日本トイレ研究所(港区)は11月7日・8日、表参道ヒルズ横の公衆トイレを会場に、「トイレ」をテーマにした展示イベント「表参道トイレ美術館」を開催した。
同研究所は昨年、トイレ研究や技術開発、衛生指導を行う部門として日本トイレ協会から独立。トイレットペーパー使用量の調査、オリジナル曲「うんちっちのうた」の制作、小学校のトイレ改修などを通して「トイレ環境がどうあるべきか」を総合的に研究している。
同展は「無意識に利用されがちな公共・公衆トイレを、美術館という『美しい場所』にすることで、利用者がトイレに意識を向け、よりきれいに使うようきっかけとなれば」(同研究所代表の加藤篤さん)と開催。コピーライターの並河進さんが呼びかけ、アーティストの日比野克彦さんや書道家の大橋陽山さんなどクリエーター8人が、同研究所のスローガンである「トイレに、愛を。」をテーマに多彩な作品を出展した。
大橋さんは中央に「水」と書き記した書道を出品。同展参加については「初めて話しを聞いたときは、『周りからなんと言われるだろう』と不安になり、断ろうかと思った」と明かしながらも、「トイレは水の神が宿る場所。床の間に掛け軸を飾る様に、トイレに書道を置いてもいいのではないか」と出品を決めたという。
並河さんはトイレの個室や手洗い場などに「トイレの詩(うた)」を展示。「トイレに愛を注げる人は、トイレの外の世界にも愛を注げるのではないか」(並河さん)と同研究所に賛同する並河さんは、日本全国の公共施設や商業施設などのトイレ約1,500ブースに「トイレの詩(うた)」を掲出し、利用者にトイレをきれいに使用することを呼びかけるキャンペーンにも参加する。
そのほかアジアを中心に人物や風景を撮影する写真家の小林紀晴さんは、さまざまな環境のトイレを見て来た経験から「排泄行為の最中に見えたらぜいたくな風景」として、晴れ渡った空の風景写真を男性用便器の前に並べた。アーティストの田中偉一郎さんは「静かだったり湿っていたりする『怖い場所』としてのトイレ」を、トイレットペーパーに目を埋め込んだ「トイレの神」を各所に配して表現した。
同展について、並河さんは「トイレの外で待っていて出てきた人たちに感想を聞いたが、いい反応だった」とし、加藤さんは「トイレは音、色、香りなど、あらゆる感覚をリアルに感じる場所。アーティストさんらに呼びかけ、共同で『最高のトイレ』を作ってみたらどんな心地がするのか体験してみたい」と話す。
美術館の「入館」者数は、7日=1,582人、8日=1,732人を記録した。