最近では「コンセプトショップ」と呼ばれることの多い企業の情報発信空間も、以前は「アンテナショップ」と呼ばれるケースが多かった。「アンテナショップ」とは、本来、新商品などを実験的に売り出し、消費者の反応から新たなトレンドを探ることを目的とした店舗のこと。“情報の受発信”を目的とし、消費者の反応を探る“アンテナ”の働きを持つことから「アンテナショップ」と言われていた。通常、流行の先端を行く人々が集まるエリアや先端的なユーザー層が存在する場所、あるいは圧倒的に通行量の多い場所に、いわば採算を多少度外視してでも個性的な空間を開設するのが通例となっている。
企業がアンテナショップを人気のエリアに出店する理由は、以下の2点。
類義語に「パイロットショップ」という用語があるが、こちらは企業による“実験店”“テスト版の店舗”の意味合いが強い。パイロット(水先案内人)が商品や企業を案内する点はアンテナショップ同様だが、パイロットショップは企業の新規“流通チャネル”のひとつで、パイロットショップの動向を踏まえながら、その後、多店舗化やFC化へと展開するケースが多い。経済用語では、メーカー直営の実験的な小売部門の1号店を「パイロットショップ」と呼ぶこともある。また、テスト期間を終了し、多店舗化の礎となった店舗は文字通り“国内1号店”として全国の店舗のリーダー店となる。そうした意味では、渋谷は“国内1号店”の集積地とも言える。
最近の例では、日本リーバグループの「BBLジャパン」(本社:目黒区)が5月25日(土)、Bunkamura通りに開業した「Lipton ch’a(リプトン・チャ)」(宇田川町)は、日本第1号店の“パイロットショップ”。同店はイギリスではすでに2店舗を展開しているセルフ方式のカフェで、紅茶ベースの飲み物を中心に軽食も揃えている。世界の紅茶市場No.1の座にある「リプトン」が、今までにない斬新なレシピ、システム、サービスで、気軽で楽しい紅茶のスタイルを提案するもの。同社によると、FCによる展開を予定しており、店舗数の拡大を検討中とのこと。
リプトンメーカーは、消費者の声を求めている。だが実際は、量販店や専門店流通を介した販売だけでは、マーケットの生の声は届きにくい。そこで、消費者との接点づくりの機会としてショップを設けるケースも少なくない。
プレイヤーやミキサーなど音響機材・楽器を製造する世界的に著名なメーカー「ベスタックス」のフラッグショップで、全国に向けて情報発信を行っているのが「マルイワン」8階の「VESTAX TO THE CORE」(神南)。同店は新商品のインフォメーション、ブランドイメージの確立、個人向け小売の開拓、DJスクールの開放によるDJ人口の拡大、渋谷に集まるプロ・アマのDJのバックアップという複合的な目的を持ったショップ。「アンテナショップ」の機能を持ちつつ、VESTAXのコンセプトを伝える「コンセプトショップ」でもある。店長の片江さんはベスタックスの社員でもあり、現場で得たエンドユーザー声をマーケティグの現場に反映させている。
ベスタックス「ヤマハ発動機」(本社・静岡県)が原宿で運営する「EX’REALM(エクスレルム)」(神宮前)は、イベントスペース、カフェ、セレクトショップ、ライブラリー、Webコーナーから構成される多機能型施設。特徴的なのは、店内を見渡してもあまり「YAMAHA」のロゴが露出されていないこと。「EX’REALM」の広報担当の木下さんは開設の目的を次のように説明する。「価値の多様化、情報の氾濫が叫ばれているが、本当に消費者にとって満足してもらえるものを僕たちメーカーは供給できているのか、という疑問から『EX’REALM』プロジェクトはスタートした」。例えば、企業側が想定していたバイクの用途とは異なり、東京の若者はまったく別の使い方、つまりファッションアイテムの延長としてそのバイクを使っていた・・・など、企業側とユーザー側の価値観の違いが現場で実証された例もある。「お客さんのことをよくわかっていなかったと気づいた。お金を出して製品を買って頂くからには、満足度の高い商品を供給するのが、メーカーの義務。人々の欲するものがわからないなら、直接彼らの価値観に触れてみようと考えた」と、開設の動機を語る。
