企業向けのマーケティング・データ・サービスを提供するインフォプラントのC-NEWSは、13~19歳の女性インターネットユーザー400人をターゲットに、好んで食べる菓子やそれを選ぶ基準などについてアンケート調査を行った。その結果、自宅で菓子を食べる頻度は13~15歳では半数近くが「ほぼ毎日」と答え、全体でも4割の10代女性がほぼ毎日何らかの菓子を食べているという。
よく食べるのは「チョコレート」が7割弱、「クッキー・ビスケット」が6割強と、甘いものが上位を占めている。また、自宅用の菓子を購入する先は「スーパー」が9割弱とほぼ独占。選ぶポイントは「味/味への期待」が8割半ば、「価格」が8割強と実利的な面も伺える。
一方、自宅外で菓子を食べる頻度については、ほぼ半数が「週1日以下」で、「ほぼ毎日」が1割という結果。よく食べる商品は「あめ」「ガム」などの携帯しやすい小さな商品がトップで、購入場所は「コンビニ」が8割という結果だった。食べる場所については、中学生とそれ以上では大きく異なり、中学生では「友人・知人・親戚宅」が5割半ばと最も多く、「公共交通機関(電車・バスなど)の中」でも4人に1人が食べていると答えた。中学卒業後は「学校/会社」が8割強と突出しており、行動半径が広がっていることが伺える。
10代を始めとするヤング層をターゲットに、ヒット商品を送り出している東ハトから4月19日、新商品「mobi」が発売され、早くも人気を集めている。同社コーポレートブランド室の担当者に、商品開発の舞台裏について話を聞いた。「モバイル・ビスケット、略して『mobi』は、携帯電話のようにポケットやカバンに入れて持ち歩ける小袋パッケージが特徴。いつでもどこでも手軽に食べられるように、ポイッと口の中に入れられる一口サイズのビスケットやスナックを、食べきりサイズにパッキングした」とのこと。最近、街中では何かを食べながら移動している人々をよく見かけるようになったが、今や菓子業界でも「モバイル」がキーワードとなってきた。「一昔前の子供達は、スーパーでお母さんが買ってきた菓子を、家庭で食べるのが一般的だったが、今はコンビニの浸透により、子供達は自分のために自分で菓子を購入する。そのため東ハトでは、どんなシーンでも手軽に食べられる携帯性の高いスナック菓子が、10代を含む若年層に求められていると考えた」と話す。
「mobi」ブランドの第一弾として発売されたのは「モビ ハーベストサンド・いちごチョコ」「同 ハーベストサンド・ミルクチョコ」「同 スナックピンチョス・えび」「同 スナックピンチョス・ベーコン」「同 ハーシュポテト・暴君仕立て」の5アイテムで、今後はさらに新しいアイテムも加わる予定。中でも「暴君仕立て」は同社ウマ辛スナック「暴君ハバネロ」の味を引き継いだものだという。「当社で独自に調査を行った結果を参考に、人気の高いテイストをセレクトし、気分によって食べたい味を選べるようにバランスよく揃えた」と言う。移り気なティーンを飽きさせないため、豊富なバリエーションを揃えた点が人気のポイントになっているようだ。「mobi」は、今のところ中部以東での地域限定発売だが、東京を中心に既に生産が追いつかないほどの売れ行きだそうだ。
この商品で面白いのは、カラフルでインパクトのあるパッケージ。それぞれに原材料として使われている素材を頭にのせた、個性的なキャラクターのイラストが施されている。「菓子のパッケージは、一目でわかる印象的なものであることが重要なポイント。さらに、10代のお客様にはちょっとした遊び心や楽しさ、ウキウキ感のあるパッケージが好まれる傾向にある」とのこと。もちろんおいしいということが大前提だが、ティーンをターゲットとする場合はとくに、友達同士で話題にしたり、ちょっと笑えたり、といった要素も重要なのだと言う。
