ティーンズを対象とした市場調査やプロモーションを手掛けるアイ・エヌ・ジー(宇田川町)では、毎月1回、渋谷の女子高生200人を対象にアンケート調査を行なっている。2004年7月に行なった「自分から告白したことがあるか」という調査の結果、「ある」と答えた女子高生は136人で全体の68%、「ない」と答えたのは61人で30.5%だった(無回答3人)。また、2003年9月の調査では、「自分が告白するとしたらどうやって伝えるか」という質問をしたところ、一番多かった回答は「直接会って伝える」が114人で全体の57%を占め、2位が「メールで伝える」60人(30%)、3位「電話で伝える」22人(11%)、となっており、その他は「友達を通して伝える」が2人、「手紙で伝える」が1人という結果だった。
また、「告白されるならどうやって伝えて欲しいか」という質問に関しては「直接会って伝えて欲しい」が1位で168人(84%)、「メールで伝えて欲しい」が2位で21人(10.5%)、3位「電話で伝えて欲しい」11人(5.5%)という結果だった。自分が告白する側のときよりも「直接~」という回答が多いことから、自分はさておき、相手には勇気を持って真剣に告白して欲しい、というわがままさも垣間見える結果となった。
同社スタッフの中山さんは「最近は10代の女の子が積極的になっていて、特に渋谷の女子高生の中では『自分から告白する』という子が年々増加している」と話す。中には、好きだと思ったらすぐ告白するというアクティブな女の子もいて、フラれてもあまり悲しくないし、自分から告白するほうが傷つかない、といった考え方の女の子も少なくないという。「とくにギャル系の女の子は1ヵ月に3回彼氏が代わったなどという子もいて、彼氏がいる状態が当たり前となっている。気軽に『ノリで』告白することも多いようだ。どちらかと言えば、10代は男の子のほうが真剣な気持ちで告白する子が多いのでは」と中山さんは見ている。
告白の方法について、やはり現代の10代ならでは、といった感があるのが電話やメールといったツールを使った告白だ。直接会って伝えるのが一番だというのは今も昔も変わらないが、ひと昔前なら書いた人も多かったであろう「ラブレター」は、200人中たったの1人、その分メールでの告白をする10代女子が増えている。「メールで告白をするタイプの女の子は、緊張したり恥ずかしい思いをしたりしなくて済む、といった点が一番の理由だろう。しかし、中には微妙なニュアンスが伝わりにくい分、万が一フラれた時でも上手くごまかして『なかったこと』にできるから、とコメントしていた子もいた」と、中山さん。積極的な子の場合は面と向かって告白するため、メールは無視される可能性があるから敬遠するそうだが、あえてメールで告白する子の場合は「確実性のないところがいい」ということらしい。そんな10代女子の告白の傾向について、中山さんは「直接告白する子も、メールで告白する子も、総じて言えるのは相手に対する思い入れが軽いため、真剣味に欠ける傾向にあること」と話す。恋愛が盛んな現代のティーンにとって、告白という行為は昔ほど「一大事」ではなくなってきているのかもしれない。
アイ・エヌ・ジー恋愛カウンセラーとして、若者から多くの相談を受けているハート・ジャンクション主宰の安藤房子さんに、10代女子の告白事情について話を聞いた。「10代女子の告白の特徴として、大きく3つのタイプに分類できる。一つは『告白の仕方がわからない』という子で、どこで、どういう風に気持ちを伝えればいいのかといった質問が多い」と安藤さんは言う。そうした背景として、相談ができる仲の良い友達がいないか、あるいは友達に好きな人のことを相談するのが恥ずかしいという、コミュニケーションをとることが苦手な10代が増えていることを挙げる。二つめは「『勇気がなくて告白できない』タイプ。告白しても受け入れてもらえないだろうからと悩む臆病な子は、よくよく話を聞いてみると、友人関係や親子関係でも本音で話すことを避ける傾向にあるようだ」と安藤さん。携帯メールなどで言いたいことをやんわりと伝えることには長けている10代でも、本音は語らなかったり、面と向かって本心を伝えることは不得手だというのが見解だ。安藤さんは「日本人には昔から『言わぬが花』といった風潮があるが、現代の10代にはとくに、人間関係に波風を立てたくないという思いから、そうした傾向が強いのでは」と付け加える。
