東日本大震災から1年を迎えた3月11日、「Bunkamuraオーチャードホール」(渋谷区道玄坂2)で米歌手シンディ・ローパーさんがライブを行った。
昨年、アルバム発売を記念したジャパンツアーのため日本に向かったシンディさんは、東日本大震災に見舞われた昨年3月11日に来日。国内外のアーティストが公演を中止する中、シンディさんも一時公演中止も検討したが、自身の強い思いもあり、協議を重ね東阪名で予定通り6公演を行った。
当日、リハーサル中だった14時46分にはバンドメンバーやスタッフらと共に北の方向を向いて黙とう。シンディさんは手を合わせ、祈りをささげたという。ライブ前には会見を開いた。「私が昨年、帰らずに日本に居続けて歌ったこと、今年戻ってきたのは、あなたたちのことを忘れていないと伝えたいという思い、そして、今年も私の歌で日本のみなさまを癒やしたいという思いから」としながらも、「今年日本に戻ってきたとき、まるで聖なる人のように祭り上げられるのが嫌だった。自分はそんな存在ではないので」と心境を明かした。
「夫に電話したら、『あなたは木のような存在なのでは』と言われた。木は再生のシンボル。苗木を育てることで一緒に育っていける。だから被災地の小学校に桜の苗木を送った」と、5日に宮城県石巻市の小学校を訪問し桜の苗木を贈ったことを振り返た。「ちょうど1年たって、被災地に実際に行って、本当にひどい状況だった。多くの人たちが仕事もなく、住む場所もない、という状況が続いていると聞いている」と話し、「昨日、私の友達が福島からやって来てくれた。そこで、私に飴(あめ)をくれたが、その友達は、飴一つとっても『これは汚染されていないだろうか』と心配する、と聞いて本当につらかった」とも。
「今、日本の復興は大変難しい。みんな復興に向かって頑張っているといっても、まだまだ大変なことが本当に多くて、とても胸が痛んだ。どうか皆さん、被災地の方を応援し続けて、これからもつながりを持ち続けてほしい。その思いで今日の公演も行う」と意欲を見せた。
ライブは、ギターを弾きながら歌った「WHEN YOU WERE MINE」や「JUST YOUR FOOL」、日本語の曲「WASURENAIWA(忘れないわ)」などのブルース、ファーストアルバムに収録されている「ALL THROUGH THE NIGHT」、日本人ボーカリスト&フリューゲルホーン奏者TOKUさんを招いた「TRUE COLORS」など、アンコール含め16曲を披露。ライブ中は、客席に降りて歌う姿や「アリガトウ」と日本語で話す場面も見られた。
ライブの模様は、岩手、宮城、福島の東北3県4館の映画館で無料上映された。今月13日に大阪、15日には名古屋公演を予定する。