企業はターゲットとするマーケットの動向が見えなくなった場合、費用をかけてコンサルティング会社やマーケティング会社、大手広告代理店などに“若者の動向・志向調査”を依頼するケースが多い。しかし、上記の「ヤマハ発動機」の場合は異なり、直接行動を起こした。「最初、数名のスタッフが東京を訪れ、いろんなジャンルのクリエイターに声をかけ、話を聞くうちに彼らに気軽に集ってもらえる場が必要であることを確信した」と、木下さん。そこで、その場所に必要な機能として、カフェやイベントスペースなどが浮かび上がり、クリエイターと一緒に同店のコンセプトを構築していったという。「EX’REALM」に“YAMAHA”のロゴを掲げていない理由について木下さんは「企業が運営する施設に行くと、どうしても企業の“匂い”を感じてしまう。そこで『EX’REALM』では“YAMAHA”の匂いを強く出さないことにした。しかし、自信を持って出店したものだから、“YAMAHA”のイメージアップにつながればいい。幸いオープン1年で高感度な方を中心とした大きな人的ネットワークができ、“YAMAHA”が運営していることもすでに多くの人に知られている。“YAMAHA”をそろそろ表に出す時期が来たのではないか」と、一定の感触をつかんでいる。「受け取る側としては、“YAMAHA”というよりは、まず『EX’REALM』に行って満足度が高かったと感じる。次にそういうスペースを提供しているユニークなスタッフがいるのは、“YAMAHA”という会社なんだな、とプラスに動いてもらえれば…」と、木下さんはEX'REALMの今後に期待する。
EX’REALMアンテナショップはそもそも、高度経済成長期にメーカーが大量生産を予定している商品を、一部のショップで実験的に先行販売し、消費者の反応を探ったことからスタートしている。試作品や新商品のサンプリングやモニターに近い手法であった。バブル期には、企業のイメージアップを図るために、表参道を中心に多くのアンテナショップが開かれた。文化戦略に基づく“企業メセナ”の一環として、一企業が美術館や多目的ホールを開設したのもこの頃。
ヴァン・ジャケットは、かつて青山にあった本社内に「99ホール」(99円で入場可)を併設し当時話題を集め、時代の先駆けを作った。1985年に誕生した青山の大型複合文化施設「スパイラル」は「ワコール」のグループの企業「ワコールアートセンター」が運営。ビューティー、グルメ、ギャラリーなど複合的な展開を見せているが、根幹には女性のトータル・ビューティを創造する企業理念が存在する。「スパイラル」ではワコール・ブランドを表に出さず、青山の文化施設として定着している。
スパイラルバブル崩壊後は、新商品の認知拡大、ブランドのプロモーション、ブランディングイメージの構築など、厳しい予算を背景に、アンテナショップにも明確な目的が課せられるようになった。企業側も、アンテナショップを企画・提案する広告代理店などにコストパフォーマンスの高さを求めるようになり、代理店側も様々な“作戦”で応戦する。抽象的な商品イメージや商品開発の背景を具体的な空間に展開し、インパクトをもって商品コンセプトを伝える空間づくりがまったのもこの頃から。「アンテナショップ」から「コンセプトショップ」への転換期でもある。その中で、様々な手法も生み出されてきた。
【今だけ、ここだけ・・・限定感演出作戦】=「コンセプトショップ」のみで販売する“限定モデル”により希少性を高め、新製品の場合は発売時の話題性とインパクトを同時に獲得する手法。さらに、ショップ自体の限定感を話題性に活用するケースも増えている。
