長谷部健渋谷区長が5月29日、渋谷ヒカリエ(渋谷区渋谷2)9階ホールで開催されているLINEヤフーによるイベント「Hello Friends! W!th LINEヤフー」に登壇し、自治体におけるコミュニケーションアプリ「LINE」の活用事例を紹介した。
同イベントは、同社の広告事業の一環で例年半期に1回程度開催しているもので、パートナー企業らの事例を紹介するBtoB向けの企画。長谷部区長は「安心安全で便利、そして快適な世界」を目指す取り組みを紹介するセッションに登壇した。
SNSやコミュニケーションアプリが犯罪に利用される事案もある中、同社はプラットフォーマーとして「安心して利用できるサービスを提供し続けること」に重きを置いている。ユーザーの暮らしに焦点を当てた取り組みとしては、安否確認機能などの「防災・災害対策」、目的や嗜好(しこう)に合わせて移動手段を提示するサービス「MaaS」領域の「交通」、小中高校向けの保護者連絡システムなどの「教育」に取り組んでいる。
渋谷区は、LINE(当時)と地域の課題を企業などと共同で解決していく包括連携協定「シブヤ・ソーシャル・アクション・パートナー協定(通称S/SAP、エス・サップ)」の第1号として、2016(平成28)年に同協定を締結。役所のデジタル化を進める中で、翌2017(平成29)には区の公式LINEアカウントを開設し、まずは子育て支援サービスを始めた。現在では住民票の写しなど証明書の発行や犬の申請などのオンライン申請、落書きや公園の不具合などの通報、区立図書館の書籍の検索・予約ができる図書館機能などを搭載。AI(人工知能)を取り入れたチャット機能を導入しているほか、区の防災・災害ポータルサイトも連携。友達登録数は8万6000人(5月現在)を超えている。
長谷部区長は「今まで行政ができなかったことで、区が単体でシステムをつくろうとすると非常に莫大なお金がかかる。そこをお互いにリソースをかけ合わせていって課題を一緒に研究しながら取り組みを進めることで、僕らのモチベーションになった」と振り返る。
LINEを日常使いしている層には身近な一方で、高齢者への普及が懸念されるが、区の公式LINEアカウント利用者は50代が最も高い22.3%で70歳以上でも15%だという。区ではデジタルデバイド事業にも取り組んでおり、スマートフォンを「持っているけれど使い方が分からない人がたくさんいる」ことから、使い方を教えられる人が「近くにいるという状況をつくり出したい」とも。
今後の展望として、「働く人をデジタル化・ロボット化=デジタルレイバー化していこうとしている」と言い、職員らの窓口業務の軽減とともに作業を効率化し、デジタル化することでの予算削減やデータを活用したマーケティングなどに期待を込める。
イベントではほかにも、文章生成AI「ChatGPT」を搭載したAIチャットボットの活用、飲食店のDX化などをテーマにしたセッションも展開。サステナブルをテーマにしたセッションの一環として、28日には「脱酸素」ライブツアーにも取り組んでいるバンド「ORANGE RANGE」がライブを行い、セミナー参加者に加え招かれたファンクラブ会員ら500人以上来場。「以心電信」「花」「上海ハニー」などを披露し盛り上げた。
LINEヤフーは併せて、ユーザーにも「LINEを身近に感じてほしい」と区立宮下公園(MIYASHITA PARK内)でブースやキッチンカーなどを展開。飲食店など区内100店舗以上が参加する「LINEミニアプリ」を活用したスタンプラリー(6月2日まで)も行っている。