渋谷区を拠点とするサッカークラブ「SHIBUYA CITY FC（渋谷シティFC）」が3月30日、2025年シーズンの新体制を発表した。

新加入した9選手

　2014（平成26）年に設立された「TOKYO CIY F.C.」を前身に、Jリーグ参入を目指している同クラブ。「3度目の正直」で昇格を果たした今季は、7都県の10チームで構成する「関東サッカーリーグ2部（関東2部）」（Jリーグ6部相当）に所属。4月～9月にかけてホーム＆アウェー方式の総当たり戦計18試合を戦い、上位2チームが「関東サッカーリーグ1部」に昇格する。

　監督は3季目となる元Jリーガーの増嶋竜也さんが務める。元日本代表の渡邉千真（かずま）選手や渋谷出身の木村壮宏選手など27選手中16選手が契約を継続し、昨季までJリーグでプレーしていた6選手や大卒ルーキーなど計9選手が新加入した。増嶋監督は「やっと（関東リーグに）挑戦できる」と開幕を楽しみにしている様子で、「スピーディーで見ていて楽しい、何かを感じてもらえるサッカーをしたい」と話す。攻撃では「得点力を上げたい」と考えるほか、「毎年大事にしている」守備については「攻撃に移行しやすい攻める守備」を仕かけていきたいと言う。

　J1サガン鳥栖に所属（昨季はJ3FC岐阜に期限付き移籍）していた河波櫻士（おうじ）選手は、新加入選手の中でクラブが最初に声をかけた。河波選手は「Jリーグでプレーしたい気持ちがあった」ことからすぐに答えを出さずにいたが「（Jリーグのクラブと）具体的な話が進まなかった」。同窓で「すごく仲が良い」小沼樹輝選手から話を聞いたほか、「最速で3年でJリーグに行ける立ち位置、元JリーガーもたくさんいてJリーグ関係者も見てくれているだろうと思い、（Jリーグでプレーする）チャンスはここにもあると思った」と入団を決めた。

　他の選手同様、会社員としても働いている。午前中に練習し午後から働き満員電車で帰宅する生活が「相当きつくて、最初は正直無理かなと思うこともあった」。それでも「今は慣れてきて、この環境に感謝しているし、経験が絶対に生きてくると思って大事にしたい」と考える。職場は道玄坂。北海道出身の河波選手から見て渋谷は「人が多すぎてちょっと疲れる時もあるが、色々な人がいて建物もすごい。何でもあるのでワクワクする」と話す。

　大学卒業後5年間J3のクラブに属していた坪川潤之（ひろゆき）選手は、自ら入団を希望してチームダイレクターの田中裕介さんにSNSで連絡したという。昨季まで所属していたクラブとの契約満了後「どういう人生を歩みたいか、どこでプレーしたいか」を考えた際に、「日本の中心」である渋谷を拠点にしていることなどから「可能性がとてつもないと感じ、入りたい思いが強くなった」と言う。「ビジネスの世界に興味があった」とJリーガー時代からビジネススクールに通っていたこともあり、サッカーとビジネスの両方に注力している点にも引かれた。人生初の会社勤めは「ITリテラシーやパソコン操作のスピード感などは苦労したが、サッカーも仕事も120％できる環境を求めていたのでめちゃくちゃ楽しいと声を大にして言いたい」と笑顔を見せる。

　中学時代からFC東京の育成組織でプレーし世代別の日本代表も経験した青木友祐選手は大卒ルーキー。コロナ禍で練習ができない時期や、昨年4月にけがをして12月の全日本大学サッカー選手権で復活するなど「思うような結果を出せなかった」中、知人を介して増嶋監督と連絡を取り、渋谷シティFCの練習に参加。「一人ひとりのレベルが高く、このチームならJリーグを目指せるのでは」と感じた。オファーしてもらった「恩もあり、このチームを勝たせたいし人生を変えたい」と熱い思いを口にする。得点王を目指し「20点くらい」を目標に掲げ、「このチームで一番の負けず嫌いだと思うので、皆さんの心を動かせるような熱いプレーをしたい」と意気込む。

　キャプテンは昨年に続き土田直輝選手が務める。「リーグが変わって1年目だが、スピード感が大事で1年で昇格したいので、今年も『勝負の年』」と位置づけ、「実力ある選手がそろってきたし今までの練習などでもいける気がしているので、自信を持ちつつチャレンジャー精神で挑みたい。関東2部でも圧倒できるようなサッカーを届けたい」と話す。

　クラブを運営するPLAYNEWの山内一樹会長は「東京都を脱出するのに10年かかった。長かったという思いが一番だが、思いが募って次のステージに進めたのは良かった。10年で下地がつくれたので、そう簡単に崩れない」と自信をうかがわせる。「次の10年はJリーグにいないといけない。夢に一緒に加わってもらえると、その道のりも楽しんでいただけると思う」と応援を呼びかける。