特集

本命狙いで客単価アップ!
渋谷バレンタイン商戦2002

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■今年は「量より質」、本命志向のバレンタイン商戦

1年のうち最も消費が落ち込むのが2月。この時期は気温も下がり、飲食、物販、サービス業を問わず、文字通り厳しい“底冷え”を迎える。日本のバレンタインは1936年、モロゾフが日本で最初にバレンタインデーの広告を出したのが始まりとされている。大きなイベントがない底冷えの2月に“バレンタインデー”という名の救世主が現れてすでに66年が経過した。

日本チョコレート・ココア協会が公表する「チョコレート推定販売額推移」によると、2000年度のチョコレート国内消費額は4,667億円。その中でバレンタインデー販売額は約500億円とされる。さらに2001年度のバレンタインデー販売額は520億円に伸び、長引く景気低迷を感じさせない数字を示している。1970年には55億円しかなかったバレンタインデーのチョコレートマーケットは、30年で10倍近くに拡大した。今年1月、プランタン銀座が行ったバレンタインアンケートによると、義理用に購入するチョコの平均個数が、昨年の12.5個から今年7.8個へと大幅ダウンする一方、金額ベースでは、本命用が昨年の3,340円から3,410円へと70円アップ、義理用は昨年の560円から今年970円へと大幅な伸びを見せている。今年は、全体的に「量より質」を求める高付加価値志向の消費者像が浮かび上がってくる。

日本チョコレート・ココア協会
イメージ写真

■人気パティシエの集客力に期待のかかるデパ地下商戦

近年の傾向として、顕著なのが、昨年から続く「パティシエ・ブーム」。人気パティシエが作り出す“スウィーツ”が、デパ地下人気をさらに高めたことは記憶に新しい。クリスマスに次いで、人気パティシエの集客力に期待がかかるのがバレンタイン商戦。

「東急フードショー」のイベントスペースでは、2月14日まで都内の人気パティシエのオリジナルチョコが販売される。「テオプロマ」(富ヶ谷)の土屋シェフが作る「クールボヌール」(2,500円)や「エスプリ・ド・パリ」(吉祥寺)の鈴木シェフが作る型抜きチョコ「モールドチョコ」(950円~)が登場し、人気を集めている。一方、「シブヤ西武」では、B館地下1階イベントスペースを“バレンタインチョコストリート”と名付けて、2月6日~14日、フランス・日本を代表するパティシエが競演する「チョコレートワールドカップ」を開催するほか、「ザ・ガーデン シブヤ西武」の「ホットパティシエ」では2月8日から11日まで限定予約で、限定ケーキを販売する。「東急フードショー」にも登場している「テオブロマ」土屋シェフをはじめ、「シェ・シーマ」本間シェフ、「モンサンクレール」辻口シェフなど人気パティシエが自信作を披露する。こうした動きは、作り手の顔が見える昨今の「パティシエ・ブーム」の流れを汲んで、今年のバレンタインを象徴する風景ともなっている。

東急百貨店 西武百貨店

■プロセスに付加価値を加える“手作り派”の増加

本命ニーズが高まり、“手作り派”が増加する中、“お菓子”系スクールへの駆け込み受講も少なくない。 「ECRU(エクリュ)」(代官山)は、オーガニック料理とナチュラル・スウィーツで知られるベジタリアンカフェ。同店は「オーガニック・クッキング教室」を開き、毎月第3水曜には、豆腐を使った“ヘルシーケーキ教室”を設けている。2月8日、12日に開かれる教室は「ハートの豆腐チョコレートケーキ」や「メレンゲキッス」など、バレンタインにちなんだナチュラル・スウィーツがテーマ。卵、バター、砂糖、油を使用せず、豆腐をベースに作りあげるチョコレートケーキは、ローカロリーで健康にこだわったレシピ。また、同店では「オーガニックチョコとPetit Love Loveセーター」のギフトセット(850~1,200円)の販売も行っている。

ECRU/TEL:03-3770-3309

“ハンズのバレンタイン”と銘打ってバレンタイン関連商品が充実している「東急ハンズ渋谷店」では、「認定書 あなたを愛する彼と認めます」「感謝状 いつも楽しい時間をありがとう」など、気持ちを伝えるカード式の「愛情チケット」(全12種類)を2月14日まで店頭(3フロア)で配布している。コミュニケーションツールとして利用できる、ユーモアたっぷりのカード。また、トリュフ&生チョコ、ティラミスやクラシックチョコケーキなど13種類のレシピが詳しく紹介された、渋谷店オリジナルの「バレンタインレシピ」が、チョコレート材料・製菓器具(2階Cフロア)で無料配布されており、ここで紹介されている材料は、すべて同店で購入できる。チョコレート材料・製菓器具コーナーでは、ハンズらしく、手作りキット、焼き型、お菓子ボックス、粉類などが揃っている。販売促進担当の岩尾さんによると、キッチン用品は定番商品が多いが、手作りキット(手作りトリュフセット600円、手作り生チョコセット450円など)の種類は増えているとのこと。「お菓子をあまり作らない方には、リキュールなどは必要ないので、キットだと無駄がないのでおすすめ」と話す。“ハンズのバレンタイン”は1月22日からスタートし、同店ではピークはバレンタインデー直前の週末と見ている。

