2002年12月、JR埼京線とりんかい線の相互直通運転により、お台場エリアと結ばれた渋谷は今年、横浜方面とのアクセスが向上する。渋谷を起点とする東急東横線は2月1日、横浜高速鉄道みなとみらい線との相互直通運転開始を始める。みなとみらい線は、横浜駅からみなとみらい21地区を経て元町・中華街に至る延長4.1kmの鉄道新線で、1989年に第3セクターとして設立された横浜高速鉄道が建設した。新たに設けられる駅は新高島、みなとみらい、馬車道、日本大通り、元町・中華街の各駅で、特急を使うと渋谷~元町・中華街間が35分で結ばれる。相互直通運転の開始に伴い東横線横浜~桜木町間(高島町駅、桜木町駅)は廃止され、廃止後の同区間跡地は横浜市に譲渡され、横浜市が跡地を整備・活用する計画だ。予定では1月30日終電まで渋谷~桜木町駅間で運転を行い、翌31日は渋谷~横浜駅間の運転となり、2月1日初電より、みなとみらい線との相互直通運転が始まる。
東横線は東白楽~横浜間の地下化や菊名~横浜間のATC(自動列車制御装置)化などにより、渋谷~横浜間の最短所要時間が27分から26分(下り特急、平日・日中)に短縮されるほか、深夜時間帯に上り特急を平日に3本、土休日に1本増発し、特急の運行時間帯を拡大する。また、東急線とみなとみらい線の連絡割引乗車券や、東急線内往復割引とみなとみらい線内1日フリーを組み合わせた企画乗車券「みなとみらいチケット」を発売する。このチケットは東横線とみなとみらい線双方の初乗り区間を乗り継ぐ場合、初乗り運賃の合算額から大人片道20円を割り引くもの。東横線は、2012年度に渋谷駅で営団13号線との相互直通運転の実施を予定しており、これが実現すると池袋~新宿~渋谷~横浜が1本の路線でつながり、副都心と横浜エリアを結ぶ広域鉄道ネットワークが生まれる。
東京急行電鉄広域渋谷圏の商業施設には、今年も新陳代謝の波が押し寄せる。2月中旬、神南・ファイヤーストリートに位置する「マルイワン渋谷」が閉鎖される。同店は1991年の開店で売り場面積は5,980平米、2002年度の売り上げは33億円だった。同店閉鎖は都心部での店舗再編に伴うもの。
丸井また、北青山の高級スーパーマーケット「紀ノ国屋インターナショナル(青山店)」は今年3月下旬で休業し、4月中旬より南青山3丁目の仮店舗で営業を始める予定だ。同所は青山通りに面し、表参道交差点から外苑前方面に約150メートルの場所。「インターナショナル」店の土地約500坪は既にデベロッパーに売却されており、同店は、店舗解体後2006年秋の完成を目指してデベロッパーが同地に建築する商業ビルの地階でテナントとして営業を再開する。仮店舗は3階建てで、1階は駐車場、2階は店舗、3階は倉庫兼事務所となり、店舗面積は約200坪。営業期間は再開発ビルのテナントとして営業を再開するまでの3年間を予定している。
紀ノ国屋一方、ここ数年続く表参道のブランド集積には拍車がかかる。三陽商会は今年4月上旬、国内で2番目となるバーバリーの直営路面店「BURBERRY 表参道店」を、渋谷区神宮前5丁目にオープンする。同店は現在建て替え中の日本看護協会ビルの1階と2階を売り場とする総面積544平米で、銀座店に次ぐ直営路面店となるもの。商品は、ヨーロッパからの輸入商品である「Burberry Prorsum」と「Burberry London Collection」を展開し、紳士服、婦人服、アクセサリーに加え、子供服、香水、時計、ホームコレクションなども取り扱う。また開店に合わせて、パターン、表地・裏地等を選べるトレンチコートのセミオーダーシステム「ザ・アート・オブ・ザ・トレンチ」の導入も予定している。
山陽商会代官山には「学」の側面が加わる。昨年12月、目黒区青葉台の旧山手通り沿いに開設された「産業能率大学 代官山キャンパス」は今春、社会人向けのビジネススクール型大学院(MBAコース)や経営学部の専門科目を開講する。建物概要は敷地総面積2,100平米、延床面積4,181平米、地上3階地下2階。さらに同キャンパスでは「代官山」をテーマとする特別講座を開講し、地域に密着した展開を予定しており、ファッションの先端エリアに加わった学問的なアプローチは、各界関係者からも注目を集めそうだ。
