渋谷駅ハチ公広場などを拠点に、僧侶と巫女(みこ)の衣装をまとってって通行人らに歌いかけ、「勝手に」励ます活動を続ける音楽ユニット「励まし屋」が年明け最初のライブ演奏を行い、今後の抱負を語った。
励まし屋は、1975(昭和50)年生まれの同い年で、もともと職場が一緒だったという来栖政也さんと吉野努さんで成る。容姿に対するイジメや生活環境から「ひねくれ」、17歳で仲間らと事件を起こして服役し、出所後は「強く精一杯『生』を全うすることが贖罪(しょくざい)の肝。『こんな俺でもできるんだから』と誰かに勇気を与えたい」と考えるようになった来栖さん。一方の吉野さんは、大学時代に音楽活動を目指しながらフリーター生活や就職・辞職を経験。30歳で歌への思いを強め、来栖さんを音楽の道に誘い込んだ。
ライブハウスでの活動を続けながら、歌うことの理由を話し合ったという2人。最終的に「誰かを励ますために歌いたいんだ」という思いへ行き着き、昨年4月に僧侶と巫女の姿でギターを手に路上ライブを展開する「励まし屋」の活動をスタートさせた。
活動は主に土曜・日曜のハチ公広場での路上ライブが中心。新年最初の活動となった1月9日・10日には、「絶対ゼッタイできるんだ」と力強く繰り返す「励まし屋」や、これまでの出会いや別れへの感謝をつづった「67億分の1」などを歌い上げた。年始の寒空の下、待ち合わせ途中の中高生グループや、親子連れ、外国人カップルなど30人ほどが足を止め、曲終わりで拍手を送った。演奏終了後、2人は約100種類のメッセージを「今日の一言」としてランダムに配布しながら、足を止めた通行人をねぎらった。
渋谷センター街や文化村通りなどを歌うなどして練り歩いているという2人。路地などで一人下を向いている人などを発見すると「近づいていってあいさつしたり、メッセージを手渡している。防犯になればという意識もあるし、この格好を見て笑ってもらえるとうれしい」(来栖さん)。
観客からはこれまで、「高校に入ったらバスケを頑張りたい」「結婚・就職が決まった」などの話を聞いたといい、来栖さんは「(全く関係がないのに)『2人のおかげ』と感謝されることもあり、ありがたい。こちらが逆に励まされることも」と話す。今後については、「大人が疲れ、悲観的になっていて今の社会に希望が持てないという若者の話を聞く」とし、「(無茶な目標だが)紅白歌合戦に出たい。こんな僕たちが無謀なことに挑戦し、結果を出すことで誰かを勇気づけられたら」と意気込む。