讃岐うどんが「全国区」となる火付け役となった「まんまる はなまるうどん」が渋谷・公園通りにオープンして早1以上が過ぎた。1杯100円という価格とセルフスタイルが話題を集め、日本オリジンのファストフードとして、あっという間に全国に広がり、今や日本全国に150を超える店舗が誕生し、来年にはニューヨークや台湾への出店も予定されている。
そんな「はなまる」に勝負を挑むのが、本場の香川県でさぬきうどん店7店舗を展開する将八(香川県観音寺市)。同社は12月5日、東京1号店となる「将八うどん渋谷店」(TEL 03-5456-1588)を公園通りにオープンさせた。場所は、「はなまるうどん」と公園通りをはさんで向かい側のビルの地下1階で、店舗面積は約45坪、席数は61席。同店店長は「東京経由で全国へ向けての出店を図るため、東京1号店の出店場所を渋谷で探していた。どうせなら『はなまるさん』の近くで…ということで物件を探していたら、たまたま正面の場所になった」と、出店の経緯を話す。将八では、現段階ではフランチャイズによる拡大を考えておらず、原則として「のれん分け」制度による拡大を目指すという。
同店のうどんは店内で「手打ち」しているのが特徴だ。うどんは讃岐産の地粉「さぬき夢2000」を使用した独自のブレンドによる麺を使い、だしには四国山脈水ヶ峰地蔵水や北海道産利尻の昆布、鹿児島産枕崎の鰹節、瀬戸内観音寺産伊吹のいりこなどを使っている。メニューはセルフサービスのうどんが「かけうどん」(99円)、「ざるうどん」「釜あげうどん」(各280円)など10種で、店長のおすすめは同店特製の「ゆず酢」をかけて食べる「しょうゆうどん」(280円)。また、フルサービスで「天釜うどん」(880円)、「鍋焼きうどん」(680円)なども提供する。ちなみに観音寺の本店では280gの「かけうどん」を180円で提供しており、渋谷店での99円(200g)は、かなり思い切った価格設定で「はなまる」に挑んでいる。また、17時からは観音寺の地酒「川鶴」を提供し居酒屋としても利用できる。
将八さらに、12月18日には「はなまるうどん」が渋谷2号店目となる「まんまる はなまるうどん 渋谷センター街店」(TEL 03-5784-3633)を宇田川町「ニュー渋谷ビル」地下1階にオープンした。店舗面積は約42坪、席数は58席。しかも、隣接するビルの地下1階には、今年9月24日にオープンした讃岐うどん店「こんぴらや」があり、激しいバトルが繰り広げられそうだ。
はなまるうどん「はなまるうどん」2号店から程近い井の頭通り沿いの大型飲食店ビル「渋谷ちとせ会館」の2階には、ラーメンやうどん、アジア麺など「麺」をテーマとするフードコンプレックス「麺喰王国(めんくいおうこく)」(TEL 03-5784-6708)が12月25日のオープンを控えている。店舗面積約265坪の空間にラーメン6店舗、うどん1店舗、アジア麺1店舗の計8店舗が軒を並べ全席数は241席、初年度の利用者数200万人、売上17億円を見込む。内装デザインは、多くのカフェやギャラリーデザインで実績を持つデザイナー集団「デカルト」が、「カフェ」と「ラーメン」を融合させた新しい麺スタイル=「ヌードルカフェ」をテーマに手掛けたもので、各店舗毎に異なるデザインで工夫を凝らしているほかDJブースやアートギャラリーなども併設しているのが特徴だ。アートギャラリーは、アーティストが自由に表現できるスペースとして活用し、2~3ヶ月に1度のペースで、アーティスト・作品・展示内容などを入れ替える。オープニングは「墨」によるドローイングを得意とする茂本ヒデキチ氏が手掛けている。立地面でもセンター街とスペイン坂に接する好立地でありながら、フード関連の集合施設では初めて平日は午前2時、金・土・祝前日は午前5時までの深夜営業を行う。
また「麺喰王国」では、混雑時やリピーターのための配慮として携帯電話を使った「ケータイファストパス」システムの導入も予定している。このシステムは携帯電話から麺喰王国のサイトにアクセスし、アドレスと日時・人数を入力の上、来店の際にエントランスで届いたメールを呈示すれば、短い時間で入場できるもの。
麺喰王国「麺喰王国」の企画・運営は、金融業界、コンサルティング業界、不動産業界、PR業界などのプロが集まって不動産を事業分野に2001年に設立されたビジネスプロデュース集団イコール(本社:港区)が手掛ける。不動産の流動化が進む中、同社ではますますマーケティングの重要性が高まると見ている。同社では「マーケティングを駆使して、不動産にどういういうソフトを組み合わせるとキャッシュフローを最大化できるか」(同社取締役、高橋さん)という課題に取り組むことを事業方針に据えており、「麺喰王国」については「ラーメンは面白いソフト。マーケットがしっかりしている大衆食であり回転商売であるため、好立地であればリスクは低い」(高橋さん)と言う。また、同社では今後も「食」に限らず「好立地におけるワンコンセプトの集合化」(高橋さん)をテーマに、不動産マーケティングに特化した事業展開を推し進める考えだ。「麺喰王国」は渋谷店のオープンに続き、同コンセプトで上海、新宿、池袋にオープンを予定している。