産業能率大学広域渋谷圏では今年、「再生」をテーマにした「R」への取り組みがさらに活発化しそうだ。4月中旬には、青山1丁目のオフィスビル「日土地青山ビル」を賃貸住宅へコンバージョンする「青山コンバージョンプロジェクト」が完成する。このプロジェクトは日本土地建物が手掛けるもので、クリエイター層をターゲットにする住戸やSOHOなどを提案する。建物は地下2階付地上8階建てで、2階から8階の上層階(全44戸)に居住者が自由に空間づくりできるシンプルなSOHO型住戸を配し、地階にはスタジオやアトリエ・ギャラリー、新進クリエイター等を対象としたサービスオフィスの開設が予定されている。
日本土地建物渋谷は、こうしたハード面だけでなく、ソフト面が充実している点が特徴の街でもある。今年も多くのアーティストの活躍に期待がかかる。中でも注目は、「王様のブランチ」(TBS系)のヒメヒメキャラ、「チェキラ!」(日本テレビ系)のCGなどを手掛ける人気女性アーティストのヨシヤス氏。同氏が原作・監督を手掛けたアニメーションDVD「じゃらし系・超快楽主義 ニャンコス」(3,990円/税込み)が昨年12月17日、DDDレーベルから発売された。猫UFOに乗ってやってきたニャンコスたちが、何もなくて退屈な「青いだけがとりえの星」を、「花グライダー」や「星降らせイス」といった「オモシロマシーン」を発明して、光り輝く素敵な場所に変えていく「じゃらし系」アニメ。この作品は、アニメーション化に向けてヨシヤス氏本人が全てのキーフレームを作画し、アニメ「ポケットモンスター」劇場版などを制作したOLMデジタルが動画化したもの。
声の出演では、「プロジェクトX」(NHK)のナレーションなどでも知られる俳優の田口トモロヲ氏が、姿の見えない「妖精さん」という役どころを、1人4役ノンエフェクトで演じ分けているのが最大の「聞きどころ」となっている。脚本は劇団マシュマロウェーブを経て、現在は執筆や脚本家として活躍する山下哲氏が手掛け、独特の言葉でキャラクター「妖精さん」に息吹を吹き込んだ。音楽はポラリスの坂田学が全曲を書き下ろし、繊細な音色で物語に感動を与えている。絵描き、俳優、脚本家、ミュージシャンががっぷり四つに組んで、キャラクターアニメーションの新境地に取り組む。
また、このDVDの発売に合わせてフィギュア「ニャンコス*ドール/ウィンターコレクション」も発売された。すでに第一弾として昨夏発売された「同サマーコレクション」3種に、「ブチコ」「ヒョウコ」「スノウ」の3種が仲間入りする。全高170mm、スタンド付きで各1,200円。DVD+スペシャルニャンコスドール+ヨシヤスDDDオリジナルTシャツのBOXセットも、1,000個限定で発売される。「DDD」レーベルは、マルチーズ(代官山)がプロデュースする新しいDVDレーベルで、様々なジャンルで活躍するアーティストが収録作品からパッケージに至るまでの全てを各アーティスト自らが手掛けるのが特徴。第1弾は昨年9月に発売された天久聖一氏の「悲しみジョニー」で、「ニャンコス」は第2弾の作品となる。今後、白根ゆたんぽ氏、タナカカツキ氏、DAVIL ROBOTS、宇川直宏氏、浅野忠信氏ら、注目のアーティストの作品が続々とリリースされる予定になっている。
NYANCOS OFFICIAL WEB SITE DDD DVDレーベルオフィシャルサイト今年、渋谷をテーマにした携帯小説にミステリーの巨匠が挑む。「渋谷のある場所に行ってしまうと二度と同じ渋谷に帰れなくなってしまう」・・・第7回日本ミステリー文学大賞の巨匠、森村誠一氏が、渋谷をテーマに書き下ろしたミステリーホラー小説「異界の扉」が、1月1日からドコモの携帯サイトで配信が始まった。同作品は全5章20話で構成され、毎週新しいストーリーがモバイル上にアップされていくもの。モバイルサイトではプロローグ・第1章「センター街」1・2話が公開されており、3話以降の続きを閲覧したい場合はドコモのモバイル決済サービス「DoCommerce」の会員登録(無料)が必要となるが、作品は最後まで無料で読める。また、各章毎に小説に関するクイズが設けられ、正解者の中から抽選でチェアやフロアライトなど「読者を快適にする」グッズが当たるキャンペーンも実施している。配信は3月15日まで。
