JR線の上空を東西方向に横断する「北側自由通路」に面して接続するJR渋谷駅「新南改札」が7月21日、初電から供用を始めた。駅中央から恵比寿・代官山方面まで約400メートル南側に離れていた従来の新南改札は、20日終電後に閉鎖され、今回の新たな改札へと移転した。
乗り換えの利便性向上や、駅構内の混雑緩和などを目的に、渋谷駅周辺の100年に一度の大規模な再開発工事に合わせて段階的に改良工事が進められてきたJR渋谷駅。工事により、に埼京線・湘南新宿ライン(以下、埼京線)のホームが山手線ホームと並列化(2020年6月)したことや山手線の内・外回りが同一ホームで島式化(2023年1 月)したことで利便性が大きく向上。一方、駅中心部から遠く離れた旧新南改札は1996(平成8)年の開設以降、長らく「孤立化」していた。
新たな新南改札は、旧新南改札から約250メートル北側(原宿方面)に移動。国道246号線沿いに6階建ての新駅舎の建設が進む中、その3階部分に完成した。従来の新南改札は埼京線ホームのみ接続していたが、移転に伴い、山手線ホームにも直接アクセスできるようになった。
移転に伴う渋谷駅の変化について、JR渋谷駅の山村大輔駅長は「渋谷といえばハチ公というイメージがあり、今まで人の流動がハチ公口に集中し混雑していた。(新たな)新南改札のオープンによって流動が変わり、分散化することで安全性が高まる。今までアクセスしにくかった246の南側への移動もしやすくなり、回遊性が高まる」と、安全性と利便性の向上を挙げた。
同日11時過ぎには移転開業セレモニーが行われ、長谷部健渋谷区長やJR渋谷駅の山村駅長をはじめ、渋谷エリアマネジメント、商店街連合、再開発関係者らが参加した。
長谷部区長は「私自身、原宿で育ち50年余り暮らしているが、渋谷と原宿は今のようにつながっておらず分断していた。街の発展とともにつながり、渋谷と原宿間の回遊性が高まった。この10年くらいの渋谷駅周辺の開発では、渋谷川を整備して代官山・恵比寿と渋谷をつなぐ開発を進めている。まだ開発は続くが、今回の新南改札の移転が、恵比寿・代官山方面への回遊性向上を高める大きなきっかけになると思う。多くの人々に利用してもらい、渋谷の南エリアの魅力を発信し、さらに渋谷の街を好きになってもらいたい」と期待を寄せた。
渋谷駅構内やその周辺では、改札移転を知らせるポスターを多数掲出しているほか、誘導員の配置や、駅員が朝から「移設のお知らせ」を入れたティッシュを配るなどして、新たな新南改札の利用を促していた。
旧新南改札は20日終電後に供用を終え、現在は仮囲いで閉鎖。同時に改札のあった3階から1階を昇り降りするエスカレーターも廃止された。JR線の上空をまたぎ、旧改札口と、昨年11月に桜丘エリアに完成した複合施設「渋谷サクラステージ」南端をつなぐ「南通路」の供用は継続され、渋谷3丁目エリアと恵比寿・代官山方面の東西移動の利便性は損なわれない。エスカレーター廃止に伴う1~3階の昇降移動について、JRではホテルメッツ渋谷内のエレベーターの利用を促している。南通路の利用時間は5時30分~24時30分。
新南改札の供用開始と同じタイミングで、同日から渋谷駅西口と渋谷サクラステージ、渋谷フクラスの地下をつなぐ「西口地下歩道」も開通した。246で分断される桜丘エリアと渋谷駅周辺エリアを地下でつなぐ新通路の開通に伴い、上空・地下共に渋谷のエリア分断を解消し、渋谷駅周辺の再開発工事の重要課題である「複層的な歩行者ネットワーク」の形成がまた一つ実現に近づいた。