現在、「部活」を行っている高校生はどれくらいいるのだろうか。体育系「部活」に参加している高校生の1位は「硬式野球部」で、日本高等学校野球連盟による2004年度の加盟校部員数は160,801名。その他については、全国高等学校体育連盟の2003年加盟登録状況によると、登録人員数が多い順に2位「バスケットボール部」(159,678名)、3位「サッカー部」(149,591名)、4位「テニス部(ソフトテニスを除く)」(120,583名)、5位「バレーボール部」(118,503名)となっている。1位の野球部と3位のサッカー部は男子のみで、その他は男女合計の集計であるため、男子高校生の中では「野球部」と「サッカー部」が人気を二分している。
次に、文化系「部活」に参加している高校生については、全国高等学校文化連盟による2003年度の調査データによると、人数順に1位が「吹奏楽部」(98,572名)、2位「美術・工芸部」(47,075名)、3位「写真部」(28,676名)、4位「演劇部」(25,190名)、5位「放送部」(24,172名)という結果になっている。また、体育系と文化系の人数を比較すると、体育系=1,431,146名、文化系=351,444名で、体育系対文化系の比率は約4対1の割合となっており、「部活」では圧倒的に体育系人気がうかがえる。
日本高等学校野球連盟 全国高等学校体育連盟 全国高等学校文化連盟学生同士のネットワーク作りのためのポータルサイト「キャスフィ」は、10代の登録メンバーを約5,000名抱えている。同サイトを運営する立教大学4年生の河本さんの協力で、全国の中学1年生から高校3年生までの男女25人に部活に関する質問を投げかけてみた。
現在の「部活」を選んだ理由については、「強くなりたかったから」(ラグビー部・高2男子)、「(その活動内容が)好きだから」、「幼い頃からやっていたから」などの正統派の理由が多かったが、「友達に誘われたから」(2名)、「(先生や先輩から)強制的に」(2名)、「先輩がカッコ良かったから」(5名)といった、活動内容とはあまり関係のない理由で入部した回答も見受けられた。中には、「中学時代はソフトボール部だったが、日焼けするのが嫌で高校ではバドミントン部にした」という高1女子もいた。また、無所属の3名が「部活」をしない理由について「放課後は友達とダンスをするのが楽しいから」(中3女子)、「ボランティアと絵を描く趣味があるから」(高2女子)、「ピアノを習っているから」(高2女子)など、「部活」以外の目的を持っている10代も少なくないようだ。
「部活で楽しい瞬間は」と尋ねると、「(技術が)上達した時」「(先生や友達に)誉められた時」「試合をしている時」といった回答が圧倒的に多かった。チームで行うスポーツの部活に入っている生徒の場合は「チームが一つになったと感じる時」という回答も。中には「部活が終わった後に部員同士で遊ぶ時」(野球部・中3男子)、「試合の日に弁当を食べる時」(バスケットボール部・中3女子)などといった回答も見られた。10代にとって学校での部活動とは、その活動自体の面白さ以外に部員仲間との交流が大切なのだろう。また、部活を途中で辞めたことがある生徒も数人おり、その理由については「体を壊した」「家に帰る時間が遅くなるから」というやむを得ない理由の他に「バスケットボール部の先輩と殴り合いの喧嘩をして辞めた」(中3男子)、「バスケットボール部に入っていたけど同じ年の友達と気が合わなくて辞めた」(中2女子)、「ソフトボール部にいたけど友達関係が嫌になって辞めた」(高1女子)など、10代は人間関係に悩んで部活を辞めてしまうケースも少なくないことがわかった。
「学校で一番人気のある部活、部員数の多い部活」(複数回答可)については、最も多かった回答が「野球部」で11人。次に多かったのは「テニス部」「ブラスバンド部」で共に6人、「サッカー部」4人、「バスケットボール部」3人という結果だった。体育系の部活は計31人、文化系の部活は計9人だったことから、全体的に比較的体育系の部活の方が盛んなようだ。
