改築を予定する国立競技場(正式名称=国立霞ヶ丘競技場・陸上競技場)の国際デザイン・コンクールで、女性建築家ザハ・ハディドさん率いる英国の建築事務所「ザハ・ハディド・アーキテクト」の作品が最優秀賞に決まった。同競技場を運営する日本スポーツ振興センターが11月15日、発表した。
東京オリンピックが開かれた1964(昭和39)年に建てられた現在の国立競技場。2020年の招致を目指すにオリンピック・パラリンピックで、同競技場をメーンスタジアムにすることが計画されているが、老朽化・収容人数などの問題から建て替えを決定。今年7月から一級建築士事務所などを対象にデザイン案を国際公募していた。新国立競技場の敷地面積は約11万3000平方メートル。
新しい競技場に求められるのは大きく3つ。神宮球場や東京体育館などが隣接する敷地内に、8万人を収容できる会場を「無理なく」収めること。スポーツのほかコンサートなど文化的なイベントでの活用に向けた可動式の屋根、芝生のメンテナンスのための技術。そして、新しい競技場は2019年に同所をメーン会場に開催が決まっているラグビー・ワールドカップまでに完成させられる建築であること。公募で集まったのは46作品。先月の1次審査で11作品に絞り、今回、10人の審査員投票を行った後、上位作品について議論し最優秀案などを決めた。
ハディドさんは1950年イラク出身、イギリス在住の建築家。ロンドンオリピックの水中スポーツ会場の設計を担当したほか、日本では英ブランド「ニール・バレット青山店」(港区南青山3)の店舗を設計。「建築界のノーベル賞」といわれるプリツカー賞を女性で初めて受賞したことでも知られる。今回の案は流動型のデザインが特徴的。中でも、「大胆な」建築構造が表れたアリーナ空間が特に高く評価されたよう。
アプローチを含めた周辺環境との関係については今後修正の必要性を示しながらも、先進性の発信ができ、象徴的なアーチ状の主架構の実現、自然採光や太陽光発電・雨水利用などの提案で建築・環境技術をアピールできると判断した。
優秀賞は、オーストラリアの「コックス・アーキテクチャー ピーティーワイ エルティディ」。透明な3次曲面のドームや木壁のスタンドのデザイン、屋上庭園を含めたホスピタリティーが評価を得た。国内からは、なだらかな起伏のある屋根と観客席、周辺環境や自然との親和性が評価された妹島和世さんと西沢立衛さんの建築ユニットSANAAと日建設計のデザイン案が入選を果たした。
今後は、ハディドさんとデザイン監修に関する具体的条件を協議し契約を締結後、正式に新国立競技場の基本構想デザインに採用予定。設計チームは、あらためて基本設計、実施設計の設計者をプロポーザルで選定し組まれる。11月下旬に表彰式を行う予定。ハディドさんには賞金2,000万円を贈る。
現競技場は2014年7月から2015年10月にかけて解体し、新しい競技場の建設工事は同年10月~2019年3月を予定。総工事費は解体費などを除いて1,300億円程度を見込む。