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ガーデンプレイスに新商業施設登場
オトナ化を加速する「恵比寿スタイル」

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■恵比寿に個性的な飲食空間が続々登場

恵比寿には「恵比寿ガーデンプレイス」や「アトレ恵比寿」以外、目立った大型複合商業施設が少ないこともあって、隣接する渋谷・代官山・広尾エリアとの緩やかな連携を含め、面的に広がりを持つ商圏を形成している。その恵比寿に今夏以降、少し落ち着いた大人をターゲットにした個性的な飲食空間が登場している。

8月22日、恵比寿1丁目交差点近くのビルに同時オープンしたのが「キムチバー」(2階)と「チャミスル」(3、4階)。両店の経営は「ZETTON ebisu」(広尾)や「ginza zetton」(中央区)を手がける「ゼットン」(本社:名古屋)。「キムチバー」は韓国フードが楽しめるスタンディングバー、「チャミスル」はダイニングテーブルや座敷、開放的なガーデンスペースをしつらえた飲食スペース。本格派の韓国料理が楽しめる。同店は、六本木と新宿で「JINRO」の直営レストランを運営するジンロガーデンコーポレーションとのコラボレーションによるもので、昨年名古屋にオープンした「JINRO STYLE CAFE」に次ぐケースとなる。

ゼットン

9月25日、恵比寿駅より徒歩2分の駒沢通り沿いにオープンしたオイスターバー&チャコールグリル「MAIMON(マイモン)」は、世界中から集められた約50種の生牡蠣を提供する本格派のオイスターバー。1階はカウンター席、2階はテーブル席とカウンター席。生産者直送、漁場直送を基本としながら「本場ニューヨークのオイスターバーにもひけをとらない種類豊富な生牡蠣」と「魚貝・肉など美食素材の炭火焼」を、ニューヨーク・トライベッカの倉庫街をイメージしたスタイリッシュな空間で提供するダイニングである。同店は「水」にも強いこだわりを店、全国の銘水どころの地酒や焼酎、世界中から集めた30種類のミネラルウオーターが用意されている。経営する「フードスコープ」(本社:港区)では「旨いものと旨い酒を求めて大人が集う、都会の溜まり場」と位置付けている。

店舗デザインを担った森井良幸氏は、空間プロデューサーの原田康弘氏(「キューブ」代表)とともに恵比寿の「忍庭」や「萬葉庭」(代官山)、西麻布のダイニングバー「AZOOL」をはじめ、「CUBE ZEN」(神宮前)、「re-cur」(神南)、「SOUEN」(渋谷)など評判の店舗をデザインしてきた人気デザイナー。特に「彼の手がけたカフェは必ず流行る」という神話を持ち、年間40~50店舗の飲食店を手がけている。1階カウンター席は氷を敷き詰めた全10メートルのアイスベッドを囲む特等席。「MAIMON」のシンボルである巨大アイスベッドには産地直送の新鮮魚貝がディスプレイされているほか、2階には天井から壁を伝い流れる高さ7メートルの滝が登場するなど、様々な仕掛けも堪能できる。

フードスコープ
MAIMON(マイモン) MAIMON(マイモン)

9月26日、ヴェトナム大使館の要請の下、恵比寿にヴェトナム文化のフラッグショップ「ニャーヴェトナム(ヴェトナム館)」がオープンした。1階はヴェトナムデザインの雑貨やファッションを扱う「ドンコイセレクトショップ」、ヴェトナム産コーヒーの専門コーナー「ミュゼ・ド・カフェ」、ヴェトナムうどん“フォー”の専門店「ベン・タイン」から成る物販と軽食レストランフロア、2階は本格的ヴェトナム料理「カイ・チェ」。ヴェトナム語で「竹」を意味する「カイ・チェ」はハノイの格式ある五つ星ホテル「ソフィテル メトロポール ハノイ」よりシェフを召還し、本物のヴェトナム料理をベースにしたヌーベルヴェトナムキュイジーヌを提供する。専用エントランスから導入する3階はヴェトナムビザ発給窓口を設立するとともに観光スポット、名産品・物産の紹介する「ヴェトナム政府観光局コーナー」とヴェトナムとのビジネス相談窓口となる「ヴェトナム投資・トレーディングセンター」、さらにヴェトナムエアーラインのチケットの発行やツアー案内を受け付ける「ヴェトナムエアライン・ツアーデスク」を設けている。3階はヴェトナム大使館が管理する。

