日本初の常設館となる「古代エジプト美術館」(渋谷区神南1、TEL 03-6809-0718)が7月25日、神南にオープンする。館長は、日本を代表する古代エジプト遺物コレクターとして知られる菊川匡(ただし)さん。
1965年東京都生まれの菊川さんは、早稲田大学理工学部応用物理学科卒業後、投資銀行など金融業界で活躍。英在住の小学校時代から、両親の影響で遺跡巡りに興味を持った。10年前に骨董(こっとう)品店でエジプトのブロンズ像を見つけたことがきっかけで古代エジプト遺物の収集を開始。昨年金融界を離れ、今年4月からは東京理科大博士課程に入学し、現在は遺物の真偽判断の延長でスタートさせたという古代ガラスの研究を行っている。
神南郵便局交差点の一角にあるビル8階部分に位置する同館。70平方メートルの館内では、1,000点を超える所蔵品の中から常時約100点を入れ替え展示する。「発掘」をモチーフに館内を歩きながら古代エジプトの歴史を「発見」していくのがコンセプト。「テーマパークのような非日常的な空間を楽しんでほしい」(菊川さん)と、5つの空間から成る館内に「発掘小屋」「神殿」「パトロンのサロン」などの多彩なイメージの空間を演出し、各テーマに沿ったコレクションを展示する。そのほか、暗号を解いて秘宝を見つけ出す体験型展示や、映像「5分でわかる古代エジプト史」の上映も。
「敷居を低くし、楽しみながら『本物』の古代エジプト遺物を感じてもらえれば」と菊川さん。館内では、タ・アケト・ウレト婦人のミイラを納め、「死者の書」の有名なワンシーンが描き込まれた紀元前300年ごろの「木棺」や、美しい金彩が施された保存状態のいい「ミイラマスク」などの貴重なコレクションを展示する。先史時代からローマ期までの4,000年にわたるエジプト文明の歴史を、彫像、装飾品、生活用品から壁画や石柱まで多彩な展示を通して伝える。
館内には、大学でエジプト学を専攻するスタッフが常駐するほか、20人までの貸しきりプラン(1時間20分=20,000円)も用意して、エジプト学者による解説付きプランや簡単なケータリングサービスも受け付ける予定。
菊川さんは「新しいものを発信するエネルギッシュなエリア(渋谷)で、堅苦しい『美術鑑賞』ではなく、来館者を主人公に、一流の遺物による古代エジプト文明体験を楽しんでほしい」と話す。
開館時間12時~18時(入館は17時30分まで)。通常営業は金曜・土曜・日曜・祝日。他の曜日は予約制。入館料は、一般=1,500円、大学生=1,200円、高校生以下=1,000円。