個を販売している。続いて11月に発売した「祝ケータイかいツー!たまごっちプラス(ケータマ)」は、年末までの1ヶ月強で約40万個を販売、クリスマス、正月は商品が欠品して予約待ちしていた客も多く、現在も入荷すると即完売するという状況が続いているという。中西さんは「『たまごっちプラス』のコア購買層は小学生の女児(7-11歳)だが、女子高生や大人の購買も見受けられる」と言う。女子高生の間で「たまごっち」人気が再燃した要因について中西さんは「友達と通信できる点が一番では。10代女子は友達を非常に大事にする世代であり、どこかで誰かと繋がっていたいという思いが強い。今回の通信機能はそんな彼女達に受け容れられたと思う」という。
一方で、中西さんは現代の10代女子について「彼女たちは携帯電話世代で、小遣いも携帯電話を中心に費やし、簡単なゲームなら携帯で事足りるようだ。そのあたりが、昔と違って10代女子の取り込みが難しい理由になっている」とも話す。携帯電話の普及した現代の女子高生は、ゲーム関係者にとっても難攻な存在となっているようだ。
アイ・エヌ・ジー バンダイ(たまごっちホームページ)渋谷センター街の10代に、ゲームに関する意識を聞いた。現在高校3年生のヨシアキくんとタツヤくんは受験生。ヨシアキくんは「中学の時、プレステ2を買った。『ウイニングイレブン』というサッカー・ゲームが好きで、長い時は3時間やったこともあったけど、今は受験だからやらない」と言う。ヨシアキくんにとってゲームが占める割合は生活の5%未満で、趣味と言うよりは暇つぶし程度にしか思っていなかったと言う。「ゲーマーにはなりたくないし。気持ち悪い」と言っていた。タツヤくんも「以前は現実から離れたいためにRPGを携帯でやったりもしたけど、今は受験生だからゲームは勉強の邪魔」と言い切る。また、高校2年生のシュンスケくんとツヨシくんは、2人ともゲームを一切やらないと言う。「ゲームなんて時間がもったいない。学校ではゲームキューブとか持ってきて休み時間にやっているヤツもいるけど、気持ち悪いって感じ。学校では友達としゃべれよって思う」とシュンスケくんは言う。
現在中学2年生のイクちゃんとマリナちゃんは、2人とも「たまごっち」にはまっていると言う。イクちゃんは「私のは『はねるっち!』」と自慢気に言う。最近発売されたばかりの「祝ケータイかいツー! たまごっちプラス はねるっち」は、バンダイの携帯育成デジタルペット「祝ケータイかいツー! たまごっちプラス」と、フジテレビ系列のテレビ番組「はねるのトびら」のコラボ商品で、ペットが「はねるのトびら」に登場するコントキャラクターに変更されているほか、オリジナルのたべものやゲームが登場する。イクちゃんは「ゲームがなかったら死んじゃう」と言うほどゲーム好きで、「ニンテンドーDSは今、いとこに借りている。宇多田ヒカルのCMに影響されて、やってみたかった」と言う。マリナちゃんは「PSPを弟と共有している。画質が綺麗だから、私はニンテンドーDSよりPSP派」とのこと。
高校2年生のリエコちゃんは「ゲームはパソコンでする。ショックウェーブの無料サイトでダウンロードしたパズルゲームをよくする。忙しい時とか、勉強している時とかについついやっちゃう」と言っていた。中学1年生のカナちゃんとアイカちゃんは、携帯にダウンロードした「たまごっち」で遊んでいる。アイカちゃんは「たまごっちってすぐ死んじゃうんだけど。サブイ、ありえない」と文句を言いながらも楽しんでいる様子。高校1年生のハルナちゃん、ユリナちゃん、ミカちゃん、リカちゃんがよくやるゲームはiアプリ。「スーパーメリオっていうのが人気で、電車の中とか暇な時はいつもやっている」(リカちゃん)とのこと。
かつて「ゲームと言えば10代」というイメージが強かったが、実際は携帯型ゲーム機などの主な購買層からハイティーンが抜け落ちていた。しかし、携帯やパソコンを使ったゲームをする10代が想像以上に多いようだ。ただ、趣味でゲームを楽しむというよりは、友達と共通の話題のためであったり、暇つぶしといった目的でゲームをしているという感が強い。中にはゲームにのめり込むことを良しとしない意識さえも垣間見えるなど、現代のティーンは、独自のバランス感覚でゲームとの距離を少し置き始めているようだ。