三つめは「『気軽に告白をしてしまう』というタイプで、このタイプの10代の『好き』という言葉には、あまり重みが感じられない」と、安藤さんは言う。男友達として気に入った1人に「あんたのこと好きだから、時々遊んでよ」といった内容のメールを送っては肉体関係を持ち、それでも決して真剣に付き合うわけではない、といった子も少なくないそうだ。「メールで告白する子の場合、わざと真剣に受け取られないように工夫をしている。顔文字を入れたり、『笑い』の意味の記号である『w』や絵文字を入れたり、フラれた場合に備えて『本気じゃなかった』と言える逃げ道を作っているようだ」とも話す。また、気軽に告白するタイプの子は、面と向かってストレートに告白する場合も「『あんたのこと、好きなんだけど・・・』といった言い方をするらしい。相手に受け入れられなかった場合でも、後で『冗談だよ』と、笑ってごまかすことができる余地を残しておく」(安藤さん)とのこと。「好きです」ではなく、「好きなんだけど・・・」という「言いかけの状態」で告白することで、現代の10代は後に続く自分の本音を隠しているのだろうか。安藤さんは「今の10代女子には、フラれた後も好きな人とはいい関係でいたい、フラれて傷つくようなカッコ悪い女にはなりたくない、という思いが強いのでは」と推察する。現代の10代女子は、先々のストーリーをシミュレートしながら、どういう展開になっても最終的に自分が傷付く度合いを最低限に抑えているようにも映る。
ハート・ジャンクション渋谷のセンター街で、女子高生を中心に告白話を聞いてみた。話を聞いた9人のうち、自分から告白をしたことがあると答えた女子は5人。自分からはないと答えた残りの4人も、男の子から告白されたことはある、と答えた。高3のユカちゃんは「告白したのは高2のとき。元々友達として仲が良かったから、相手の家で遊んでいた時に『付き合ってください』と言ってみたらOKだった」と話す。告白する以前に友達としての付き合いがあり、どちらかの家で遊んでいるというシチュエーションで告白したりされたりする子が意外にも多かった。高3のマミコちゃんは「メル友と初めて会った時、相手の家で遊んでいたら『好きなんだけど・・・』と告白された」と言う。「好きなんだけど・・・」という告白のセリフが多く使われる理由を聞いたところ「『好きなんだけど、どう?』って感じに言ったほうが、強制してない感じで、相手にウザイとか思われないからじゃないかな」とマミコちゃんはいう。
高3のトモミちゃんは「自分で告白したときは、まずメールで彼女がいるかどうかを聞いてから、直接会って『好きなんだけど』と告白した」と言う。相手の返事は残念ながら「前向きに・・・」とのことで、トモミちゃん曰くフラれてもいないし、付き合ってもいない状態だそうだ。一方、男の子からメールで告白されたこともあるそうで「『付き合ってくれない?』っていう文面だったけど、絵文字とか顔文字とかいっぱい入っていて『メールでこんなこと言っちゃうんだ』とは思った」という。相手の男子には適当にごまかした返信をして、トモミちゃんは今でも友達付き合いを続けているという。「相手の出方にもよるけど、なるべくなら友達関係は続けたいと思う。その方が自然だから」と、トモミちゃんは説明する。フッてもフラれても、気まずい関係になるよりは友達関係を続けたい、という意識は現代ティーンズの特徴だと言えそうだ。
高3のリカちゃんは、電話で呼び出されて「愛してるんだけど・・・」と告白されたことがあると言う。「愛してるって言われるのは嬉しかったし、満更でもなかったから付き合ったけど、2~3ヶ月で別れちゃった」(リカちゃん)とのこと。告白されたらとりあえず断らずに付き合ってみる、という10代女子にも驚かされる。高2のマドカちゃんも「友達としてよく遊んでいた子に『付き合わない?』って告白されたけど、3ヶ月で別れた。付き合っていたときは好きだったけど、今考えると普通・・・」と話す。年下の後輩から告白され、とりあえずOKしたけど1週間で別れたと言うマユミちゃんは、付き合った理由について「最初は何とも思ってなくても、そのうち好きになるかもしれないと思ったから」と言う。好きだという感情がなくても付き合ってみる、という背景には、もしかしたらうまくいくかもしれないという希望的観測があるようだ。
マユミちゃんが初めて男子に告白したのは小学校5年生の時。今まで自分から告白したことは5回ある・・・とかなり積極的な女の子だ。「メールで告白したこともある。まず、『今、気になっている人がいるんだよね』って送って、『誰?』って返信がきたから『お前』って送った」と話しながら、マユミちゃんは笑う。その後の相手の反応は『マジで?』と返信してきただけで、付き合うかどうかはまだ定かではなく、今度遊ぶ約束をしているそうだ。ところが、マユミちゃんは「本当に好きかどうかはわからない」と言う。実は、メル友としてメールを交換しているだけで実際に会ったことがないのだそうだ。「だから、男の子と付き合っても大体1週間くらいしかもたないんだよね・・・」と、マユミちゃんは言う。
好きな人を真剣に想う10代女子の中には、告白する勇気が持てないなどと悩み、メールで告白するのではなく直接会って伝えるべきだという考えを持っている子もいる。しかし、付き合ったり別れたり、恋愛を盛んに行なっている10代ほど「告白」に対する真剣味は薄れ、気軽に告白して気軽に付き合い短期間で別れる、といった傾向にあるようだ。携帯メールというコミュニケーション・ツールも、10代の「手軽な」告白を後押ししているようにも映る。そんな10代も、本当に好きな人と長く付き合いたいという想いは抱えつつ、心の底で模索しているだろうか。