渋谷の繁華街に行き交う人々の背中――約3年間にわたり、このシンプルな「被写体」をテーマにシブヤの「日常」を捉え続けた86歳の「現役」写真家がいる。
1921年サンフランシスコ生まれ、50年代に来日してからは日本で活躍する石元泰博さんは、自ら渋谷の街に出向きハチ公前交差点やセンター街などで撮影を続けたシリーズ作品を、このほど写真集として出版した。タイトルの「シブヤ、シブヤ」は、石元さんが38年前に発表した代表作「シカゴ、シカゴ」に似せたもの。
全198ページの作品集の中には、名作「シカゴ、シカゴ」で写し出した60年代アメリカとは「対極」の瞬間、瞬間を捉えた街の「表情」が並ぶ。石元さんは、これらの作品をノーファインダー(カメラのファインダーをのぞかないで撮る手法)で撮影した。Tシャツのバックプリントや流行のファッションなどから浮かび上がる表情は、どれも均一ではなく、シブヤの「今」を切り取るシンボルとしても面白い。
芝浦のギャラリー「フォト・ギャラリー・インターナショナル」では6月30日まで写真展を開催している。写真集「シブヤ、シブヤ」(平凡社、3,990円)は全国の書店などで発売中。