【異業種と一緒に相乗効果・・・コラボレート作戦】=限りある予算でいかに大きなインパクトを獲得できるか・・・この課題に応えるため、今や主流となっているのがコラボレートによる出店。コラボレートによる予算抑制効果と、コラボレート先のイメージとの相乗効果の両面を狙ったもの。
1999年8月にスタートした、アサヒビール、花王、近畿日本ツーリスト、コクヨ、トヨタ自動車、松下電器産業、江崎グリコなど大手企業による異業種合同プロジェクト「WiLL」は、同年秋から2001年10月まで表参道に「WiLL V's SQUARE AOYAMA」を開設した。まさに「コンセプトショップ」の典型例。複数のメーカーがタッグを組んで生み出された新ブランドのコンセプトをショップに集約し、メディアを通じて強力な情報発信を行った。2001年3月には「渋谷ロフト」で期間限定のコラボレーションショップ「WiLL Shop in LOFT」も展開した。
WiLL今やアンテナショップやコンセプトショップの主流は“コラボレート”型で、その組み合わせは以下のように分類される。
「既存商業施設や飲料店とのコラボレーション」は、集客性とホスピタリティを高めるために多く用いられる手法である。既存の商業施設はすでに特定の顧客を持ち、信頼感を得ている。人気のカフェが期間限定で、企業やブランドなど特定のネーミングを冠したカフェに変身するケースも少なくない。最近では(1)と(2)を融合したスタイルも生まれている。つまり、メーカーと既存商業施設とメディアによる立体コラボレーションである。
7月1日(月)~12日(月)の期間限定で、「カフェ・デ・プレ広尾」が「LANCOME Cafe de Beaute(ランコム・カフェ・ドゥ・ボーテ)」に変身した。「ランコム」はフレグランス、スキンケア、メイクアップ製品など、女性をターゲットとした商品を開発・発売するパリのコスメブランド。同店の企画・運営は、大手出版社「アシェット婦人画報社」が手掛けた。同社発行の女性誌5誌「婦人画報」「ラヴィ ドゥ トランタン」「ヴァンサンカン」「ヴァンテーヌ」「ELLE」と「エル・オンライン」と「ランコム」、さらに女性に人気の高い「カフェ・デ・プレ広尾」を経営する「ひらまつ」という、三位一体のコラボ空間。
「LANCOME Cafe de Beaute」は外観をランコムビジュアル3種類と前出5誌のロゴで装飾し、店内の什器にライトアップを施す一方、夏らしく白を基調としたデコレーションで店内を演出した。期間中は、スペシャル・デコレーションとして、ランコム製品がディスプレイされ、気軽に新作をチェックすることができたほか、ランコム・イメージVTRの放映や5誌のバックナンバーを取り揃えるなど盛りだくさんの内容。また、期間限定のオリジナルメニュー9種類(ランコム製品をイメージしたデザートやドリンク)を用意するなど、メニューも特別バージョン。アシェット婦人画報社マーケティング部の発表によると、イベント期間中オリジナルメニューの注文数は2,170個、総来店数約7,000人。オリジナルメニューのオーダーによる、フレグランス「ミラク」もしくは「ミラク オム」のムイエット式携帯ストラップのプレゼント企画も人気を集めた。こうした様々な要因により、店側の客単価も通常よりアップした。同社では「期間中、地方から上京してきた方もあり、反応は予想以上。十分楽しんでもらえたようだ」と、期間限定ショップに手応えを感じている。
