「ゴミとは何か?」をテーマに約1年間ゴミに関するリサーチを重ねてきたアーティストの大巻伸嗣さんが、トーキョーワンダーサイト(TWS)渋谷(渋谷区神南1、TEL 03-3463-0603)で現在、ゴミを燃やした後に残る人工物「スラグ」を用いた巨大インスタレーション「環境展『絶景』」を開催している。
1971年に岐阜県に生まれた大巻さんは、1997年にキリンコンテンポラリーアワード奨励賞を受賞。2002年に東京都が主催する公募展「トーキョ-ワンダーウォール」に入賞以降、TWS本郷での個展「ECHO」(2002年)、3人展「Out of the Blue」(2003年)、韓国のサムジースペース滞在(2006年)など、TWSが継続的に支援するアーティストの1人。空間を非日常的な世界に変ぼうさせるダイナミックなインスタレーションが特徴。
2007年からは「ゴミとは何か」という問いを出発点に韓国、中国で「アートとゴミの堆積の境界線」や「美しいものとそうでないもの」をコンセプトにした展示「Garbage Project」を展開。「Garbage Project」の集大成として発表する同展は、大巻さんが約1年間かけて都内の清掃工場、埋め立て処分場などでリサーチを行い、意見交換を進めながら練り上げた。
会場には、溶解炉でのゴミ焼却の後に残る黒い粒子状の人工生成物「スラグ」を用い、「TWS渋谷開設以来最大級の規模」(展覧会担当)という巨大インスタレーションがお目見え。「罪の無い破壊者」は、スラグを砂浜のように敷き詰めて水を張ったインスタレーションで、薄暗い明かりに水音が響く静寂な情景を創り出した。また、スラグを一杯に積み上げた2階展示会場には、底に1カ所穴を開け、1階展示室にスラグがこぼれ落ちる仕掛けを用意。ゴミの結晶ともいえるスラグがもたらす「身に迫る詩的体験」を伝えている。
同展について、担当者は「繁華街からちょっと入った施設にあの空間が広がっていることにきっと驚いてもらえるはず。楽しめる空間でありながらメッセージ性がある」とし、「1年の調査をフィードバックした展示なので、大巻さんに向けて感想を戻してもらえれば」と話す。
開催時間は11時~19時。月曜休館。入場無料。11月8日まで。