
渋谷駅東口に4月11日、テント型の特設シアター「渋谷 ドリカム シアター」がオープンする。
オフィスビルなどが立ち並ぶ渋谷警察署裏の更地「渋三広場」(渋谷区渋谷3)に建てられた黒いテントの前にはキッチンカーも並び、ドラム缶をペイントしたカラフルなテーブルや、フラッグやちょうちんなどが色を添える。「ドリカムシアター」の名の通り、劇場をプロデュースするのは、「DREAMS COME TRUE(ドリカム)」の中村正人さん。大型スクリーンや本格的な音響も備えた劇場は、中村さんがエグゼクティブプロデューサーを務め、堤幸彦監督がメガホンを執った新作映画「Page30」の「メイン上映館」として、6月まで営業する。
唐田えりかさん、林田麻里さん、広山詞葉さん、MAAKIIIさんの4人が主演する同作は、難解な舞台劇を上演するために集められた4人の「女優」が、30ページの台本を3日で覚えて舞台に挑むまでを、ドキュメンタリー風に描く。同10日のオープニングセレモニーには、中村さんと主演の4人、堤監督らが登場し、テントの前でそろってテープカット。その後ステージに移動し、作品への思いなどを話した。
テントのフロント上部には、中村さんが作曲・編曲し、吉田美和さんが作詞を手がけた新曲「終わりの歌」の歌詞の一部をプリント。中に入ると、床一面に緑色の人工芝が広がる。テント前のフードエリアでは、映画館定番のフードを販売。スタンダード(700円)、チーズ、おろしポン酢(以上800円)などのホットドッグや、チップスにチリビーンズをのせたナチョス(600円~)、ポップコーン(500円~)をはじめ、ドリンクはソフトドリンクや、レモンサワー、タコハイなどのアルコールもそろえる。「いきなりステーキ」とコラボレーションしたフードトラックでは、サーロインステーキ重(1,600円)やステーキ串(800円)などを「ドリメシ」として提供。1会計につきステッカーを1枚進呈する。
渋谷ドリカムシアターについて、中村さんは「一番苦労したのはお金」と笑いを誘い、続けて「収支が成り立たないイベントは『しない』というのが当たり前の時代に、DREAMS COME TRUEが皆さまから頂いてきたたくさんのものを、収支関係なくお返しできればといういう思いで、この映画と、それを上映するための映画館を作った。夢を見ることに遠慮はいらない、という思いを込めた『夢の装置』がここ」と話す。
青山学院大学出身で、ライブハウスやレコード店なども集積する渋谷は、中村さんにとって思い入れのあるエリアでもある。「青学には『表参道』派と『渋谷』派がいて、僕は渋谷の方だった」と言い、ミュージシャンになってからの「公園通りの坂上がり」についても言及。ライブの動員数が上がるにつれ、ライブ会場の箱も大きくなっていく成長過程を指す言葉で、前身のバンドが初めて出演したライブハウス「TAKE OFF 7」や、ドリカムがデビューライブを行った「渋谷クラブクアトロ」を経て、「だんだんと会場が大きくなっていって、旧渋谷公会堂、NHKホール、そして代々木第一体育館にたどり着いた」と振り返る。「僕は中古レコードのマニアでもあったので、レコードショップにも通った」と、当時のエピソードも。
「語りきれないぐらい、渋谷との縁があり、渋谷とシンクロして成長してきた」と話す渋谷の「今」については、「再開発が進み、我々世代が知っている渋谷ではないという声も聞こえてくる」と明かす一方、「その『箱物』の中を埋めるのも我々だと思う。渋谷は今も素晴らしい、エキサイティングな街。僕はもう66歳になるが、これからも渋谷を楽しんで、渋谷で夢をかなえたい皆さんを応援していけたら」と力を込めた。
シアターでは同作の上映のほか、ワークショップやグッズ販売なども予定。6月の上映終了後も「9月まで場所を借りている」(中村さん)と話し、「ファッションショーやヨガ教室、学生の作品上映などで使っていただけたら。ぜひご相談を」とアピールしていた。
鑑賞料は、通常一般チケット=2,000円ほか。6月1日まで。