渋谷マークシティの連絡通路内で一般公開されている、岡本太郎の巨大壁画「明日の神話」の恒例の「すす払い」が10月26日深夜から始まった。区民や地元企業などで働くボランティアを中心に22人が参加し、1日約30万人が行き交う同通路上に掲出される壁画表面に付着した「綿ボコリ」を丁寧に払い落とした。
2008年に渋谷区を恒久設置先に決定した同壁画。同年11月17日に一般公開して以来、毎年秋にNPO法人「明日の神話保全継承機構」を中心に壁画の清掃、修復・補強作業が行われている。今年で4年目を迎えた。
同連絡通路は一般公道で、歩行者の通行を妨げたり、危険が及んだりすることを避けるため、清掃活動は京王・井の頭線の最終電車を見送った深夜1時過ぎからスタート。幅30メートル、高さ5.5メートルの壁画に足場を組み、列で全14ブロック、縦に上中下3ブロックの計42ブロックに区分け。全4日間の清掃日程の中で、1日10~15ブロックのペースで順番に清掃活動を行っていく。
清掃方法は、同壁画の修復プロジェクトに携わった絵画修復家・吉村絵美留さんの指導の下、ヘルメットやマスク、軍手、安全ベルトを着用したボランティアスタッフが、片手に「はけ」、もう一方に掃除機を持って壁画と約30センチメートルの距離感で向かい合いながら作業を実施。目に見える範囲内の綿埃(ぼこり)をはけで払い落としながら、万が一、壁画の「絵の具」がはがれ落ちた場合に備え、同時に掃除機で全てのホコリや汚れを吸い取るという丁寧かつ慎重な作業が求められた。
回収された埃の成分は主に衣類から出る化学繊維。1日約30万人が往来する同通路には大量の化学繊維が舞い上がり、綿埃となって壁画に付着するという。壁画の保存状態について、吉村さんは「昨年は猛暑の影響で、壁画復元時に接着した亀裂箇所の口が一部広がっていたため、今年は夏前に壁面裏側にエアコンを設置した。その効果もあって、今はとても良い状態で保存できている」という。
今回初めてすす払いに参加したという会社員の末原さんは「毎日、歩いている場所だが、こんなに埃がたまっているとは思わなかった。初めは絵の具を削らないかなとひやひやしながらだったが、岡本太郎さんの筆使い、色使いを間近に見ながら掃除することができて面白かった」と話していた。
清掃活動は午前4時ごろまで続き、初日は計画よりも多い計16ブロックの清掃が終了。今後、11月3日まで計4日間にわたり、ボランティアの手で深夜のすす払いが進められる。