同館を運営する「フードワークス」(本社:港区)企画・制作セクションディレクターの松岡さんは「レストランには30代の女性が集い、多少値の張るお酒も躊躇せずに注文する光景が見られる。そのような、ある程度経済的な余裕がある、先端をいく客層、特に女性が利用してくれることの口コミ効果は計り知れない。恵比寿がそうした客層が集まる街」と説明し、同社が念頭に置いている客層とぴったり合っていることに手応えをつかんでいる。「カイ・チェ」の料理はコース主体で2,500円、3,800円、5,000円~。

フードワークス
ニャーヴェトナム(ヴェトナム館) ニャーヴェトナム(ヴェトナム館) ニャーヴェトナム(ヴェトナム館)

続く10月4日、恵比寿駅西口から徒歩3分の場所にオープンしたのが「Sushi cuisine(スシキュイジーヌ)。無駄な装飾をはぶいたスタイリッシュな空間なので最先端のバーかと見間違うが、純粋な寿司店である。空間を仕切っていないものの、寿司職人の前に陣取るカウンター、床が少し上がったところに設置されたバーカウンター、一方がベンチシートになっているダイニングスペースと3つのコーナーから構成され、それぞれ雰囲気が異なるのがポイント。店長の漆山(うるしやま)さんは「店はスタイリッシュだが、料金は控えめに設定してある。オープンして間もないので、顧客は近所の方や仕事帰りに立ち寄ってくれる恵比寿で働いている方が中心」と話す。ランチも実施しており、斬新な“寿司店”として評判を集めつつある。同店は、恵比寿・代官山を中心にカリフォルニアキュイジーヌを展開する「Cardenas(カーディナス)」グループの最新店舗。

Sushi cuisine
Sushi cuisine(スシキュイジーヌ) Sushi cuisine(スシキュイジーヌ)

■ガーデンプレイスに“YEBISU STYLE”を提案する新商業施設

「恵比寿ガーデンプレイス」は、今や大人の落ち着きを持つ恵比寿を象徴する“顔”になった。

1887年に設立された日本麦酒醸造会社(サッポロビールの前身)が、2年後の1889年、現・目黒区三田にビール醸造場を建設。「恵比寿ビール」発祥の地が、現JR恵比寿駅や街の名前となったことは有名な逸話。1982年、東京都、目黒・渋谷両区は、サッポロビールの恵比寿工場を核とした周辺地域の再開発計画に着手。2年後、東京都は「恵比寿地区整備計画基礎調査報告書」を発表。サッポロビールもこれら再開発構想を受け、1985年、工場の閉鎖を決定。同時に跡地の再開発を進めることとなる。1988年には恵比寿工場が千葉県船橋市に移転。1991年に「恵比寿ガーデンプレイス」の名称が決定されるとともに、サッポロビールが事業主となって建設工事が着工。そして、1994年10月8日、「恵比寿ガーデンプレイス」が開業。オフィスタワー、三越恵比寿、飲食施設、映画館、美術館、ホール、住宅、ホテルなどから成る複合大型施設「恵比寿ガーデンプレイス」の誕生である。以降、「働く・住む・泊まる・遊ぶ」ことのできる“複合都市”として、恵比寿を象徴する“プレイス”となった。

恵比寿ガーデンプレイス

開業以降、多少のテナントの入れ替えはあったものの、大規模なリニューアルは行われてこなかった。その「恵比寿ガーデンプレイス」が今秋、一気にバージョンアップする。11月1日、エリア内のエントランス部分に新施設「GLASS SQUARE」(グラス・スクエア) が開業。規模は地上1階地下2階建・約8,000平方メートル(約2,400坪)で、うち店舗面積は約3,500平方メートル(約1,050坪)で店舗数24店舗 (物販店舗16、飲食店舗8)。山の手の洗練された大人のライフスタイルを“YEBISU STYLE”と位置付け、衣・食・住にわたる新提案を行う。界隈は分譲住宅や都市整備公団賃貸住宅などが集積する良質の住宅ゾーンであり、「ウエスティンホテル」や多くの外資系企業が入居する超高層ビルなど国際的なビジネスゾーンでもある。

