まずは、渋谷センター街の入口にある「TOKYO文庫TOWER」で、8~9月に販売したティーン誌の人気ランキング上位10誌は以下の通りだ。
1位 | 「SEVENTEEN(セブンティーン)」 | (集英社/毎月1日発売/400円) |
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2位 | 「Popteen(ポップティーン)」 | (角川春樹事務所/毎月1日発売/450円) |
3位 | 「egg(エッグ)」 | (大洋図書/毎月1日発売/490円) |
4位 | 「Ranzuki(ランズキ)」 | (ぶんか社/毎月23日発売/390円) |
5位 | 「S Cawaii!(エス カワイイ!)」 | (主婦の友社/毎月7日発売/530円) |
6位 | 「BLENDA(ブレンダ)」 | (角川春樹事務所/毎月7日発売/500円) |
7位 | 「Myojo(ミョージョー)」 | (集英社/毎月24日発売/540円) |
8位 | 「Cawaii!(カワイイ!)」 | (主婦の友社/毎月1日/480円) |
9位 | 「JJ bis(ジェイジェイ ビス)」 | (光文社/毎月18日/580円) |
10位 | 「Ego System(エゴ システム)」 | (リイド社/毎月17日発売/490円) |
上記ティーン誌には姉妹関係のものが多く、年代的にその雑誌を「卒業」した読者を対象に、ワンステップ大人びたファッションやライフスタイルなどを提案する「お姉さん」的雑誌を発行し、読者の囲い込みを行なっている出版社も多い。ちなみに1位の「セブンティーン」のお姉さん誌は8月23日に創刊したばかりの「PINKY(ピンキー)」、2位の「ポップティーン」のお姉さん誌は6位「ブレンダ」、8位「カワイイ!」のお姉さん誌は5位「エス カワイイ!」、9位「ジェイジェイ ビス」は、「JJ(ジェイジェイ)」の妹誌という関係にある。3位の「エッグ」はギャル雑誌の草分け的存在で、4位「ランズキ」や10位「エゴ システム」も同じギャル系列の雑誌と言える。また、ランキングの中でも「ミョージョー」のみがアイドル雑誌で、残りはすべてファッション誌という結果だ。
「TOKYO文庫TOWER」の雑誌売場を担当する藤永さんに、10代女子の購買行動について話を聞いた。「10代女子の顧客は、発売当日に訪れ中身も見ないでレジへ直行する子がほとんど。特にセブンティーンを買う子は明らかに目的買いが多く、毎月来店する顧客も多い」と藤永さんは話す。同店では、今年の7月から雑誌を透明ビニールでパッキングしており、付録のない雑誌に限っては発売日から約1週間だけ、立ち読み用の見本誌を置くスタイルに変更したという。ただし、例外として「エッグ」「ランズキ」「エゴ システム」の3冊は付録がない場合でも見本誌を置いていない。その理由について藤永さんは「いわゆる『色の黒い』ギャル系の子たちは、見本誌を出しておくと店頭をグチャグチャに汚してしまうことが多いので、やむなくこの方法を取った。その結果、各誌月10冊は販売部数が増えている」と説明する。渋谷駅近辺では他にパッキングしていない書店も未だ多いため、立ち読み目的の顧客にとっても特に問題はないようで「見れないから買うか」とつぶやきながらギャル雑誌を購入する10代女子が増えているという。
10代女子の店内における行動について特徴を聞いてみると、藤永さんは「見本誌を立ち読みしている子は、明らかに見たいページだけをチェックする立ち読み目的で、必ずと言っていいほど購入しない。反対に、購入目的の客は店内に入って商品を取り、まっすぐレジへ直行する」と言う。また、「友達同士で回し読みをしている子も多いようで、『今月は私がコレを買うから』などと言いながらそれぞれ違う雑誌を購入していくグループ客も見受けられる」と藤永さんは付け加える。ティーン誌は大体400~500円台が相場だが、お小遣い事情の厳しい現代の10代にとっては、読みたい雑誌をすべて購入できるわけではない。書店での立ち読みや友達との回し読みをうまく利用しながら、必要な情報を収集しているようだ。
TOKYO文庫TOWER女子高生から高い支持を受ける雑誌「S Cawaii!(エス カワイイ!)」は、最新の10月号で4周年を迎える。同誌編集長の影山さんに話を聞いた。「当誌は、かつて一大ギャルブームを築き、現在はギャルを卒業した女性をターゲットに創刊したため、実際の読者層は18~23歳と把握している」と影山さんは語る。アンケート調査などからも、現在フリーターの読者が大半を占めているそうだ。しかし実態は、出版側の意図とは関係なく常にワンランク上の大人の世界に憧れる傾向のあるティーンズも愛読している、ということなのだろうか。ちなみに「エス カワイイ!」の「S」は、SPECIAL、SUPER、SENIOR、SHIBUYAなど、様々な単語を総称しており、それぞれ読者に自由に意味付けしてもらいたいとの考えで付けたそうだ。