アシェット婦人画報社では、今秋10月から年末にかけてさらにコラボレート・カフェの展開を予定しているほか、同社発行のインテリア誌「エル・デコ」10周年記念として10月には数多くのコラボレート型イベントを準備中。「エル・デコ・ナイト&エル・デコ読者賞展示会&エル・デコ・ダイニングテーブル展」(10月11日、アニヴェルセル表参道)、「目黒インテリア通り祭りMIST(ミスト)」=10月10日~20日、目黒通りにあるインテリアショップ約20店と『エル・デコ』がコラボレート、「青山原宿インテリア通り祭りAHIST(アイスト)」=10月10日~20日、青山や原宿周辺にあるインテリアショップ約20店と『エル・デコ』がコラボレート・・・などが予定されている。
アシェット婦人画報社 ランコム ひらまつメディアが主導するコラボレート企画が増えている背景には、複数の広告主による相乗効果と1社あたりの予算軽減があるものと考えられる。さらに、そのメディアが特定のマーケットから信頼感を確保していることと、高いパブリシティ効果も期待できることから、互いの思惑が一致する。竹下通りにある「アンテニュール」は、「テレビ東京」と「ampm」が運営するアンテナショップ。店名はフランス語で「小さな触覚」を表す。情報発信の場として情報番組のレギュラー収録を行う一方、1階には飲食スペースを設け、2階にはショップのオリジナルグッズやテレビ東京の番組関連グッズを扱う販売スペースもある。
アンテニュール2000年に代々木競技場敷地内に誕生した「SIBUYA-AX」(神南)は、ネスレの1ブランド「ネスカフェ」ほかが共同でプロデュースするオールスタンディングのライブスペース。「ネスカフェ」はミュージック&エンターテイメントの情報発信基地をサポートする一方、「SHIBUYA-AX」と隣接するエリアに近未来的建物のWebコミュニティ「SHIBUYA@FUTURE(シブヤ アットマーク フューチャー)」を運営。ネスレが経営する「カフェ ネスカフェ」の進化型ショップで、「タワーレコード」とコラボレートし、最新CD の試聴、プロモーションビデオのオンエアが楽しめるほか、ブロードバンドによるインターネットステーション、新世代のモバイル機器などを体験しながら、「カフェ ネスカフェ」のコーヒーが楽しめるようになっている。新世代のコラボ型アンテナショップと言えそうだ。
ネスレ SIBUYA-AXゲームソフトや通信カラオケなど幅広くエンタテインメント・ソフトを提供する「タイトー」がスペイン坂で運営するアミューズメント施設「ポップティーンステーション」(宇田川町)は10代の女の子にターゲットを絞った実験的なショップ。既存の「タイトーステーション」をティーンズ向け女性誌「ポップティーン」とコラボレートしながら再構築し、女子中・高校生の嗜好に合ったアミューズメント・スペースを作り上げている。
タイトー新潮社のティーンズ向けファッション雑誌「ニコラ」と伊藤忠商事が今春、共同でプロデュースしたショップ「Girl is Girl by nicola」(神宮前)は、出版社が商社と提携して小売業に参入した稀有なケースとして注目を集めている。「ローティーンのマーケットは確実に広がったが、供給されている商品はまだ少ない。マーケットをもっと知ってもらい、参入できるシステムを提供したい、という思いでリアル店舗の出店を思い立った」(「ニコラ」編集長、宮本さん)と話すように、雑誌とリアル店舗でジュニア・マーケットのトータルなサポートを狙うニュータイプのショップである。同誌副編集長の柴田さんは「この店は、あくまでも出版社と商社という、異業種による共同経営という意味でのコラボショップ」と前置きした上で開店以降の感触を語る。「来店数や売上は予想していた通りの推移。意外にリピーターが多いこと、顧客にとってショップが生活の一部になっていることなどがよくわかった。ターゲットが中・高校生ということで、これから夏休みに入るので、期待している」。
Girl is Girl「歳時記や大型イベントとのコラボレーション」では、クリスマスシーズンやバレンタインディー前に開かれる限定ショップなどが一般的だが、最近では、サッカーのW杯期間中(5/31~6/30)に国立代々木競技場第一体育館付近を会場に開設されたナイキによるフットボールのテーマパーク「NIKEPARK」が該当する。パーク内に設けた「NIKEPARK SHOP」では4パターン14種類のオリジナルTシャツや限定スニーカーも販売された。
