インターネットを活用した市場調査を手掛けるインターワイヤード(東京都品川区)では、約13万人のモニター会員を対象とした公開調査「ネットリサーチDIMSDRIVE」を実施している。同社では全国の10代~70代の男女15,003人(男性:6,786人、女性:8,217人)を対象に「お年玉に関するアンケート」を行った。(調査期間=2004年1月5~8日)
「あなたは今年お年玉をあげましたか」という問い対し「はい」と答えたのは10,412人で全体の69%、「いいえ」は4,591人で31%だった。「はい」と答えた10,412人に対し、「自分の子供に対するお年玉の平均額」について質問した結果、以下のようになった。お年玉をあげた子供の年齢区分については6区分(0~5歳、6~12歳、13~15歳、16~18歳、19~22歳、23歳以上)されているため、その中の13~15歳、16~18歳について見てみよう。
13~15歳 | 16~18歳 | |
---|---|---|
1,000円未満 | 2% | 1% |
1,000円以上3,000円未満 | 10% | 4% |
3,000円以上5,000円未満 | 24% | 9% |
5,000円以上10,000円未満 | 37% | 36% |
10,000円以上15,000円未満 | 13% | 33% |
15,000円以上20,000円未満 | 1% | 2% |
20,000円以上30,000円未満 | 0.4% | 2% |
30,000円以上50,000円未満 | 0.2% | 1% |
50,000円以上100,000円未満 | 0.1% | 0.1% |
100,000円以上 | 0.0% | 0.1% |
自分の子供には与えなかった | 13% | 12% |
13~15歳の子供にあげたお年玉の平均金額で、最も多かった回答は「5,000円以上1万円未満」が610人で全体の37%を占める。16~18歳の子供の場合も「5,000円以上1万円未満」が一番多く、498人で全体の36%だが、「1万円以上1万5,000円未満」も452人(33%)おり、それ以上の金額をあげた人の数も13~15歳に比べて多い。中には、10万円以上のお年玉をあげたという人も1人いる反面、自分の子供にはお年玉を与えなかったという人もそれぞれ10%以上いた。
次に、「自分の子供以外にお年玉をあげたか」という質問に「はい」と答えた8,684人に対し、その平均金額を調べた結果が以下の表である。
13~15歳 | 16~18歳 | |
---|---|---|
1,000円未満 | 1% | 1% |
1,000円以上3,000円未満 | 11% | 4% |
3,000円以上5,000円未満 | 36% | 17% |
5,000円以上10,000円未満 | 42% | 51% |
10,000円以上15,000円未満 | 10% | 27% |
15,000円以上20,000円未満 | 0.3% | 1% |
20,000円以上30,000円未満 | 0.2% | 1% |
30,000円以上50,000円未満 | 0.0% | 0.2% |
50,000円以上100,000円未満 | 0.0% | 0.0% |
100,000円以上 | 0.0% | 0.0% |
自分の子供以外にあげるお年玉とは、親戚の子供や孫に対するものだと推測されるが、こちらでも「5,000円以上1万円未満」が一番多かった。また、自分の子供の場合も自分の子供以外の場合も、金額にあまり差がないことから、10代にあげるお年玉は一人当たり「5,000円以上1万円未満」が概ねの相場だと言えそうだ。
ネットリサーチDIMSDRIVE(インターワイヤード)3人の女性ファイナンシャルプランナーが立ち上げたFP事務所「Wealth(ウェルス)」代表の豊田さんは、「オールアバウト」で「子育てにかかるお金」のガイドを務めている。その豊田さんに、10代のお年玉事情について話を聞いた。「現代は、全般的にお年玉をあげる人数は減っている傾向にあるが、その反面1人当たりの与える金額が高額になっているようだ」と言う。バブル期は親戚だけでなく、知り合いの子供にもお年玉をあげる余裕のある人が多かったのに対し、バブル崩壊を境にそうした人々が減ったため、大人1人当たりの負担が大きくなっているらしい。「しかし、実際はお年玉の全額を子供に自由に使わせている家庭は少ないはず」と豊田さんは見ている。現在調査中の段階ではあるが、一部を貯金させるように決めたり、親が預かったりなどの管理をしている家庭が5割くらいはあるとのことだ。
