4月にカナダ・バンクーバーで開かれた「バンクーバー・ファッショウイーク(VFW)」に参加した日本発のインクルーシブ・ファッションブランド「SOLIT!(ソリット)」の凱旋(がいせん)イベントが5月14日、渋谷ヒカリエ(渋谷区渋谷2)8階「8/COURT」で始まった。
2020年9月に社会起業家の田中美咲さんが立ち上げた同ブランド。障がいや身体上の理由、ジェンダーなどで既存の服を着るのが難しい人でも着られるセミオーダー・ファッションブランドとして、多様な価値観や地球環境に沿いながら、「誰も取り残さない」オールインクルーシブな社会の実現を目指す。VFW 初日となる4月23日(現地時間)に初のランウェーショーを開き、14ルックを披露した。
イベントでは、「Fashion Values Society -DE&Iを知る、感じる、繋(つな)がる3日間」と題し、展示に加えギャラリーツアーやワークショップ、トークセッションでも来場者にバンクーバーでの「体験」を伝える。会場には、ランウェーで発表したルックの中から7体を並べ、ショーの様子を捉えた写真や映像、服の詳細などを記したパネルなどで、ブランドの理念を発信する。
田中さんは、ブランドが提案する服について、「デザイナーズブランドなどと比べると、パッと見はいわゆる普通の形。でも、細かいところで今までその『普通』が着られなかった人が着られるようになっている」と話す。可動域が広くなるよう脇の下にマチがあるトップスや、手や指が不自由な人でも着やすいように、シャツも表から見るとボタンの部分が裏は全てマグネットで合わせられる作りになっているなど、細かい箇所にも工夫を凝らす。
カラフルなさまざまな言葉のワッペンを全身にあしらった「PROTEST DRESS」と名付けた一着は、「思いが服に表れるとき」をコンセプトに、ドレスに「地球環境も、動植物も、人も」「I’m Ally for all」などの言葉をまとわせた。「DAWN ONE PIECE」は、肩ベルトでウエスト位置が調整でき、車いすでの着用やセクシャリティーを問わない着こなしにも合わせられるデザイン。ジャケットを羽織ると3ピースにも見えるようにした。
ギャラリーツアーでは、ショーにも参加した4人が、それぞれ約30分にわたり、心地よく楽しむためのファッションや障がいのある当事者として現地で何を感じたかなど、各自の視点で案内役を務める。
トークセッションは、映画やドラマなどで当事者の役に当事者を使わないことなども問題視されているエンターテインメントやメディアでの多様性の在り方などを考えるセッションや、今回起用した難民のモデルにフォーカスするセッションなどを予定する。トーク中は、ディスプレーに英語と日本語を表示。トークの様子は全てアーカイブに残し、オンラインでも配信する。
田中さんは「多様性やインクルーシブ、ダイバーシティなどの言葉がよく聞かれる中で、言葉だけが流れていってしまって、結局何なのかが分からないという方や、当事者じゃないと話してはいけないという雰囲気もあると思う。今回はちゃんと、そこの真実にたどり着くように、フワッとした感情を持っている方も考える方向性が分かるようになっている。『多様性』というキーワードなどに興味ある方たちにも、とてもフィットすると思う」と来場を呼びかける。
「まずは話を聞いてみたり、 話を聞くのが苦手であれば展示をチラッと見たり、本当にちょっとでもいいので『触れる』ということからスタートすることが大事。自分のスタイルに合わせて気持ちよく触れられる状態で関わってもらえたら」とも。
開催時間は11時~16時30分。入場無料。5月16日まで。