特別展「鍋島侯爵家と松濤」が12月21日から、白根記念渋谷区郷土博物館・文学館(渋谷区東4、TEL 03-3486-2791)で開催されている。
高級住宅地として知られる松濤エリアにある渋谷区立「鍋島松濤公園」は、鍋島侯爵家が松濤エリアの住宅造成を行った名残で今も残る。鍋島家は1876(明治9)年に紀伊徳川家の下屋敷の払い下げを受け、茶園「松濤園」を開園。茶園廃止後は湧水地を中心とする一画を児童遊園として公開し、1933(昭和8)年には東京市に寄贈し、その後渋谷区に移管された。
同展では、鍋島侯爵家による渋谷での開発や経営の過程や、旧佐賀藩主で華族令で侯爵を授かった鍋島直大(なおひろ)、その敵男で襲爵し松濤の地を開墾した直映(なおみつ)の両侯爵、直大の娘で渋谷で過ごした梨本宮妃伊都子(鍋島伊都子)に関連する資料などを通じて、鍋島家ゆかりの人物や鍋島家と渋谷との関わりについて紹介する。
展示は4部で構成。「鍋島侯爵とゆかりの人々」では、直大・直映侯爵、伊都子など鍋島家の人々に関わる資料を並べるほか、「松濤園の経営」では製茶業や水車業などが行われていた明治期の松濤園の経営について紹介する。「住宅街『松濤』の成立」は、本邸を永田町から渋谷に移し所有地を住宅へと変えた大正時代、地名としての「松濤」が設立した昭和初期などに関わる資料で構成。鍋島松濤公園の開園など鍋島家と渋谷の関わりについて紹介する「鍋島侯爵家と渋谷」へと続く。。
展示資料は約64点(写真18点)。直大へのイタリア公使辞令、直映の侯爵襲爵書付、直映所用の山高帽、鍋島家の邸宅図面、鍋島邸で使われていた洋食器、伊都子の和歌掛軸、梨本宮家の邸宅図面、梨本宮守正王と伊都子の成婚時に制作されたボンボニエール(菓子器)、「松濤園金銀請払帳」(茶園の帳簿)、「諸方地所其他出納帳」(松濤園などの帳簿)、鍋島農園の絵葉書、住宅地造成図面、公園用地(現鍋島松濤公園)を寄贈した際に贈られた東京市感謝状など。
2月15日、3月15日(各日14時~)には、担当学芸員が展示解説を予定する。
開館時間は9時~17時。月曜休館(祝日の場合は翌平日)。入館料は、一般=100円、小中学生=50円ほか。3月23日まで。