東急ハンズ
東急ハンズ渋谷店の写真 東急ハンズ渋谷店の写真

「渋谷ロフト」では2月14日まで2階ロフトフォーラムに「淑女のための秘密の花園 バレンタインセンター」を設け、バレンタインに対応している。同センターでは手作りチョコレートやクッキング材料、バレンタインギフトから、プレゼントをする女性本人に向けたボディケア用品やダイエット用品など“女を磨くグッズ”まで取り揃えている。「今から間にあうボディケア」のコーナーには「たった48時間でヤセられる~48時間フルーツパワーダイエット」(6,800円)などが並び、バレンタインに向けての準備対応も万全の態勢。さらに会場では占い師による「恋占い」を無料で開催中。当然ながらバレンタインと恋占いの相性はよく、土日には占いを希望する女性の列ができる。同店販売促進係の山本さんは、今年のバレンタインの特徴を次のように話す。

  1. 既製のチョコより手作りチョコが人気。
  2. バレンタインを楽しむためのプラスアルファが求められている。
  3. “義理チョコ”減少傾向。本命重視の心のこもったプレゼント。

山本さんは「バレンタインは特定の人とのコミュニケーションを深めようという日なので、例えば“手紙を書こう”という提案も行っている」と加える。告白の日のためにさらに磨きをかけたい女性のための“女を磨くグッズ”は、いわば自分へのプレゼント。バレンタインを楽しむためのプラスアルファは贈る側に視点を置いて発展している。「渋谷ロフト」では入浴剤などバスグッズが前年度比140%の伸びを示しているという。“癒し系グッズ”の需要の拡大は、バレンタインギフトにまで影響を及ぼし、究極の“自分への贈り物”にまで至っているのだろうか。

ロフト
渋谷ロフトの写真 渋谷ロフトの写真

■和風やペット市場に広がるアレンジ系バレンタイン商戦

当然のことながら、今年のバレンタイン商戦は、昨年の癒し系ブームを踏まえた「和食」ブームや「ペット」ブームともリンクする。

シブヤ西武A館地下2階の「セタンジュ」では、バレンタイン特別メニューが登場。中でもユニークなのは「京うどん ひよこ」のバレンタインセット(890円)。みるくうどんにチョコがけアイス大福がついているもので、みるくうどんは「真っ白な心を届けたい」という思いを込めて、京うどんを洋風麺にアレンジしたとのこと。ベースとなるダシは北海道の利尻昆布、鹿児島枕崎の鰹節をメインにした京うどんで温まり、チョコシロップをかけて食べるアイス大福がデザートとして付いてくる、意欲的な試み。

一方、東急東横店の「KOSEN」では、とろとろの湯葉とチョコを吉野葛(よしのくず=奈良・大和連山で採集した葛藤の根をつぶし清らかな水と寒水で寒ざらしにしたもの)で固め、雪に見立てた豆乳と蜂蜜のプリンを重ねた二層仕立ての和風デザート「豆乳はちみつと湯葉チョコのすり流しぷりん」(450円)が登場。同じく東急東横店の“諸国名産コーナー”では、宇治茶の老舗「京都・中村藤吉」が製造した、秘伝のブレンドをほどこしたお茶とチョコが融合した「生ちゃこれーと」(20個入り1,000円)が店頭に並んでいる。このように和食や和菓子業界はチョコレートと和の食材を豊かな発想で融合させ、バレンタイン商戦に参入している。

2001年7月、代官山にオープンした愛犬家のためのショップ「スリードッグベーカリー」には、愛犬にあげるバレンタインクッキー(500円)やハート型バレンタインケーキ(350円)、バレンタインギフトセット(1,000円)などが揃っている。クッキーやケーキは天然素材だけで作られていて、カフェインが入っていないチョコを使用しているので安心して愛犬にプレゼントすることができる。同店の横山さんは「散歩で出会う仲の良いワンちゃんにあげるとか、愛犬家の友達にプレゼントするなどして、楽しんでもらいたい」と話す。来店客は愛犬家の顔を思い浮かべ、一度に3、4ケまとめて購入することが多いという。横山さんは、贈り手と愛犬のオーナーとの人間関係もさることながら、愛犬とオーナーの関係も潤滑になるという。「かわいいケーキやクッキーをあげると、ワンちゃんはとても敏感で素直に喜びを表す。しつけをする時や留守にして帰宅した時など、ワンちゃんへのご褒美としてバレンタインクッキーやケーキをあげると、ワンちゃんとのコミュニケーションも深くなる」と横山さん。同店ではメッセージを描ける骨型のクッキー「ラージボーン」(280円、箱付き330円)も人気とのこと。