お年玉の使い道としては「女の子はまず洋服、男の子はゲームなどを買うことが多い」と豊田さんは言う。10代にとって、好きなものに高額なお金を使えるのは、お年玉という1年に1度だけ許されるものではある。しかし「中・高生ともなると、子供がお金をどう使っているのかが親にとって見えにくくなってくるため、高額なお年玉を全額渡すのは危険では」と豊田さんは懸念している。普段からお金の使い方に対する教育ができている家庭の場合は問題ないが、簡単に色々なものが手に入るような習慣を子供に身に付けさせてしまうと、浪費癖がついてしまうからだ。「子供が欲しがっている物が本当に必要な物なのかを考え、実際に何を買っているのか、お年玉をどう使っているのかを報告させることも大切」と豊田さんは言う。10代の子供を持つ親としては、欲しい物を我慢させたり、月々のお小遣いをコツコツ貯めて欲しい物を手に入れさせるといった「お金のしつけ」も大事なようだ。「あまりにも高額なお年玉をもらった場合には、そのうちいくらかを教育費に投資するなどしてバランスを取ることも必要となってくるだろう」と豊田さんはアドバイスしている。
Wealth(ウェルス)渋谷センター街を歩いていた10代の男女計18人に、今年もらったお年玉の総額について聞いた。その結果、一番多かった回答は「5万円以上10万円未満」で5人、次に「3万円以上5万円未満」が多く4人、「10万円以上」が3人、「もらっていない」、「1万円以上2万円未満」、「2万円以上3万円未満」は各2人となった。そのうち最高金額は、ユミちゃん(19歳)とリョウくん(16歳)の「12万円」。しかし中には、「今のところ3万5,000円だけど、まだこれからもらえる親戚もいる」(マリコちゃん・18歳)という声もあった。
次に、一番多くくれた人とその金額について聞いたところ、両親という答えが一番多かった。しかし、その金額は1万円程度で、もっと高額になると「おじいちゃん、おばあちゃん」という声が目立った。16歳のタクヤくんとユウタくんは2人とも「一番多くくれたのはおばあちゃんで2万円」と答え、19歳のユミちゃんは「おじいちゃんが4万円くれた」と言っていた。総額で8万円もらったというトモアキくん(16歳)も「一番多かったのはおばあちゃんからの3万円」とのこと。よって、10代男子は祖母から、10代女子は祖父から多くのお年玉をもらえる傾向にあるようだ。
お年玉の使い道について聞くと、一番多かった回答は「洋服・バーゲン」で13人。また、「遊び」と答えた10代も多く、総額5万円をもらったという16歳のタクヤくんは、「お年玉はパチスロとか、遊ぶのに使う。服とか物は欲しければ親が買ってくれるから、お年玉は形に残らないものに使うことが多い」と言っていた。タクヤくんは両親からアルバイトを禁止されているため、欲しいものは何でも買ってもらえるのだそうだ。「校則はバイトOKだけど、親が『バイトをする時間があったら勉強しろ』っていう方針だから、その分服とかは買ってくれる」とタクヤくん。しかし、両親もまさかお年玉がパチスロに使われているとは思っていないだろう。
「CD」と答えた10代男子も2人いたが、中には「今年からボイトレ(ボイストレーニング)を始めたので、お年玉は全部ボイトレの授業料に使った」と言うレイちゃん(19歳)のような子もいた。レイちゃんは総額7万円、両親からは3万円もらったそうだが、「来年は二十歳になるから、お年玉をもらえるのは今年が最後。二十歳になってもお年玉がもらえたらいいのに」とつぶやいていた。お年玉の使い道に対する質問で「貯金」と答えた子は今回皆無だったが、総額3万6,000円もらったというチヒロちゃん(13歳)は、「親が1万円は必ず貯金しろって言う。貯金しないで、全部遊びや服に使いたい」と不満を漏らしていた。
今年もらったお年玉の金額は昨年と比べて「減った」と答えたのは11人。「増えた」が4人、「変わらない」が3人だった。「高校生になったから増えた」というタクヤくん(16歳)のように、時代の景気感を反映してか、減額になった例が多かった。ほとんどは「お年玉はもっと欲しい」と言う中、総額8万円もらったというトモアキくん(16歳)は「この金額で満足している」という。しかし、総額12万円の最高額をもらったリョウくんは「満足といえば満足だけど、当たり前といえば当たり前の額かな」と、当然のように思っているようだった。
少子高齢化の影響もあり、昔に比べて高額のお年玉をもらっている10代の姿が目立った。しかし、中にはお年玉を一銭ももらっていない10代がいたり、昨年と比べて金額が減るなどの傾向も見受けられる。昔は、月々のお小遣いと違ってまとまった金額が手に入るお年玉は、趣味の物や常々欲しいと思っていた高額商品を買う傾向が強いように思えるが、実際はバーゲン品の購入や友達と遊ぶ時の資金として手軽な消費に回しているようだ。こうしたお年玉事情は、現代の10代の金銭感覚にどのような影響を与えるのだろうか。