2006年11月、ロンドン市内で殺された男性の体から検出されたのは、猛毒の放射性物質ポロニウム210だった――イギリスに亡命中の元FSB(ロシア連邦保安庁)中佐、アレクサンドル・リトビネンコさんが暗殺され世間を震撼させた事件から1年、生前の故人を約5年間にわたりインタビューし、事件の解明を求めるアンドレイ・ネクラーソフ監督によるドキュメンタリーが、日本初公開される。
元FSBの同僚たちと1998年に記者会見を開き、実業家への暗殺計画をはじめ、上司の大規模汚職や殺人、マフィアとの関係などを告発したリトビネンコさんは、何度かの逮捕と釈放を繰り返し、家族とともにイギリスへ政治亡命。その後も、自らを「反乱者」と称しチェチェン戦争の裏側にあるプーチン大統領とFSBの暗躍、政権の腐敗を告発し続けていた。
12月22日より、渋谷・ユーロスペース(渋谷区円山町、TEL 03-3461-0211)で単館上映される映画「暗殺・リトビネンコ事件(ケース)」(配給=スローラーナー)は、事件未解決のままカンヌ国際映画祭でも急遽上映され、論争を巻き起こした話題作。
死の直前まで病床で寄り添った監督による生前のインタビュー映像をはじめ、同じく暗殺されたとされる女性ジャーナリスト、アンナ・ポリトコフスカヤさんの生前インタビュー、プーチン大統領と決裂しリトビネンコさんを支援した政商ボリス・ベレゾフスキーさんをはじめとする関係者の証言などで綴られる。膨大なニュース映像や死後、残された家族の姿など、リトビネンコさんと親交のあった監督ならではの希少な映像で、リトビネンコさん「暗殺」の真相を追う。
作品は同22日よりユーロスペースでロードショー公開されるほか、年明けから全国でも順次公開予定。