渋谷・宇田川町の定食店「ハタケ マメヒコ飯店」（渋谷区宇田川町、TEL 03-3780-0045）で9月15日から、映画「紫陽花とバタークリーム」が上映される。

　監督・脚本・編集を手掛けたのは、同店を経営するセレンディピティ（世田谷区）社長の井川啓央さん。同社はテレビ番組制作会社として設立され、「カフェもメディアの一つ」と考え2005年に「カフェ マメヒコ三軒茶屋」（同）をオープン。以降、渋谷にもカフェを展開しているほか、自社農園「ハタケマメヒコ」（北海道・十勝）、演劇「檸檬の白い帖」（2009年）の制作なども手掛けてきた。

　今年1月ごろから動き出した同企画。「マメヒコピクチャーズ」と称し、カフェ マメヒコを舞台に「カフェが作る、カフェでしか見ることのできない映画」を製作・上映していく。第1作目となった「紫陽花とバタークリーム」では、カフェを舞台に店主や店員と来店客の人間模様、カフェの日常を描いた。カフェの店主役は俳優や映画監督などで活動する田口トモロヲさん。実際に働いている店員も出演しているほか、オーディションで選んだ店員役のキャストたちは2カ月ほど店で研修して撮影に臨んだ。実際にマメヒコを利用したことがある人たちも客役としてエキストラ出演するなどしている。

　撮影場所は「カフェ マメヒコ三軒茶屋」を中心に三軒茶屋の街。6月上旬に1週間店を休業して撮影した。製作費は400万円ほど。今後第2作目以降も製作予定。同作上映に向けマメヒコ飯店は上映用にモニターを設置するなどした。

　井川さんは「やろうとしていることを理解してもらわなくてはいけなかったのでキャスティングは悩んだが、出演してくれた人たちは即答で決めてくれた」とし、「渋谷にはカフェも、映像もあふれている。その中でやるには、既存のものと違うものを作ることが大事。カフェを作るのも映画を作るのも一緒だった」と振り返る。

　「渋谷は『文化発信の地』など言われているが、実際に発信している人は少ないのでは。手間暇かけてでも渋谷から発信していきたい」と、渋谷での上映にこだわる。「どんな方たちが見に来てくれるか分からないし、全く来ないかもしれない。でも、わざわざ見に来てくれる人もいる予感もある。一つの実験のようなもの」という。

　ただし、「映画を取り巻く環境はシビア」とも。渋谷もミニシアターの閉館が相次ぎ「映画を製作しても上映することができない作品もある」とし、「渋谷で何かをやり続けるのは大変だが、しぶとくやる予定。館主でもあるので、あの手この手を尽くして続けられる限り（映画を）製作していきたい。『こういうやり方もあるんだ』と、まねをする人も出てくれば。映画監督もしている田口さんにも、そこに賛同していただいた」と期待を込める。

　上映は初日以外の毎週日曜日1日6回（上映開始1回目＝11時15分、同最終＝21時30分）を予定。鑑賞料は950円。チケットはマメヒコ各店で販売。定員は各回約25人。店内ではコーヒーなどのドリンク、マフィンなどのスナック類を用意する。マメヒコ各店では、同作に登場するブルーベリーなどで紫色に着色したバタークリームのロールケーキ「紫陽花ケーキ」（600円）を年末までの期間限定で提供している。