スリードッグベーカリーズ代官山店
スリードッグベーカリーの写真 スリードッグベーカリーの写真

■渋谷の専門店・個店は提案型“大人のバレンタイン”

シブヤ西武A館地下のリカーショップ「ヴィノスやまざきWINE+ist」では、バレンタインにワインギフトを提案している。ボルドー産赤ワインのピュイ・ダムールにベルギー産の手作りチョコをセットにして箱に詰めた「ピュイ・ダムールセット」(2,580円)や200ml サイズのシャンパンとベルギー産手作りチョコの「ちびシャンパンセット」(2,280円)などセットを準備している。同店では「バレンタインはチョコもいいけど、もう一歩進んで印象づけたり、おしゃれに決めるにはワインギフトが最適。また、バレンタインデーに彼とワインを飲みませんか、という提案もある」という。

ヴィノスやまざき

ユナイテッドアローズ(原宿)では、チョコレートとバレンタインプレゼントに添えて使用するカードを用意している。さらに原宿本店では2月8日、コーラスグループSMOOTH ACE の公開録音ライブ(18:00~)を開く。当日はSMOOTH ACEからのチョコのプレゼントとギフト抽選会も予定されており、大人のバレンタインが楽しめる。

ユナイテッドアローズ

毎年、店頭に長蛇の列が出ることで名高い表参道「アニヴェルセル」の「オリジナルショコラ」。昨年もバレンタインデー前に売り切れ、購入できない人が多かったことから、今年はFAXで事前予約を行っている。FAXの受付は2月8日(=本日)の午後8時まで。同店広報の岩田さんによると、「昨年購入できなかった方や地方にいらっしゃる方から、クリスマス前くらいからバレンタイン・ショコラへのお問い合わせをもらっている」と話す。FAXで予約できるショコラは、バレンタイン限定の「フォンダンショコラ」「モンクールダムール」「パルフェタムール」と定番人気の「ガトーショコラ」の4種類。受付方法はオーダーシート(申込用紙)を同社ホームページからダウンロードしてプリントアウトし、必要事項を記入して指定のFAX番号まで送付。2月10日~13日の間の指定日にクール宅急便で全国配送となる。

アニヴェルセル表参道

靴の修理と合鍵で全国に314店舗を構える「ミスター・ミニット」では、表面をバレンタイン・モチーフでデザインした「スイート・ヴァージョン」の合鍵が登場。ショコラ、マーブル、クッキー、マシュマロなど6種類の柄が、バレンタイン期間限定で登場する。

ミニット・ジャパン

「セルリアンタワー東急ホテル」(桜丘)では、2月8日~14日まで、バレンタインデーをロマンチックに彩る宿泊プラン「バレンタイン・スティ・ウィズ・シャンパン」を実施する。夜景が美しいスーペリアフロア(25階以上)の部屋にシャンパン(ハーフボトル)とオードブルを届けるもので、料金は2名1泊50,000円(サ込み・税別)。

セルリアンタワー東急ホテル

女性にとって、今年はチョコの数を減らした分、吟味してプレゼント選びに時間をかける。本命用には時間をかけた「手作り」や「プレミアム感の高いチョコ」など希少価値を求めているため、必然的に単価は上がる傾向にある。手作り派もプレミアム派も“高付加価値”志向という点では同じ傾向と言える。こうしたトレンドは「特定の男性とはより深く親しい関係を続けていきたいが、そうでない不特定多数の男性とは距離を置いたつきあいで良い」と考える女性が増えたことを示しているのかもしれない。“大勢でわいわい”主義から“少数でしっぽり”系に移っているとされるコミュニケーションの傾向は、昨今の飲食店の“仕切り系”個室ブームにも通じるところがある。

バレンタインデーまであと1週間。関係する業界では、直前の“下調べ&品定め”期間となるこの3連休が勝負どころと読んでいる。一時は義理チョコの数の多さがニュースになるほど過熱気味だったが、じっくりと時間をかけて吟味される今年のバレンタイン商戦は、真の実力が問われる戦いとなる。果たして今年のバレンタイン商戦、まずは売り手の“想い”がどこまで女性消費者のハートを射止めるのだろうか?

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