4月25日夜、渋谷・電力館(渋谷区神南1)で「ほぼ日・カレー部例会」が行われ、タモリさんが中心となり調理した「究極」のカレーがイベント参加者全員に振る舞われ、試食後にはゲストのみうらじゅんさん、リリー・フランキーさんらも参加し、トークセッションが行われた。
19時半ごろ、会場内のIHクッキングルームに入ったタモリさんは、ビールを片手に時折カレーの解説を加えながら軽快に調理を進める。普段はDJなどとして活躍する「カレー好き」が集まった料理ユニット「東京カリ~番長」らによる事前の下ごしらえもあり、カレー作りはスムーズに進んでいる様子。
一方、キッチンの様子を中継で見守る別会場では、大スクリーンに映し出される厨房の様子を見ながら、司会の糸井重里さん、ゲストらがタモリさんに話しかけたり、一般客を交えカレー以外のトークで盛り上がったりと「待ち時間」を過ごす。20時過ぎには会場のブレーカーが落ちるハプニングにも見舞われたが、事前に配られたスナックとビールを片手に観客側も待ち時間を楽しんでいる様子だった。
この日集まったのは、ウェブサイト「ほぼ日刊イトイ新聞(ほぼ日)」の告知を見て応募した1万2千人の中から抽選で選ばれた一般客およそ130人。スタッフ、報道陣も含め作られたカレーの数は200を超える。炊かれたごはんは米166号分、鍋20個分のカレー作りにタモリさんらも予想外に時間を使ったようだ。
調理開始から約1時間、タモリさんが調理を進める中、中継会場ではゲスト参加したジャズピアニスト、山下洋輔さんと糸井さんによる「ジャズ対談」も。電力館の中にあるピアノで山下さんがゲリラライブを披露すると、会場からは大きな拍手が起きた。ジャズ好きとしても知られるタモリさんも、この時ばかりは手を止め、ライブに聞き入っていた。
こうした中カレー作りは進む。中継会場にはレシピも細かい手順も伝えられず調理が進められるため、予想のつかない展開に見守る中継会場側の期待も高まる。完成間近、煮込まれて細かく繊維状になった鶏肉の入ったカレーが映し出されると、会場内の「早く食べたい」モードが最高潮に。21時30分、タモリさんの「カレー、完成しました」の声に観客席からは拍手が起きる。スタッフらが約200人分のカレーを配ると、キッチンから戻ったタモリさんを含め「いただきます」のかけ声とともに一斉に試食会が始まった。
完成したカレーは、ごはんの上にマッシュポテト、カレールーをかけたものをかき混ぜて食べるスタイルが特徴。タモリさんによると、卵かけごはんならぬ「カレーかけごはん」なのだという。待ち時間も長かったためか、無言でもくもくとカレーを食べる観客席からは「うまい」「おいしい」との声が。みうらじゅんさんは感想を一言も語らずカレーを完食していた。
試食後、カレーについて語り始めたタモリさんは「専門店の味でもなく、おふくろの強制的な味でもない」とできあがったカレーを紹介。「思ったより人数が多かったのと、分散して作っていたルーの味を均一にするのに時間がかかった」と思わぬ苦戦を強いられた状況を披露した。
カレーは鶏肉ベース。カレー粉、ターメリック、クミンなどのスパイスにもみ込み焼き上げた鶏肉を湯に入れて煮込み、マンゴーチャツネ、赤ワインなどを加えたスープに特製ルーを入れる。ルーは、炒めたまねぎ、にんにく、しょうがとカレー粉などのスパイス、牛乳、ヨーグルトを混ぜ合わせてペースト状にしたオリジナル。煮込んだスープに入れた後は、隠し味でしょうゆや砂糖、とろけるチーズなどを入れてトータル2時間強煮込むと完成する「究極」のカレーだ。マッシュポテトを添えて食べるスタイルはタモリさん行きつけの店からヒントを得たという。
食べ終えた糸井さんは「このカレーについては、ああだこうだ言わないのがいい」ときっぱり。リリーさんが「『お家のカレー』の味がした」と言うと、タモリさんが「今日は家のカレーの最高峰を作りたかった」と続ける。これまで世界中カレーを食べ歩いてきた「東京カリ~番長」のメンバーも「今日のカレーは『ど真ん中』。シンプルで、ここからいくらでもアレンジを加えられる真ん中のカレー」と評価した。
試食後に行われたトークセッションでは、タモリさんが独自の「料理論」を展開。「料理は引き算。素材のうまみをどれだけ生かせるかが重要」「ひと口目じゃなく10口目でおいしいと思われるのが本物」などと持論を語ると、トークはそこから別のテーマに脱線、みうらさん、リリーさんらも交えた「コア」な対談に観客も聞き入っていた。
イベント終了後、ホール出口でエレベーターを待っていた都内在住、会社員の女性3人組は「おいしかった」「楽しかった」と口をそろえ、「何が起きるか分からない状況が面白かった。この現場にいれてラッキー」と話していた。都内で大学院に通う友人同士という男女は「ゲストやスタッフがとても細やかに気を配っていたのが印象的。タモリさんは『遠い人』という感じだったが、今日は身近に感じられた」とイベントの手際の良さに感心した様子だった。