先端的科学技術などを基盤に課題を解決する製品やサービスを生み出す技術分野「ディープテック」に特化したスタートアップ支援拠点「SAKURA DEEPTECH SHIBUYA(SDS、サクラディープテックシブヤ)」が1月23日、渋谷サクラステージ(渋谷区桜丘町)セントラルビル12階にオープンした。運営は東急不動産(道玄坂1)。
米マサチューセッツ工科大学(MIT)の産学連携プログラムによる同大教授との連携や、国内外の産官学連携による支援を通じ、日本の研究開発力や技術力の高さを生かしたスタートアップの支援に乗り出す。対象領域は、エネルギーや燃料、素材、AI、ロボティクスなど多岐にわたる。
施設運営はデロイトトーマツコンサルティング(千代田区)が受託。スタートアップに対しブランディングや資金調達面などを支援するアクセラレータープログラムの開発・運営は、日米に拠点を持ち、新規事業創出などを手がけるスクラムスタジオ(渋谷2)が担当する。
木目やグレーを基調にした施設の総面積は778平方メートル。コワーキングスペースと個室型のオフィス、イベントスペース、ドライラボで構成し、面談ブースや会議室なども備える。約200席を設けるイベントスペースは今後、カンファレンスなどに利用していく。
スポンサー企業は、オープン時点でGMOや三菱UFJフィナンシャル・グループ、NTTドコモなど。行政関連では、渋谷区をはじめ、日本貿易振興機構(ジェトロ)などが協力。スタートアップは、2月以降本格的に募集を始め、具体的な事業化が視野に入るスタートアップを対象に、初年度は10社ほどをめどに支援。事業拡大や海外進出などを目指す。
アクセラレータープログラムでは、1on1のメンターシップ制度を導入し、スキルやマインドセットを学べるカリキュラムを提供するなど、1年間伴走型のプログラムを展開。施設ではほかに、テーマ別の勉強会やベンチャーキャピタルなどによる講演、博士研究員学生と企業のマッチングイベントなども企画していく予定。
東急不動産の黒川泰宏執行役員本部長は「まずはコミュニティーをしっかりつくっていくことが重要。われわれがこうした場をつくり、大学や企業、行政をどうつなげていくか。この施設をハブにして、渋谷から世界の未来を動かしていく日本最大級のディープテックコミュニティーの創出を目指す」と話す。
3Dプリンターやコンピューターなどを備えるドライラボも活用。MIT教授陣の監修も得ながらアクセラレータープログラムを担当するスクラムスタジオの髙橋正巳社長は「MITの教授はAIやロボティクスを専門にしている。大学の研究室には設備も整っているが、そうした一部をドライラボに持ってくることで、スタートアップが成長していく場になる」と説明。
「『渋谷』という街を、グローバルなスタートアップの視点から常に考えてきた。テック業界だけでなく、カルチャーの面でも、発信地として世界的に認知されている。ディープテックにもさまざまな分野があるが、例えば素材の先進的な技術を渋谷エリアから導入・実装することで、カルチャーも発信できる流れがつくれる。渋谷は、技術の力をより生活者目線に近づけていける場所」とも。