渋谷ヒカリエ(渋谷区渋谷2)8階クリエーティブスペース「8/」のコートで3月15日、シブヤ経済新聞文化センター/トークラウンジ「さよなら、東横線渋谷駅。メモリアル写真集発売記念 鉄道写真家・中井精也さんトークライブ」が開催された。
シブヤ経済新聞(以下シブ経)が多彩な分野から「キーマン」を招き、トークを中心としたイベントを行う「シブ経文化センター」の第9弾となる今回。鉄道写真家・中井精也さんをゲストに迎え、シブヤ経済新聞の西樹編集長が進行を務めた。
中井さんは今月8日に発売された「DREAM TERMINAL 東横線 渋谷駅メモリアル写真集」を手掛けた。昨年の春に東急側から同写真集の話を受けた際「1つの駅で1冊は無理かも」と思ったが、「駅だけでなく、渋谷の街全体が変わる。そう考えるようにした」という。
写真を撮るうえで「車両だけが鉄道写真の被写体だけでなく、鉄道が持つ旅の旅情を被写体にしたいと考えている」という中井さん。イベントでは、「かまぼこ型」の屋根の上を歩けるようになっている部分の写真や、渋谷ヒカリエのオフィスから撮影した駅舎、工事中の新線など、中井さんが撮影した写真のほか、昭和初期に撮影された写真、東急5000系(通称:アオガエル)、東急玉川線など写真集に掲載した作品などを紹介。この日撮影したという、「渋谷駅最後の夕日」を収めた写真がスクリーンに写し出されると、場内から感嘆の声が上がった。
中でも、ホームの先端から駅のライトが消えた後に撮影したところ「星空が見えた」ことを「非常に驚いた経験」と振り返り、「それまで、後ろ向きに寂しいと思いながら撮っていたが、新しい駅になってつながっていくんだと捉えようと前向きに考えるようになった」と振り返る。
渋谷駅について、「この駅から人を運ぼう・迎えよう、渋谷のランドマークになろうというデザインにすごい誇り・プライドが感じられる。だから、いまだに色あせることなく、ランドマークになり続けた」とも。
最後に「渋谷の話だけでなく、東京の街が変わるということだと思う。そうした歴史的な時代に生きていたこと、鉄道とか写真に興味があって、最後の夜にここにいたこと、そういったことも含め、この時代を今感じていただきたい。そして10年・20年後にもう一度(写真集)をご覧いただき、『こんな時代だったんだな』『良い時代だった』振り返っていただければ」と締めくくった。「当たり前だと思っている風景も、広く写真を残していくっていうのは大切」とも。