岡本太郎・巨大壁画「明日の神話」渋谷駅に安住へ-公開始まる

渋谷駅構内でベールを脱いだ岡本太郎の大作「明日の神話」。絵はハチ公前交差点からも一部を見ることができる

渋谷駅構内でベールを脱いだ岡本太郎の大作「明日の神話」。絵はハチ公前交差点からも一部を見ることができる

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 岡本太郎の巨大壁画、渋谷に出現――JR渋谷駅と井の頭線改札を結ぶ「渋谷マークシティ」2階連絡通路で11月17日午後、芸術家・岡本太郎が描いた巨大壁画「明日の神話」の一般公開が始まった。制作後30年以上にわたり所在不明となり、数奇の運命をたどった岡本太郎「幻」の代表作が駅構内に恒久設置されるとあり、今後忠犬ハチ公像やモヤイ像に次ぐ渋谷駅の新たなシンボルとしても注目が集まる。

巨大壁画がベールを脱ぐ瞬間にはどよめきが

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 大阪万博のシンボル「太陽の塔」を制作するなど当時世界的活躍を見せていた岡本太郎が、1968年メキシコの地で原爆さく裂の瞬間を描いた、縦5.5メートル、幅30メートルに及ぶ同作は、大々的な修復作業後、汐留、東京都現代美術館でそれぞれ一般公開。「安住の地」となる恒久設置場所をめぐり広島市、大阪市との招致合戦も加熱した。

 三つどもえとなった招致合戦を制したのは、恒久設置場所に提案した1日30万人もの通行客がある同連絡口で、絵を見に訪れる人だけでなく多くの人が目にすることができるなど高い情報発信性が評価された渋谷。日中は自然光で作品を見られるほか、連絡通路内の通行客だけでなく、ハチ公前交差点からも壁画の一部を見ることができる。駅周辺には、青山通り沿い・こどもの城(渋谷区神宮前5)にモニュメント「こどもの樹」、青山には岡本太郎の生前のアトリエ兼自宅だった「岡本太郎記念館」(港区南青山6)がそれぞれあり、岡本太郎とのゆかりも深い。

 壁画は、8月下旬から約2カ月半にわたり設置作業が進められ、10月半ばの取り付け作業終了後も外気に触れた際の調整など慎重な最終調整を繰り返してきた。除幕式には、岡本太郎記念現代芸術振興財団の与謝野馨前理事長と、実行委員長として招致プロジェクトを取りまとめてきたNPO明日の神話保全継承機構の小林幹育理事長(宮益町会、渋谷・東地区まちづくり協議会会長)が出席し、与謝野前理事長が小林理事長に目録を贈呈。

 港区立青南小学校と青山学院初等部の小学生の手によって絵を覆っていた巨大な幕が下ろされ壁画が姿を現すと、見物客や通行者らからどよめきが起きた。力強いタッチで描かれた鮮烈な壁画は、見上げるほどの大きさで、通路いっぱいに取り付けられた姿は、混沌(こんとん)とする駅構内で見ても圧巻。

 公開された壁画を前に、「明日の神話」再生プロジェクト・ゼネラル・マネージャーの平野暁臣・岡本太郎記念館館長は「この作品のパワー、エネルギーを改めて実感した。太郎も『見てくれ、やったぜ』と言っている」と安堵(あんど)の表情を浮かべ、「見ている人の表情を見ても、体で感じているように見える。この前に立てば必ず何かを受け取ってもらえるはず。ぜひとも来て全身で『浴びて』ほしい」と呼び掛けた。

 一方、「ハチ公から太郎へ。」をスローガンに招致活動を進めてきた小林理事長は「こんなにうれしいことはない」と喜びを爆発させ、「岡本太郎の象徴にもなっている『赤』が渋谷駅周辺のまちづくりの原動力になれば」と話した。設置後は、常時警備員を配置するなど壁画の保全活動にも乗り出す。設置場所については「(渋谷マークシティ連絡通路が)ぴったりの場所」としながらも、駅の再開発が進む渋谷駅東口エリアの開発に伴い「絵に合わせた空間を作ることになる」と移設の可能性も示唆した。

 壁画公開を記念し、渋谷「Bunkamura」(道玄坂2)地下1階ガーデンフロアでは、岡本太郎自身をモチーフにしたフィギュアやお釈迦(しゃか)様のような手が印象的な立体作品「手の椅子」など、岡本太郎の立体作品4点を展示する企画展「TARO WEEK 2008」を開催。作品は実際に触れ、写真を撮ることもできる。入場無料。今月24日まで。

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