「かつてのギャルブームを築いた世代の子達は独特な感性を持っているため、既存のファッション誌に満足していなかったようだ。ファッションにおいても『他の人とかぶりたくない』という意識が強く、当誌では109ブランドに古着や原宿ブランドなどもミックスした独自のスタイルを提案している」と影山さん。かつてのギャル達に見られる「人とかぶりたくない」という意識、独自のものを求める意識は、ファッションだけに限らず社会に出てからの生き方にも表れている。影山さんによると「会社に属することよりも、夢や自由を目指して現在はフリーターでいるという子も多いため、ファッションだけでなく生き方などをテーマにしたメッセージ性の強いマガジンであることも編集方針の一つ」だそうだ。たとえば、「強い女シリーズ」という企画では読者がリスペクトするような成功した女性を著名・無名に関わらずクローズアップしたり、若くして母親となった「タフマザー」を取り上げたりといった記事も多い。
次世代の読者ターゲット層として、現在の女子高生をどう捉えているのだろうか。「現代の女子高生はパワフルな世代の狭間で比較的おとなしい世代ではないか」と影山さんは見る。かつてのギャルブームを巻き起こした世代と、現在109-(2)を盛り上げる中学生などのローティーンの狭間にいる世代は影が薄い、という見解だ。「エスカワ」の創刊当時にギャルを卒業したという子たちは、独自の感性が一貫しているため、当誌のファンとしても根強い。しかし、現代の高校生は読む雑誌も浮気がちであり、卒業と同時にうまくシフトチェンジして、社会に適応していく姿が予想される。「10代にパワフルな世代が訪れるには一定の周期があるように感じている。次世代は次世代で、常に読者層が求める誌面作りを心掛けるつもり」と影山さんは語る。
主婦の友社渋谷センター街を歩くティーンの声を聞いてみた。エミちゃんは、ここ3年ほど「ポップティーン」を愛読しているという高校2年生の女の子だ。「自分の着たい服がいっぱい載っているから、ファッションページが目的で毎月買っている」というエミちゃんは、雑誌でお店をチェックして掲載商品とまったく同じ物を購入することが多いと言う。「いつも学校で授業中に読んでいる。授業中が一番ヒマだし、気ままに読めるから」と笑うエミちゃん。友達との貸し借りはあまりせず、3年分のポップティーンは全部捨てずに取ってあるとのこと。「前のを見て、その時流行っていたものとかを見るのも面白いから」とエミちゃんは言う。同じく高2のケイコちゃんは「中学の時は『ポップティーン』を読んでいたけど、最近は服の趣味が変わって、高1から『ノンノ』を買い始めた」と言うが、自分で買う時もあれば買わない時もあるとか。「特集の内容によっては、買わずに友達に借りることもある。今ならブーツ特集とか、季節の変わり目のファッション特集なら自分で買うかな」(ケイコちゃん)とのこと。
中には、「ViVi」などの20代をターゲットとしたファッション誌を好んで読むという女子高生も少なくなかった。高2のハルカちゃんは「お姉系のファッションが好きだし、モデルの佐田真由美さんが好きだから『ViVi』を毎月買っている」と言う。ただし、掲載商品などはブランド物で手が出ないため、参考にする程度で似たような雰囲気の物を購入することが多いそうだ。同じく「ViVi」をよく読むという高3のユカちゃんは、「たまに『ランズキ』とかも買うし、特に決まってない」と言う。ユカちゃんの雑誌選びは少しユニークで、街中でカワイイ人を見かけるとその人と同じ服装がしたくなるため、そのイメージに近い雑誌をその都度選んで買うことが多い、とのことだった。お姉系の「ViVi」もギャル系の「ランズキ」も、かわいければどちらもOK、ということらしい。
ファッションページ以外で面白い記事や楽しみにしている記事については、「占いのページ」と答えた女子高生が圧倒的に多かった。「ブレンダ」を毎月買い、たまに「エスカワ」を買っているという高3のアキちゃんは、「占いとか恋愛系の記事は面白い。自分に合う男の子のタイプを診断できるヤツとかは、必ず試してみる」と話す。また、流行ものランキングの記事が楽しみだというマンバ系のユキちゃんは、中1から「エッグ」を愛読している。ユキちゃんは、「『エッグ』はギャル雑誌の中でも一番古いし、一番有名だから必ず買う。その他のギャル雑誌は立ち読みで済ます」と言う。『ランズキ』や『エゴ システム』は友達の中でも読んでいる子と読んでいない子がいるらしく、話が通じないことも多いからだそうだ。ユキちゃんは「モデルの『かぁ~たん』が好きで、好きなブランドも『アルバ(アルバローザ)』で一緒だから、ファッションも参考にしている」とのこと。かぁ~たんとは、マンバの教祖と言われている人気の読者モデルで、こうした読者モデルの存在も、長く愛読する一つの要素となっているのかもしれない。
競争が激化するティーン誌市場の中でも、ギャル系、お姉系、正統派の女子高生雑誌など、一見ファッションの系統によって棲み分けができているように見える。しかし、その実態は複数の雑誌を月毎に買い替える10代女子も多く、書店での立ち読みや友達との回し読みでジャンルの違うファッション情報を要領よく収集している様子も伺えた。ファッションのスタイルが確立していない子も多い10代女子は、様々な雑誌の中で模索している。読者の囲い込み戦略を練る出版社側の思惑は、果たしてどこまで通じているのだろうか。