南青山の岡本太郎記念館(港区南青山6、TEL 03-3406-0801)で現在、「太郎発掘展」が開催されている。
比較展示する「娘と犬」(1953年)と「二人」(1950年)
岡本太郎には、写真が残っているのに作品がない、美術展への出品記録があるのに現物がないなど、行方が分からなくなっている絵画が「少なからずある」という。同館アトリエで「電撃」(1947年)が発見された2006年秋、同時に1953年に開催された「第2回サンパウロビエンナーレ展」に出品した時のシールが貼られた作品が見つかった。しかし、資料に残っていた出品作品とは異なる絵であったことから、その作品を赤外線で分析したところ、作品の下に出品作が描かれていることが分かった。同館などでは、「同様の作品があるのでは」と2010年ごろから調査を実施している。
同展では、こうして「発掘」された作品を紹介。開催にあたり、絵画修復家の吉村絵美留さんの技術指導の下、同館客員研究員の大杉浩司さんが描き替えられる前の作品を再現制作。描き替えられた油彩と比較展示する。
作品は、「第3回アンデパンダン」出品作「室内」(1951年)や「第1回現代日本美術展」出品作「動物」(1954年)、「1951年 岡本太郎小品展」出品作「青春」(1951年)など5組10品。そのほか、パネルのみで紹介している作品含め約20点を展示する。
岡本太郎の作品について、大杉さんは「大胆なストロークを使って描かれている。岡本太郎の手の動きと息遣いができるもので、まねしようと思ってもできない。それでもいろいろな資料を手繰りながらタッチは近づけたつもりだが、完全なものにはなっていない。あくまで参考資料として見ていただければ」と話す。再現制作に取り組んだ結果、「岡本太郎の作品は原色というイメージが強いが、一番よく使ったのは白と黒だった」と振り返る。
開館時間は10時~18時(入館は30分前まで)。火曜休館。入館料は、一般=600円、小学生=300円ほか。3月24日まで。