ちなみにこのキャラクターには、名前とともに詳細なキャラクター設定が行われている。ターバン風にベーコンを頭に巻いた「モビ スナックピンチョス・ベーコン」のキャラクターは「LADY BACON feat. T」という名前で、通称「ベーコン姉さん」と呼ばれている。「T」はクラッカーがトマト風味のため、トマトのTを指すそうだ。えびをモヒカン風に頭にのせた「モビ スナックピンチョス・えび」のキャラクターは「EBI(イービーアイ)」、唐辛子の帽子を被った「モビ ハーシュポテト・暴君仕立て」のキャラクターは「ハーシュ歩帝人(ぽていと)」といった具合で、この個性的な5人のキャラクターは「モビ5(ファイブ)」というバンドを結成しているという設定。「お菓子に独自の世界観やストーリー性をもたせることで、おいしさだけでなく楽しさを提供することができる。菓子と共に、キャラクターにも愛着を持ってもらいたいと考え、綿密なキャラクター設定をした。『Mobi』のCMソングは、彼らが歌っている…かも」とのこと。謎めいた部分を残されると、さらに興味の増すのが消費者心理。スナック菓子は、単に食べるという目的以外の仕掛けが、ティーンズに支持されるために不可欠となっている。
東ハト「mobi」の発売日と日を同じくして、JR渋谷駅山手線外回りホームに「キヨスク&東ハト コラボショップ」、通称「赤キヨスク」がオープンした。同店は東ハトの看板商品である「キャラメルコーン」と、最近のヒット商品「暴君ハバネロ」のデザインをモチーフとした真っ赤な外観で、通常のキオスクの品揃え以外に、東ハト商品の独立コーナーを設けているのが特徴。スナック菓子の他、同店でしか購入することのできない東ハト・オリジナル・グッズ、キャラメルコーンと暴君ハバネロの「オリジナル携帯アクセサリー」(各500円)や、4月14日からタワーレコードでも限定発売されている、「暴君ハバネロ」のCM曲「the main theme from the Legend of Boukun Habanero」(1,500円)のCDなども並ぶ。渋谷駅出店の狙いについて、東ハトでは「スナック菓子の主な購買層である10代の消費者にとって、最も有力な情報発信地であることから渋谷駅での出店を決めた」と言う。
「暴君ハバネロ」は、昨年11月から発売されたポテトスナックで、ウマ辛テイストと個性的なキャラクターが創り出す独特の世界観が話題となり、10代にも人気のポテトスナックだ。「ハバネロ」とは、メキシコ産の世界一辛いと言われているトウガラシのことで、パラペーニョの約80倍、タバスコの約10倍の辛さを持つと言われている。「トウガラシは戦いや拷問、刑罰の道具など、攻撃的な用途にも使われた食材であり、なかでも世界一辛いと言われる『ハバネロ』はトウガラシ界の帝王。触っただけで痛い目に遭うこともある『暴君』といったイメージ。『暴君ネロ』から連想してこのネーミングが生まれた」とのこと。ただ辛いだけではなく、野菜の旨みや香辛料をバランス良く組み合わせた「ウマ辛」テイストが人気の秘密だそうだ。
黒色のバックに、恐ろしい顔をした「ハバネロ」のキャラクターがインパクトのあるパッケージだが、このキャラクターにも「ハバネロオレンジ三世」という列記とした名前がある。同社の看板商品である「キャラメルコーン」のキャラクターは、どちらかと言えば優等生タイプの可愛らしいキャラクターだが、対する「暴君ハバネロ」は個性的で、憎らしいけれどどこか憎めない斬新なキャラクターだ。「ハバネロのキャラクターには、当社の予想以上にかなりコアなファンが多く、インターネット上で情報のやり取りなどが盛んに行われていた。そこで、こうしたファンとのコミュニケーションを築くため何か仕掛けができないかと考え、若い消費者が興味を持ちそうな音楽に焦点を当てたのが、CD化の意図」(東ハト)。現代の若者はパソコンの普及により、手軽に音源を手に入れたり、曲を作ったりできる世代であることを反映して、収録されている曲を自由にリミックスして応募するキャンペーンも実施している。こうした仕掛けも功を奏してか、タワーレコードでは好調な売れ行きを記録し、ネット販売では入荷待ち状態が続いているという。また、「赤キヨスク」でも予想外の売れ行きで、東ハトの営業担当が慌てて商品の補充を行うために店舗に駆けつけたというエピソードもあったそうだ。