NIKEPARK2001年7月にオープンし、すでに“渋谷の名所”となった「アディダス フットボールパーク渋谷」(東急東横店西館屋上)は、W杯の開催を見据え、オフィシャルスポンサーのアディダスジャパンと東急スポーツシステムとがコラボレートした施設。アディダスはキャットストリートに「オリジナルショップ原宿店」(神宮前)を、6月8日(土)には「ラフォーレ原宿」前に「アダィダスコンセプトショップ原宿」(神宮前)をも開店するなど、W杯を契機にシューズやウェアのアンテナショップ、フラッグショップを一堂にデビューさせ、話題性に幅を持たせたのが特徴。
アディダス フットボールパーク アディダス時代性を反映してハード関連のメーカーのみならず、ソフトやIT関連のショップが目立つようになってきた。
1999年12月にオープンした「QFRONT」の地下2階から地上4階までを占める「SHUBUYA TSUTAYA」は、「TSUTAYA」のフラッグシップであると同時に、映画や音楽などエンタテインメントに敏感な渋谷の消費者の動向をセルやレンタルのデータを把握する「アンテナショップ」の役割を果たしている。
SHUBUYA TSUTAYA宇田川町のインターネットカフェ「NECCA(ネッカ)渋谷店」には、株主であるサムソンのディスプレイが展示されている。直販系のサムソンにとっては、インターネットカフェをPCユーザーに対して自然な形で“タッチ&トライ”の場を提供できる貴重な接点として活用。週末には24時間営業を試みるなど、ターゲットを意識した路線を敷いている。
NECCA6月1日(土)、センター街の中ほどにオーブンした「BB SHOP!渋谷店」(宇田川町)は、「Yahoo! BB」と「BBフォン」関連サービスの取次店舗で、インフォメーションセンター(2階)と「BB Cafe」(3階)を併設している。ソフトバンク・グループのブロードバンド総合サービス「Yahoo! BB」関連サービスは、従来、大型家電店で展開されていたが、「BB SHOP!渋谷店」では端末管理と端末利用者案内を兼ね、複合的なプロモーションを実施している。
BB SHOP!渋谷店 TEL03-5428-6401全国に先駆けて公開されるケースが多いミニシアター系作品も、渋谷周辺のカフェなどとコラボレートを行い、話題性を渋谷で先行させて、その後地方の映画館への営業時に活かす事例も少なくない。この場合、いわゆるコラボレートによるアンテナショップ的空間によるパブリシティ効果のターゲットは、一般に加え、劇場を所有する興業主となる。この秋の話題作に関しても、水面下でコラボレートの話が持ち上がっている。
7月18日(木)~8月25日(日)の期間限定で裏原宿にオープンする「ドワンゴショップ」(神宮前)は、携帯電話コンテンツを軸にした初の「コンセプトショップ」。架空のストーリーに基づいて行われるシーズナリー・イベントでもある。経営母体の「ドワンゴ」(本社・中央区)はネットワークゲームシステムの開発、提供やモバイル向けコンテンツの開発、配信を行う企業。特に着信メロディと着信ボイスの開発には定評があり、同社が運営する総合サイト「40(いろ)メロミックス」では高音質でユニークな発信ボイスやオリジナルの発信メロディが作れるもの。
