ワタリウム美術館(神宮前3、TEL 03-3402-3001)では今月から、韓国出身のビデオアーティスト、故ナム・ジュン・パイクさんの作品を集めた追悼展「さよならナム・ジュン・パイク展」を開催している。
1932年、ソウルに生まれたパイクさんは、東京大学文学部を卒業後ドイツに渡り音楽を学ぶ。その後米国に拠点を移した1961年に、当時ニューヨークで起きていた前衛的な芸術運動「フルクサス運動」の創設者、ジョージ・マチューナスと出会った後は、自身も同運動の中心的存在として多くの作品を発表し続けた。作品は、積み重ねたテレビモニターに映像を流すといった「ビデオアート」が中心で、米グッゲンハイム美術館や伊ヴェネツィア・ビエンナーレをはじめ、日本でもワタリウム美術館を中心に数々の意欲作が発表された。
同展では、今年1月に療養先のフロリダで73歳の生涯を閉じたパイクさんの作品の中から、同館収蔵のコレクションを中心に約150点を展示。主な展示内容は、パイクさんの代表作のひとつで、70台以上のテレビモニターを三角柱状に積み映像を流す「時は三角形」(1993年)、ドイツの現代アーティスト・ヨーゼフ・ボイスに捧げた作品「ボイスを送る」(1986年)、「ユーラシアン・ウェイ」(1993年)、「キャンドルTV」(1980年)など。
また、会場では日本人クリエーターやジャーナリストらが参加し追悼文とドキュメントを載せた記念小冊子「美学、考 - さよなら ナム・ジュン・パイク-」(600円、限定500部)を販売するほか、期間中計6回に渡り音楽家やアーティストによるトーク&パフォーマンスイベントを行う。参加料は全回通しで18,000円(要予約)。入場料は会期中複数回利用できるパスポート制で、大人=1,000円、学生(25歳未満)=800円。10月9日まで。(写真=「ロボットK567」と「ケージの森/森の啓示」1993)