妖怪や幽霊が描かれた浮世絵を紹介する「浮世絵お化け屋敷」が現在、原宿の浮世絵専門美術館「太田記念美術館」(渋谷区神宮前1、TEL 03-3403-0880)で開催されている。
文福茶釜を題材にした新収蔵作品の「新形三十六怪撰 茂林寺の文福茶釜」
同館では2014(平成26)年に「江戸妖怪大図鑑」を開催して以降、2、3年おきに怪談が流行する夏季に合わせて妖怪や幽霊が題材の展覧会を開催している。今年は館を「お化け屋敷」と位置付け作品を紹介する。
展示数は174点(前後期各87点、全展入れ替え)で、38点は近年収蔵した初公開の作品。作家は、画業の初期から「怪奇的な画題」を好んで描いていたという月岡芳年(よしとし)(計71点)やその師匠で妖怪画を「得意としていた」歌川国芳(37点)をはじめとした幕末~明治の歌川派の作品が中心となる。
冒頭「不気味な屋敷」は、複数の小さなカエルが集まった一匹の大きなカエルを描いている歌川芳員の「将軍太郎良門蟇ノ術ヲ以て相馬の内裏を顕し亡父の栄花を見せ父のあだをほふぜんと士卒をはけまし軍評定の図」など、屋敷を舞台にした作品を紹介。
続く「祟(たた)る怨霊」では、怪談に登場する「お岩」「お菊」など現在も怪談で語られる幽霊などが描かれている。豊原国周「形見草四谷怪談」は、お岩と小仏小平の死骸を打ち付けた一枚の戸板を表現するため、一方にお岩をもう一方に小仏を描いた紙を張り付けている。波を顔や手のように描いた芳員の「大物浦難風之図」などが並ぶ「怒れる亡霊たち」、盗賊に殺された妊婦の霊が生き残った赤ちゃんを夫に手渡す様子を描いた国芳の「東海道五十三対 日坂」などが並ぶ「哀(かな)しむ幽霊たち」など、さまざまな表情で描かれた幽霊などの作品も並ぶ。
そのほか、鬼、かっぱ、てんぐ、土グモ、キツネなどさまざまな妖怪を描いた作品も展示。浮世絵では妖怪は人間に退治される場面が多いというが、「慌てふためく人間たち」では、おとぎ話「舌切り雀」の結末で大きな葛籠の中から妖怪が飛び出し老婆が驚いている姿を描いた芳年の「新形三十六怪撰 おもゐつつら」なども紹介している。
担当学芸員の日野原健司さんは「不気味な浮世絵からユーモラスな浮世絵まで、さまざまな妖怪や幽霊が描かれていると思う。浮世絵師の描いた絵は細かいストーリーが分からなくても、見るだけで何となくその場面が楽しめるそんな工夫がされている作品ばかりかと思う。妖怪や幽霊が好きな人、大人から子供まで幅広く楽しめる作品になっていると思うので、そういうところを多くの方に楽しんでいただけたら」と話す。
開館時間は10時30分~17時30分。入館料は、一般=1,200円、大学生=800円、中学生以下無料。月曜と9月2日~5日、17日・24日は休館。同29日まで。