渋谷をテーマにした展覧会「未来都市シブヤ_エフェメラを誘発する装置」が現在、表参道の商業施設「GYRE(ジャイル)」(渋谷区神宮前5)4階のギャラリー「GYRE GALLERY」(TEL 0570-05-6990)で開催されている。
同展は、キュレーターの飯田高誉さんが、建築キュレーターである太田佳代子さんの共著書「SHIBUYA! ハーバード大学院生が10年後の渋谷を考える」と出合ったことから企画された。会場では同書でリポートされている、都市空間の「過去と未来」「光と影」「ハレとケ」をテーマにした作品を展示する。タイトルにもあるエフェメラはチラシやグリーティングカードなど役目を終えたら破棄される印刷物を指す。空間としてのエフェメラは、短期間に現れる仮設の装置やインスタレーションを指し、都市が多様性や寛容性を育む空間を確保することと意味づける。
出展作家は6人。かつて現在の東急プラザ表参道「オモカド」の位置にあった「セントラルアパート」に事務所を構えていた操上和美さんは、2016(平成28)年8月の毎週日曜に渋谷で撮った「ロンサム・デイ・ブルース」を出品。街で気になった人の後を着いて行きながら撮ることで「面白いと思ったものを反射的に撮れるか」という実験的に撮影したシリーズだという。イラストレーター山口はるみさんは、パルコの広告物を多く手がけていることから、同展の主題となっているエフェメラを「誘発する装置としての渋谷を生み出した一人」として参加。
写真家・畠山直哉さんは、暗きょ化された宇田川に入りライトで照らしながら撮った「アンダーグラウンド」を出品。黒い木版画を中心に制作するアーティスト風間サチコさんの「人外交差点」は、東日本大震災後に制作した作品で、「互いを監視し合う」ことを表現するために「象徴的」な場所として渋谷駅前(スクランブル)交差点を舞台にしている。ツイッター(現X)やフェイスブックのURLを書いた円陣から無数のツイッターロゴが湧き出ている様子で炎上を表現しているほか、防護服を着た人、背中にマイナンバーが書かれた服を着ている人、サッカー日本代表のロゴマークのモチーフとなっているヤタガラスなどを描いている。
写真家・石川直樹さんは山などあらゆる場所を旅しながら作品を発表し続けている。同展では、コロナ禍で思うように外出ができなかった2020年~2021年に出身地である渋谷を撮影した「STREETS ARE MINE」を展示。2年間毎日、夜中に渋谷を訪れてセンター街などで人通りがなくなりネズミが発生していた様子などを「写ルンです」で記録した。
人物画を描く若手のアーティスト友沢こたおさんは、2018(平成30)年に初めて作品を発表したのが、かつて渋谷にあったミニシアター「UPLINK」だった。会場では、スクランブル交差点近くに原爆が投下されたらというAR(仮想現実)を映像化した被爆三世らで構成する「KNOW NUKES TOKYO」の映像も上映する。
開催時間は11時~20時。入場無料。11月29日まで。