また、「男子が所属していると女子にモテる部活は?」という質問については、1位「サッカー部」10人、2位「野球部」8人、3位「バスケットボール部」6人、4位「ハンドボール部」、「フォークソング部」各1人という結果。一方、「女子が所属していると男子にモテる部活は?」という質問では、1位「テニス部」8人、2位「ブランスバンド部」4人のほかはすべて1人ずつで「チアガール」「新体操」「ダンス」「弓道」「バレーボール」「陸上」「バドミントン」など多項目に分散している。男子の場合は上位3位までにほぼ集中しており、いずれも体育系の部活であることから、スポーツマンタイプが女子にモテることはここでも明らかだ。一方、女子の場合はモテる部活のイメージが確定していないことから、部活と異性にモテることにはあまり関連がないのかもしれない。
「あったらいいな思う部活は?」と尋ねると、「心霊スポットを回りまくる『心霊部』」「ダンスや音楽など芸能関係に進む人に役立つ部活」「自然とひたすら戯れる『癒し部』」「芸人研究部」「休みの日に遊びに行く『旅行部』」「部費で洋服が買える『ファッション部』」「毎日バイトができる『バイト部』」などが挙げられ、日頃の10代の関心事をそのまま「部活」でやりたいという思いが表れていた。
Casphy(キャスフィ)神戸市立兵庫商業高等学校には、全国の公立高校でも珍しい、中国の伝統芸能である龍舞や獅子舞を踊る「龍獅團」という部活がある。1988年に龍獅團を作り、現在も顧問を続けている阪口先生に話を聞いた。「現在、学校で最も人気のある部活動は龍獅團で、部員数も70名と一番多い」と言う。同校の全生徒の部活動入部率は約8割で、体育系と文化系の比率は半々。全校でも女生徒の割合が男子よりも多く、龍獅團も男女比は3:1で女子が多い。龍獅團創部の理由について阪口先生は「17年前、神戸という土地柄を生かした特色活動として、伝統的な文化を生徒達に教えたいと考え、当初は部員8名でスタートした」と当時を振り返る。神戸市には南京町という日本でも有数の中華街があり、中国の旧暦のお正月に行われる「春節祭」などで、地元では龍舞や獅子舞はメジャーかつ人気の演目なのだそうだ。
主な活動としては「文化祭での演技発表が一番の目的ではあるが、老人ホームなどの福祉施設で演技を披露したり、観光庁からの要請に応じて各地の祭りへ出向いたりするなど、年に少なくとも40回は演技発表の場がある」と阪口先生。龍舞や獅子舞は華僑が広めた中国文化で、台湾やシンガポールなどでも盛んなためアジア各国で競技会が開催されているが、同校の龍獅團はそうした海外の競技会にも出場し、上位入賞の実績を誇る。そのため、練習も毎日放課後は19時半まで、土日は朝9時~夜19時まで熱心に行っているという。「内容としては文化的要素もあるが、実際にやっていることはかなり肉体的にハードであるため、体育系の部活だと考えている」と阪口先生。
龍獅團が生徒に人気の要因について、阪口先生は「誰でも初心者から始められ、頑張って練習して演じた時は観客に感動してもらえる。それで生徒達も夢中になるのでは」と推察する。老人ホームなどで演じた時は、その壮大さと優美さに感動し、泣き出すお年寄りも少なくないそうだ。こうした環境が部員に与える影響は大きい、と阪口先生は言う。「最近になって、2年生の男子から『中学生の時は何かを一生懸命やることなんてバカにしていたけど、龍獅團に入ってからは考え方が変わった』と言われたときは嬉しかった」(阪口先生)。また、活動時間の長いことや生徒が夢中になる様子を見て、最初は部活を反対する両親も多かったと言う。それでも、いつの間にか賛成側に回ってしまうケースがほとんどだそうだ。今後は、秋の文化祭に向けて龍獅團の練習活動にも熱が入る時期だという。
神戸市立兵庫商業高等学校中学・高校時代に部活に参加することは、先輩・後輩などの上下関係の規律が身に付くという利点もあり、また同学年同士で仲間意識が芽生えるという貴重な経験もできる。体育系活動に入っている生徒の場合は、そのほかの生徒に比べて体力・運動能力が優れている傾向にあるという調査結果も出ている。勉強や部活以外の趣味に時間を割いている10代も少なくない中、部活に燃える10代も依然健在だ。