「恵比寿ガーデンプレイス」管理・営業部副課長の三上さんは「渋谷は若者の街というイメージだが、隣にある恵比寿はうって変わって大人の佇まいがある」と切り出す。「恵比寿ガーデンプレイス」のリニューアルの時期を今秋に定めた理由は「本来10周年(2004年)が時期としては区切りのいいリニューアルだが、今日ではそれでは遅いと判断した。2003年、他の巨大プロジェクトが完成する前にさらに魅力的な「恵比寿ガーデンプレイス」に仕上げておく必要があった」(三上さん)。2003年は、都内の3大再開発プロジェクト(六本木六丁目地区再開発、汐留土地区画整理事業、品川再開発事業)が続々と出現する年でもある。「今回のリニューアルではサッポロビールの象徴であるビアレストランの一部を改装するが、ビアレストランという業態自体が時代やこの場所に即していないのではないかという見直しからスタートした。「恵比寿ガーデンプレイス」のヨーロピアンテイストをさらに磨きをかけ、上質なライフスタイルを提案したい」と説明する。渋谷が指標として掲げる“オトナ化”と異なる点は、すでに年代としての大人の取り込みに成功していることが挙げられる。三上さんは「恵比寿ガーデンプレイスでは“オトナ化”という表現を用いていない。大人のライフスタイルを今以上の多くの大人にわかってもらえるよう考えている。より上質で本物の衣食住を味わえる場所で、さらに「恵比寿ガーデンプレイス」に来なければ体験できないもの、つまり恵比寿発のスタイルを提案したい。そのため意識して日本初出店のショップに出店を願った」と、“YEBISU STYLE”の狙いを語る。

また、「グラス・スクエア」が誕生する11月1日から恒例のイルミネーション・イベント「バカラ 永遠のきらめき」(後援:フランス大使館)がスタートする。12月25日までの期間は名物となった「クリスマス・イルミネーション」も同時開催。バカラシャンデリア・燭台の点灯時間は12時~23時。その他のイルミネーションは16時30分~23時の予定。

恵比寿ガーデンプレイス
大規模なリニューアル GLASS SQUARE」(グラス・スクエア) バカラ 永遠のきらめき

■「グラス・スクエア」に登場する注目のショップ群

「グラス・スクエア」には、複合ショップ国内一号店や単独店関東初出店ショップが数多く登場する。

玄関口となる「エントランスパビリオン」には、アロマセラピーの人気英国ブランドを扱うアロマセラピーのスキンケア専門店「アロマセラピーアソシエイツ」の日本初の単独店と「アルマーニジーンズ」の日本1号店が登場。「アロマセラピーアソシエイツ」は単独店としは日本初の出店となる。「アロマセラピーアソシエイツ」を経営する「ココ・コーポレーション」(本社:大阪)では、「ショップはコスメブティックタイプで、ひとり一人の肌を拝見し、今まで本物のアロマセラピーを知らなかった方にライフスタイルの中で癒される時を提供したい」と意気込みを見せる。性別年齢問わず商品を試すことのできる雰囲気を作り出している。一方、「アルマーニジーンズ恵比寿店」(150平方メートル)は、単なるジーンズブティックにとどまらず、アルマーニジーンズが象徴するジョルジオ・アルマーニのモダンでカジュアルなライフスタイルのビジョンを反映したショップ。ショップのデザインは総帥ジョルジオ・アルマーニ本人と建築家のファブリジオ・レポーレ氏が共同で手掛けたもので、ミラノの「アルマーニジーンズストア」にならった革新的なスタイルが取り入れられている。アイテムはTシャツ、ジーンズ、チノなどの基本アイテムからジャケット、ドレス、スカートなどファッション性の高いアイテムまで、メンズとレディースの製品が揃う。

アルマーニジーンズ/TEL 03-5475-1751
アルマーニジーンズ

同じく「エントランスパビリオン」には、ロンドン生まれの人気カフェ&デリ「ベヌーゴ」の日本1号店がオープンする。「ビアステーション恵比寿」の横に登場するのがデザート&コンフォート「Le Chinoisclub(ル シノワクラブ)」で、同店は「ユニマットオフィスコ」(本社:港区)が経営する人気のアジアンデザートの店。「赤坂璃宮」(港区)譚(たん)総料理長が提案するデザートは医食同源の考えを取り入れたもの。タイカレーやフォーなど食事もできる。デザートは、1日15ヶ限定の亀ゼリー(1,200円)、3つのプリンの盛り合わせ(1,000円)、譚さん自慢の特製マンゴープリン(700円)など。

