頭は漆黒のライオン、体は上質なスーツに身を包んだ人間という謎の生命体「デューク・オルガ」が現在、渋谷・道玄坂の街頭フラッグや再開発の仮囲いを「ジャック」している。
鮮やかな黄色いフラッグに、オルガと共に書かれているのは、「Dogenzaka 2027」「Love each other?」の文字。フラッグ内のQRコードを読み込むと、オルガ自身が更新するインスタグラムアカウントにつながり、「#渋谷道玄坂」のハッシュタグと共に、「現在の私達(たち)は、愛し合えているのだろうか?」「此処(ここ)は、比類のない、唯一無二のプレイス」(以上、原文のまま)などのメッセージがつづられる。
「Love each other?」と共に、キーワードの一つになっている「Dogenzaka 2027」は、2027年に完成を予定する道玄坂エリアの大規模再開発「道玄坂二丁目南地区第一種市街地再開発事業」に向けた言葉。道玄坂を上った左側の「コ」の字型の敷地・約0.8ヘクタールを刷新する同再開発は、京王井の頭線・渋谷駅、渋谷マークシティと南北で直結。大規模複合施設やホテル、広場や緑道などを一体的に整備する。
飲食店をはじめ、ライブハウスやクラブ、ダンススタジオなどが集まり、エンターテインメント色も強かった同エリアでは、2012(平成24)年に地元地権者地権者らがまちづくり勉強会を立ち上げ、2017(平成29)年に再開発準備組合、2022年に再開発組合を設立。年月をかけて検討を進めてきた。昨年2月~12月に既存建物の地上部分を解体し、今年1月に地下解体と新築工事が着工した。
再開発工事が進む中、今回、謎多きキャラクターとして登場したオルガ。仕かけるのは、タワーレコード「NO MUSIC,NO LIFE.」キャンペーンなどで知られるクリエーティブディレクターの箭内道彦さん(風とロック)、放送作家の高須光聖さんらが立ち上げた新会社「Three Branch Children」。地元住民らが主体となり意見を出し合いながら形にしてきた同開発の思いに賛同し、再開発組合の関係者と縁があったこともきっかけとなり、タッグを組んだ。これから完成までの約3年、街の歴史や再開発の方向性なども含め、変わっていく道玄坂のブランディングにつなげていく。
オルガについて、箭内さんは「今回の開発の『リーダー』であり、ブランディングを担う存在」と話す。若者の街というイメージも強い渋谷に対し、「さまざまな世代の人や、いろいろなものとつながってくような存在としてデザインしたのがオルガ。『Love each other?』の言葉も、敷地内に立つビルが2棟向き合っていることや、道玄坂という街が長く『愛』と共に生きてきた街だと感じて考えた。若者とその先輩、古き良きものと新しいものなどが、『どう愛し合っていくのか』というメッセージでもある。それをオルガが伝えて、背負っていく、というのが大きなポイントの一つ」とプロジェクトの真意を明かす。
オルガはインスタグラムを毎日更新。今後も、「対話ができる機会や街中に現れるなどの動きがあるかもしれない」と箭内さん。「みんなで待つ時間、創造する時間になれば。創造だけでなく想像という意味でも、出来上がったものに対して『来てください』と言うのでなく、訪れる人と共に創っていくプロジェクト。その問いかけが、キーワードの『Love each other?』」と話す。
フラッグの掲出は9月1日まで。仮囲いのイメージは引き続き掲出する。