今年で作家生活40周年を迎える森村誠一氏は、「月曜ミステリー劇場」「土曜ワイド劇場」等、原作作品の多くがテレビ化されており、中でも「棟居刑事シリーズ」「終着駅シリーズ」は有名だ。森村氏は、今回のテーマとなった渋谷について「シブヤはラブホテルもあるし、アカデミックな場所もあるし、住宅街もあって面白い街。渋谷は色に例えると『多彩』。モノクロでもなく、新宿のような雑色でもなく三原色でキラキラしている。プリズムで砕かれた光のような7色のような感じ」と捉え、さらに他の街と比較して「銀座はアダルト、新宿は雑居、池袋は埼玉の匂いが、上野は東北の匂いがするが、渋谷は平均化していてクリームみたいなものが凝縮している街。銀座は若者が行くと違和感があるが、渋谷はオジサンも歩ける。渋谷は東京のクリーム・・・いい要素が詰まった街。どこへ入り込んでも新宿のような危険性は少なく、安心して迷える街」と話す。青山学院出身の森村氏は渋谷にも詳しく「以前と比べ、渋谷は新宿性が強くなっている」とも加える。
また、森村氏の初挑戦となる「携帯」小説については「通常紙に書いているが、今回は媒体がモバイル。今までと書く感触が違う。読んで不愉快になってもいけないし、洗練された恐怖、後味が悪くない都会的恐怖を与えたいと思って執筆した。ただ、紙で書く場合は分かるはずの読者のニーズが分からなかった。異界の読者を相手しているという感じ。紙は戦いなれたリングだが、勝手が違うという意味では、モバイルは作者にとって精神の格闘技だった。出版社系のモバイル小説の場合は、読者も紙から流れているため、本の延長線上で読んでくれる読者が圧倒的に多いが、携帯ユーザーとなると、小説なんか読まないような人がいるかもしれない。今は小説なんか読まなくても映像・コミックでもいい時代。活字に限定されなくてもいい時代だから。ニーズが分からない。だから、おもしろさ、怖さがある」と話す。
森村氏に作品のテーマを聞いた。「『異界の扉』で描きたかったのは渋谷の多面性で、これは時間的な多面性とも言える。どの扉を押しても違う渋谷に入っていく。また、この小説に登場する『ランプシェード』というカフェは渋谷に実在するカフェがベースになっているので、どこにあるのかを探しても面白い。この小説を読んでカフェに入ると、現実の渋谷に戻れないという恐怖感が味わえるかもしれない。そうした思いで小説を読むと一層楽しくなるのでは」。読者に対して森村氏はこんなメッセージを託した。「読んだら元の渋谷に帰れなくなるかもしれないよ。作者を恨まないでね。読者は元の渋谷に戻ってこられない。力を合わせないと戻ってこられない。ひとりでは帰れない」。
異界の扉(NTTドコモ) 森村誠一オフィシャルサイトまた2月7日には、渋谷シネ・ラ・セットで渋谷を舞台にした新世代のホラー映画が公開される。タイトルは「渋谷怪談」と「渋谷怪談2」の2作品。呪われたコインロッカーがもたらす恐怖を描く同作品は、「呪い」「霊」といったジャパニーズ・ホラーならではの要素に都市伝説を融合させたもので、「試着室で消えた女子大生」「エレベーターに引きずり込まれた子供」「ベッドの下に潜む者の影」…、「都市のブラックホールに触れた者たちに降りかかる」戦慄が映像化されている。監督は「グローウィン グローウィン」の堀江慶。「百獣戦隊ガオレンジャー」のガオイエロー役で一躍有名となり、「呪怨2」にも出演する俳優で、日本大学芸術学部で映画制作を学び、次代を担う映画監督として期待される新鋭だ。
渋谷怪談オフィシャルサイト携帯サイトでの連載をもとに書籍化し100万部を超えた小説「Deep Love~アユの物語~」も映画化され、今春の上映が予定されている。同作品は渋谷を舞台に女子高生の「援助交際」などを描いた内容で、映画化は読者からの要望を強い要望を受けて、原作者「Yoshi」のもとに製作されるもの。出演者は主役「アユ」役に1,600名の一般オーディションから選ばれた重泉充香、ヒップホップユニット「Lead」の古屋敬多、黒田アーサーのほか、竹中直人が友情出演。また、音楽プロデューサーは渋谷の路上ライブをきっかけに活躍する川嶋あいが担当する。公開は配給会社に委ねず読者からの「応援メール」を募集し、全国の劇場公開を促していく。
ザブン今年も、新陳代謝を繰り返す広域渋谷圏の動向から目が離せない。