では、ティーンが実際に購入しているスナック菓子には、どのような傾向があるのだろうか。渋谷・新宿・自由が丘でショップを展開し、人気商品ランキングの上位商品をリアルタイムで販売している「ranKing ranQueen(ランキンランキン)」で、2004年4月の1ヵ月間に10代が購入した食品の人気ランキングを見てみよう。
1 | チュッパチャプス | 森永製菓 | スティックキャンディ |
---|---|---|---|
2 | かむかむレモン | リバティジャパン | 噛むキャンディ |
3 | ピュレグミ ピーチ | カンロ | グミキャンディ |
4 | 果汁グミグレープ | 明治製菓 | グミキャンディ |
5 | ピュレグミ レモン | カンロ | グミキャンディ |
6 | ポケモングミ | 明治製菓 | グミキャンディ |
7 | プリッツ めんたいこ | グリコ | プレッツェル |
8 | プラスX グリーンアップル | ロッテ | シュガーレスガム |
9 | グリコ プリッツ サラダ | グリコ | プレッツェル |
10 | スナイダース クリーミーカラメル | スナイダース | スナック菓子 |
1位「チュッパチャプス」(森永製菓)、2位「かむかむレモン」(リバティジャパン)、3位「ピュレグミ ピーチ」(カンロ)といった具合に、上位6位まではすべてキャンディ類が占めている。いわゆるスナック菓子としては7位「プリッツ めんたいこ」(グリコ)、9位「プリッツ サラダ」(グリコ)、10位「クリーミーカラメル」(スナイダース)がランク・インした。東急電鉄、ランキンランキン・プロジェクトの三浦さんに、10代に売れているスナック菓子の傾向について話を聞いた。「10代のスナック菓子の購入傾向としては、通学途中で簡単につまめる、買ってすぐ食べられるという形状がポイントとなっているようだ。そのため、キャンディやグミ、食べやすいプレッツェル、小袋に入ったスナックがよく売れている」と分析を加える。さらに、1977年に日本に登場した「チュパチャップス」の発売元である森永製菓広報部の松田さんによると、全部で8種あるフレーバーの売れ行きは1位=ラムネ、2位=プリン、3位=グレープとのことだ。「昔は小さなお子さんがターゲットだったが、最近では女子高生が食べながら歩くのがファッションとなりつつあるようで、売り上げも伸びている。カバンのなかに常備している女子高生も多いと聞いている」(松田さん)と、10代人気の様子を話す。
ranKing ranQueen(ランキンランキン)味覚の傾向としては「キャンディの場合は圧倒的にレモンやグレープフルーツなどの柑橘系が人気。昨年大ブームだったレモン味は引き続き人気を保っているが、今年に入ってからピーチやアップルも伸び始めている。いずれにしても、10代の消費者には甘酸っぱい味が好まれているようだ」(三浦さん)。また、スナックは新しい味や季節限定の味が登場すると、真っ先に飛びつくのが10代で、ランキングでも上位に上がってくるという。こうしたことから、ティーンズが求めるスナック菓子は、食べるシーンの変化に合わせた「携帯性」が鍵となっているようだ。また、菓子としての味だけでなく、「目新しさ」「キャラクター性」「ストーリー性」など、話題となる付加価値が口コミ効果を誘発することが、ヒットに結びつく。