渋谷区立宮下公園(渋谷区神宮前6)の再開発に伴い設置されている工事用仮囲いを巨大なキャンバスに見立てたストリートアート・プロジェクトのアート制作が現在、進められている。主催はNPO法人「365ブンノイチ」。
30年間の定期借地権を設定し、事業者に選ばれた三井不動産が再開発工事を行っている同園。3階建ての商業施設の屋上に公園を整備し、カフェや多目的コート、スケートボードパーク、クライミングウオールなどを設けるほか、17階建てのホテルも隣接して建設する予定で、2020年3月の完成を目指す。
渋谷の繁華街では、壁や仮囲いにスプレーで落書きされるケースが後を絶たず、地元商店会などが消去や防止のための巡回などの負担を余儀なくされている。こうした被害を未然に防ぐため、1日4万人以上が通行する同所の仮囲いを使ってソーシャルアートを制作するのが同プロジェクト。始動に際しクラウドファンディング「キャンプファイヤー」で支援を募り、79人から122万円が集まった(目標金額は100万円)ほか、キユーピー(渋谷1)、アダストリア(渋谷2)、みずほ銀行(千代田区)が協賛している。
アートを掲出する仮囲いは明治通りと美竹通りに面した仮囲いの高さ3メートルなど、全長は延べ200メートルに及ぶ。絵は仮囲いに直接描けないことから、3メートル四方の紙48枚に描いた後に貼り付ける手法を取っている。使う紙は、ラミネート加工しなくても耐水性が高いという石灰石で作られている「ライメックス」を採用。ペンキは水性塗料で、オリジナルで調合してもらうオレンジ・紺・ピンクを基調に仕上げる。線画がベースで、48枚中8枚にはSHIBUYA109(道玄坂2)やスペイン坂、ハチ公前広場など渋谷のランドマーク的な場所をフルカラーで描く。
原画を担当するのはイラストレーターの金安亮さん。「渋谷で愛犬とはぐれた少女が、街中で多様な人たちと触れ合い・助けられながら愛犬と再会する」ストーリーに仕上げる。イラストの中には、盲目の人やLGBTのカップル、車いすのスポーツ選手、ストリートミュージシャンなど50人以上が登場する。
アートの制作には武蔵野美術大学、女子美術大学、桑沢デザイン研究所、東洋美術学校の4校から60人ほどの学生がボランティアで参加。2月中旬に下絵を描き、現在色付け作業中。渋谷区役所仮庁舎の一室を作業場に、土曜・日曜の8時間をシフト制で行っている。
昨年4月ごろに、同NPOプロジェクトリーダーの田村勇気さんが渋谷区澤田伸副区長と話をして始動した同プロジェクトも佳境を迎えた。田村さんは「やっとここまで来たが、やったことがないプロジェクトなので緊張が続くが、何が起こるか楽しみ」と笑顔を浮かべ、「学生たちにも関わった作品が多くの人に見てもらえる高揚感を味わってほしい」と話す。
作品は3月下旬に完成予定。