サッカーのワールドカップ(W杯)ドイツ大会で日本時間の6月23日未明、日本代表チームがF組最終戦をブラジルと争い、試合開始が早朝4時からであったにも関わらず、渋谷駅周辺には多くの若者が集まった。試合結果は日本が奮闘の末1対4と完敗、決勝進出を逃した。
この日、駅周辺のパブやスポーツバー、居酒屋などモニターを備えた多くの店では「パブリック・ビューイング」と称し観戦イベントを開催。未明の開催とあり、事前には「開催は微妙」としていた各店舗でも、決勝進出への望みがかかった重要な試合だけに明け方まで営業を続ける店が多かった。
渋谷の街に若者が集まり始めたのは終電の時刻を過ぎてから。深夜2時前、センター街の入口に「心はドイツ」という看板を持って立っていた大学生の男女9人組は、「(W杯は)4年に1度のお祭り。3対0で日本が勝つ!」と意気込みは十分。群馬県から出てきた学生の川端さん(20歳)は、「リアルな予想は2対0でブラジルの勝ちだが、願いは8対0で日本」と、冷静な一面も見せていた。また、センター街には腰の上で裾を縛った代表ユニフォームにホットパンツを合わせ、足下は流行のオーバーニーソックスやピンヒールで決めるといったギャルサポーターも出現。思い思いのファッションで目立っていた21歳の女子大生2人組はクラブ「ATOM」で試合を観戦するといい、一方で「まわりの友人は家で観戦派が多い」とも話していた。
深夜2時30分を過ぎるとセンター街の動きも徐々に本格化。人の流れが増えると同時に地面に座り込んで酒盛りをする若者やサッカーを始める集団も現れ、手拍子や歓声も上がり始める。この頃になると報道関係者も到着しカメラに向かってサポーターがパフォーマンスする姿も見られるようになる。
時刻は午前3時。路上で騒いでいた客もそれぞれの「観戦場所」へと移動し、路上から人けがなくなった早朝4時、いよいよ試合開始。日本戦の過去2試合でもパブリック・ビューイングを行ったという道玄坂2のクラブ&バー「Xanadu(ザナドゥ)」には約200人のサポーターが集まり、応援コールに加え試合にじっと見入る姿も多く見られた。試合は前半34分、玉田選手がゴールを決めると一時会場が騒然となったが、応援は、好プレーが出ると日本コールが上がりその後停滞、試合に見入る、の繰り返しだった。日本がブラジルに3点差を付けられた午前6時前には、座りながら眠ってしまう客も。店長の竺原さんは「前回、前々回に比べ客は半分ほど。おとなしめな印象も受けた」と観戦の様子を振り返る。また、そのほかの店舗でも同様の状況は見られ、「早朝に及んだ開催時間」「決勝進出が厳しい状況」の2大要素が影響した形といえそうだ。
試合終了後、間もなく渋谷センター街には駅に向かうサポーターであふれ出す。センター街のスポーツバーで試合を観戦したという23歳のカップルは「ブラジルは強かった」と肩を落とした。帰路につくサポーターの中には「負けはしたが得点シーンもあり面白かった」(横浜から来た大学生の吉清さん=男性)という前向きな意見に対し、「楽しかったのは1点入れたときだけ…」(大学生、21歳の鈴木さん=男性)、「日本は精神的に弱すぎる」(中目黒に住む会社員の大久保さん=男性)など、がっかりしたという意見が大半を占めた。
その頃センター街の入り口付近では、混乱を防ぐため警察が「立ち止まらないでください」などのアナウンスを繰り返し、帰宅を呼び掛ける。テレビ各局をはじめとした多くの報道関係者も付近を取り囲む中、一部では小さな小競り合いも起きたが午前7時前には騒動も収まり、渋谷の街は朝の落ち着きを取り戻していた。