また、同社では『「麺喰王国」ファンド』を12月2日より売り出したことでも注目を集めている。同ファンドは商法上の匿名組合を利用して小口の出資金を公募形式で募るもので、トレイダーズ証券が販売仲介を行う。申込み単位は1口50万円で、1口以上1口単位での申込みとなる。気になる利回りは、「麺喰王国」内の各店舗(全8店舗)の1日あたりの入場者数の平均値に連動して投資家に還元されるもので、損益分岐点を平均401人以上とし、例えば501人以上600人以下の場合の利回りは5.0%となり、501人以上は100人ごとに利回りが1.0%ずつ上がる仕組み。ただし400人を超えない場合は、元本割れとなるリスクも伴う。満期は1年で途中解約はできず、各店の販売状況はホームページで公開される。申し込み期間は12月2日から2003年12月31日までで、2億円に達した時点で申し込みを締め切る。
イコール トレイダーズ証券出店店舗には、28歳という若さながら今最も注目されている「ラーメンコンサルタント」渡辺樹庵氏がオーナー兼プロデューサーを務める新店舗「keiz」が初登場するほか、「新横浜ラーメン博物館5周年記念ラーメン登竜門」で全国344店舗の中から準優勝に選ばれた「えびそば」の「縁や」、さらに「ぶっかけうどん」の元祖と言われ、年間250万人が来店する倉敷ぶっかけうどんの名店「ふるいち」が関東に初進出するなど、全国の「行列店」全8店が軒を連ねる。出店は以下の通り。
新店舗「keiz」(ケイズ)
…東京/豚骨醤油ラーメン
2002年度ラーメンオブザイヤーで最優秀新人賞を獲得し、マスコミにも数多く登場する注目の「ラーメンコンサルタント」渡辺樹庵氏がプロデュースする。新メニューを発表予定。
渋谷初出店「札幌らーめん緑や(えにしや)」
…札幌/ラーメン(豚骨)
1999年「新横浜ラーメン博物館の5周年記念ラーメン登龍門」で、全国344店舗の中で準優勝に選ばれた「えびそば」で人気を集める行列の店。昨年9月、池袋東武百貨店出店後、1年間で約26万人(1日平均730人)の来客数を記録した。
渋谷初出店「竈KAMADO」
…新宿/ラーメン(醤油ラーメン)
新宿のラーメン激戦区の超人気店が本店を閉めスタッフごと渋谷へ移転して来る。1998年にオープンした比較的新しいお店だが、チャーシューや煮玉子を竈で燻製にして個性的な香りを出した煮玉子「くんたま」で一躍に有名になった店。特別メニューとして新メニューを発表予定。
渋谷初出店「博多ラーメン秀(ひで)」
…博多/ラーメン(豚骨)
ラーメン対決番組では全て優勝という実力派の博多の人気店「秀ちゃんラーメン」の店主が渋谷に初出店。無添加・無化調にこだわり、自家製の極細ストレート麺を使用している。特別メニューとして新作発表を予定。
東京初出店「熊本黒らーめん好来(はおらい)」
…熊本/ラーメン(豚骨)
熊本で一番人気の「熊本黒らーめん」が東京初出店。にんにくをじっくりと揚げて秘伝の製法で作る香ばしい自家製マー油が黒さの秘密。良質な豚のゲンコツ中心のとんこつと、丸鶏・ガラを中心にそれぞれ別々に10数時間炊き出し合わせたスープの深い味わいが特徴。
渋谷初出店「支那そば勝丸(かつまる)」
…東京/ラーメン(醤油)
新横浜「ラーメン博物館」創業以来からの超人気店!すっきりした煮干しメインの魚系が香る風味に、トンコツ、鶏ガラなどの動物系の旨味を加えたダシは、さっぱりしながらも深い味わい。新メニューを発表予定。
東京初出店「元祖ぶっかけうどん ふるいち」
…倉敷/うどん(ぶっかけ)
1店舗当たりの打ち上げ数日本一を誇る「ぶっかけうどん」の元祖が東京初出店。ぶっかけうどんを中心に現在13店舗、年間来客数は250万人。倉敷のイオン店では1日2,000人を越える超人気店。
新店舗「Oriental麺BAR ngon!(ゴン)」
…アジア/タイラーメン、フォー、ビーフン料理
ベトナム、サイゴンの高級ホテル「マジェスティックホテル」の一流コックを招聘した地元フォーやタイの屋台ラーメンなどを再現予定。
こうしたフードコンプレックスに有名店が集積する背景には、出店者側にとってはイニシャルコストを低く抑えられる点が挙げられる。「麺喰王国」のある宇田川町界隈で単独路面店を出店する場合、初期投資は総額で5,000万円~1億円程度かかると言われるが、「麺喰王国」の場合の初期投資は2,000~3,000万円程度で抑えられるほか、集積効果により当初より多くの集客効果が見込まれるため、出店者側にとってもそのメリットは大きい。ただ、出店者側は各店毎の販売杯数が日毎にディスクロジャーされるため、気が抜けない日々が続くのもまた事実。混み合う渋谷の歳末を「麺」が揺るがしそうだ。