「ドワンゴショップ」は、「裏原宿で遺跡が発掘された」と見立て、地下1階~地上3階のフロアをコンセプトに沿って構成。地下1階「原宿洞窟フロア」(同フロアが入口)は、“原宿洞窟シャーマン文字展”と題して、壁に刻まれた古代文字を解読するコーナー。縄文時代後期に綴られた古代文字。そこには予想もしなかった“怪獣ドワンゴ”伝説が記されていた。会場では、古代文字の読み方と解読に成功するまでの40年以上にわたる歴史を紹介。1階はオリジナルグッズ販売コーナー、2階は着信ボイスのコーナー、3階は「マリー・オリギンの八星占術」。また、様々なパートの着信メロディを20人前後の携帯電話で同時再生させる、オーケストラに見立てた「ケータイオーケストラ」を毎週3日程度、1日に2回開催する予定。
ドワンゴ第一研究開発部「40メロミックス」担当者の中澤さんは「ドワンゴが配信しているコンテンツをアンテナショップの形で現実のものとした。サイトで配信を行っていると、ユーザーの顔はわからないが、ショップを開くと直にユーザーと対面するので、それが楽しみ」と、リアル店舗に期待を寄せる。エンタテインメント性を押し出したショップを創造したことに対しては「当社は経営者(小林宏社長=37歳)が若く、視線は一般ユーザーと変わらない。ドワンゴという社名の由来は、伝説の怪獣から引用したものだった、というストーリーを展開することにしても、作っている自分たちも、同時にユーザーも楽しめるものになっている」と、若い企業らしく遊び心を十分に発揮した結果の産物であることをほのめかす。新たな切り口の“期間限定アンテナショップ”に注目が集まりそうだ。
ドワンゴショップ 40メロミックスバブル崩壊以降、ある意味で「アンテナショップ」は肩身の狭い思いを続けてきた。広告費・販促費が大幅に削られる中、“マーケティングに還元する”“広告塔としての機能を果たす”と言えども、ショップ単体で不採算であれば、「アンテナショップ」は整理の対象となりかねない。しかし、一方、逆風に吹かれながらも、一部の企業は「アンテナショップ」「コンセプトショップ」に多機能な用途を持たせ、さらにダイナミックな展開を図っている。これは劇的に、あるいは小刻みに変貌するユーザーのウォンツをグローバルに捉えるための手法。メーカーとして直にユーザーと対面し、その場がそのまま企画会議や商品開発プロジェクトの契機となるくらいの柔軟性とスピード感が今、企業には求められている。
一方で、メーカー側は「アンテナショップ」という呼称を嫌い「コンセプトショップ」というカテゴライズを好むのも最近の傾向。現在の「アンテナショップ」がかつての「アンテナショップ」プラスアルファの機能を持ちはじめたことと、不採算部門の切り捨てにより売上重視のショップが増えたこと、かつてのアンテナショップが放っていた「不自然さ」「あざとさ感」を払拭するため・・・など理由はいくつか考えられる。ただ、実験的なイメージを伴った「アンテナショップ」ではなく「コンセプトショップ」を掲げる場合、漠然としたコンセプトをどこまで具体的な空間に反映させることができるかが鍵となる。レベルの低い「コンセプトショップ」は、商品のイメージ低下をも招きかねない。予算に限界があっても、アンテナショップ以上の知恵と感性が求められる。
今や単独展開の時代は過ぎ去り、今やメディアやインターネットと巧に連動しながら、絞り込んだターゲットに対していかに話題性の発火点となれるかどうかがも大きなポイント。ショップもメディアもネットも今やクラスター志向となり、“コンセプトショップ”で醸成される言わばリアルな“コンテンツ”を、狙ったターゲットに届けられるかという点も大きな鍵となっている。過大な予算をかけない限り、渋谷と言えどもオールターゲットへのアプローチは難しい。情報過多の今、戦略なきコンセプトショップはその目的を果たすことなく、情報面で埋没してしまう可能性をも秘めている。
渋谷は、様々な消費の波にさらされた高感度な消費者が集まる街。そういう意味では、メーカーが渋谷の消費者と直接対峙することによる意義は小さくない。新商品やサービスの認知拡大を目論む企業にとって「コンセプトショップ」は、強力な情報発信基地であると同時に、変化の激しい時代とのリンクを果たす“窓口”でもある。