香港出身の実力派女優マギー・チャンさんが2004年にカンヌ国際映画祭で主演女優賞を受賞した話題の映画「クリーン」(オリヴィエ・アサイヤス監督)の一般公開が8月29日、シアター・イメージフォーラム(渋谷区渋谷2、TEL 03-5766-0114)で始まる。
同作は、一度は離ればなれになった母と息子が新しい人生をともにスタートさせる姿をとらえた再生の物語。失ったものの大切さに気付き、母親としての自覚を取り戻す母役を演じたチャンさんは、同作でカンヌ国際映画祭女優賞を受賞。審査委員長を務めたクエンティン・タランティーノさんが「世界で最も素晴らしい女優の一人」と評し審査員全員の支持を得たという話題作で、カンヌ撮影賞もダブル受賞したが、これまで日本では特集上映などでの限定公開にとどまっていた。
日本で一般公開されなかった理由について、配給を担当したトランスフォーマーの杉本雄介さんは「噂だが、カンヌ国際映画祭でのダブル受賞で上映料が跳ね上がったのが大きい」と話す。日本の市場状況と権利者の「思惑」が一致しないために、良作が日本に輸入されないまま終わってしまうことも少なくないという。
今回杉本さんが配給を考えたのは、映画評論家の樋口泰人さんが昨年主催した映画祭で同作品を観賞したのがきっかけ。杉本さんは「その帰り道すでに『この映画を何としてでも日本に輸入する』と決めていた」と言い、「ちょうどアサイヤス監督の近作2本(「夏時間の庭」「NOISE」)が日本でも公開されるという後押しがあって、一気に話は進んだ」。
同作については、「どんなに苦しいことがあっても、大切なものさえ見失わなければ人は生きてゆける…そんなことを教えてくれる映画」と評し、「5年経っているから公開しても意味がないとは思わない。むしろ今こそ公開されるべきだと思っている」と意気込む。
公開記念トークイベントとして、8月29日にはタレントの加藤紀子さん(13時50分の回上映前)が、翌30日には映画評論家の樋口さんと大森さわこさん(16時10分の回上映後)が、それぞれ登壇する。
同作品はシアター・イメージフォーラムで先行ロードショー後、全国順次公開予定。