渋谷・スペイン坂上のミニシアター「シネマライズ」(渋谷区宇田川町、TEL 03-3464-0051)で現在、昨年カンヌ国際映画祭の脚本賞受賞作「スプリング・フィーバー」(ロウ・イエ監督)が先行公開されている。
1965(昭和40)年生まれの同監督は1985年に北京電影学院映画学科監督科に入学。卒業制作で監督した「デッド・エンド 最後の恋人」が1996年のマンハイム・ハイデルバーグ映画祭で監督賞を受賞。1998年に「中国初」のインディーズ映画制作会社ドリーム・ファクトリーを設立した。各国の映画祭などでグランプリを受賞した「ふたりの人魚」などを手がけた後、天安門事件にまつわる作品「天安門 恋人たち」を制作。中国当局が上映許可を出さなかったカンヌ国際映画祭で上映したことから、5年間の映画製作・上映禁止処分を受けていた。
禁止処分を無視し「ゲリラ的」に撮影した「スプリング・フィーバー」は、現代の南京を舞台に、中国では「いまだタブー視されている」という同性愛を描いた作品。「純粋なラブストーリー。日常に生活する人と人との間に起きる心の衝動を描いた」(ロウ監督)という。
「ふたりの人魚」の配給を手がけて以来、公私にわたり付き合いがあるというアップリンク(宇田川町)の浅井隆社長は「邦画・洋画問わず人の感情が単純化した映画が多い気がするが、この作はそうではない。人の心の複雑さ・不確かなところを描いたところが素晴らしい」と話す。公開から4日で「まだ思っているほどの来場者数ではないが、映画をご覧になった方のツイッターコメントを見ると反応は良い。どんどん(評判が)広がっていけば」と期待を寄せる。
鑑賞料(シネマライズ)は、一般=1800円、学生=1500円ほか。今後全国で順次公開予定。12月25日からは「アップリンクX」(宇田川町)で「ふたりの人魚」をリバイバル上映する。