ベヌーゴ ユニマットオフィスコ

「グラス・スクエア」の地下に広がる「ショッピング&リラクゼーション」ゾーンには、アパレルメーカー「エルビス」(本社:渋谷)が運営する「サムソナイトブラックレーベル」が登場。同店は複合ショップ1号店。アイテムはメンズウェア(トラヴェルウェア・ブランド)とレディース(ウェア&アクセサリーズ・ブランド)のアパレルが合わせて50%、雑貨が50%という割合。「サムソナイトブラックレーベル」はデンヴァーに本社を構えるトランクメーカー「サムソナイト」が同社の90年に及ぶ歴史の集大成として立ち上げた衣料部門のブランド。2000年にはドルチェ&ガッパーナの右腕であったジジが同ブランドのディレクターに就任し、リュック、書類入れ、旅行用バッグなど一連のラインナップが生み出された。

同じフロアには、レディースブランド「JOAN&DAVID(ジョン&デイヴィット)」の衣料と靴の複合ショップ日本1号店がオープンする。伝統的なニューヨークのレディースシューズとして知られる「JOAN&DAVID」がアメリカの伝統とヨーロッパの技術を融合させた新たなレディースファッションの展開を開始。ターゲットとする顧客は「モダンで成熟した女性」とし、年齢の中心を30~50歳に置いている。ほかにはアクセサリー&雑貨の「KU-CROISSANT(クークロワッサン)」、ジュエリーの「俄(にわか)」がともに単独店関東初となる。

JOAN&DAVID/TEL 03-5793-4740

「レストラン&カフェ」ゾーンには、全国で130店舗の「珉珉(みんみん)」を運営する「珉珉(みんみん)本店」(本社:大阪)の新業態である上海古典料理「四合院(しごういん)」が登場する。「四合院」とは中国の中庭の意。同社の増井さんによれば「コンセプトの異なる4つの部屋が中庭(四合院)を囲み、中庭にはテーブルを設けるほかエントランスに銀の茶器をあしらうなど様々な仕掛けをほどこしている。使用するレンガからすべて中国製品で、北京から上海をめぐって買い付けを行い、コンセプトを決定した」と語る。料理長と点心師を上海の老舗「和平飯店」から招き、古き良き時代の本場の上海料理、飲茶を提供する。アイドルタイムには中国茶と点心で一服できる。ほかに本格京懐石料理店「光仙(こうせん)」で仕込んだ京料理がそのまま味わえる和食店「銀沙灘 光仙(ぎんしゃだん こうせん)」、洗練されたタイ料理をコンセプトとする「ジャタイ パレス」、紅茶専門店「サロン・ド・テ」、イタリア料理「恵比寿ダイニング・ア」が同時オープンする。

都内の3大再開発プロジェクト、六本木六丁目地区再開発事業、汐留土地区画整理事業、品川駅東口地区再開発事業が着々と進んでいる。2003年以降、各地に高層ビル、ホテル、住宅地を核とした複合商業集積地が誕生することで、今秋の丸の内「丸ビル」の開業や加速する「表参道のブランドストリート化」も含めて都市間競争は熾烈を増している。この中で「恵比寿ガーデンプレイス」のリニューアルが行われた。個店の動員力に頼るのでなく、さらに魅力的な“街”を創造し、ターゲットとする顧客を確実に集客することは大規模商業施設の大きな命題でもある。恵比寿の商圏は渋谷や代官山と同じく横方向に増殖し、広尾や中目黒までも巻き込んだ「回遊性」や、個性的なショップが点在する「界隈性」が街の魅力に結びついている。恵比寿ガーデンプレイスのヴァージョンアップが、こうした「回遊性」や「界隈性」とどこまでリンクできるかが、他のエリアとの差別化にもつながる。

ビール工場からスタートし街の名前にもなった「恵比寿」は、ガーデンプレイスの登場でその知名度も一気に全国化し、相応のブランド感を醸し出している。落ち着いた佇まいを感じさせる恵比寿に、目先の流行に左右されない成熟した大人をターゲットとする店が増えていく傾向はまだしばらく続きそうだ。渋谷・代官山・広尾といった、個性の強いエリアと隣接する恵比寿から、今後どのような「恵比寿スタイル」が生まれていくのだろうか。

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