銭湯「小杉湯原宿」が4月17日、同日神宮前交差点に開業する新商業施設「東急プラザ原宿『ハラカド』」(渋谷区神宮前6)地下1階にプレオープンする。経営は小杉湯(杉並区)。
1933(昭和8)年に高円寺で創業した老舗銭湯「小杉湯」の新店。小杉湯は1933(昭和8年)年に建設(2004年改修)され、国登録有形文化財に登録された宮造りの建物で営業を続けている。季節風呂や企業と協業した風呂を企画するなどし、東京都の1日の銭湯利用客が平均144人のところ、400~500人、週末の多い日には1500人が利用するなど人気を博している。
しかし、同建物で営業することにこだわる中、修繕費が年間400~500万円かかり財務体制として「全く先が見えない」状況に、「新しい挑戦をしていかないといけない」と考えたという。「銭湯文化、引いては文化が経済を回していることを証明しないとこの建物で続けられない」と、原宿に出店。一方で、「ビジネスで何かを成したいわけではなく文化を残していきたい」とも強調する。
同社は、自宅に風呂がある時代に足を運んでもらうからこそ「いつもとは違うちょっとした幸せを感じてもらうことが銭湯の魅力」と考え、銭湯を「日常の中の非日常」と定義。小杉湯原宿も「日常性を大切にして作った」と言う。
風呂場は男女ほぼ同じ広さで設計。白を基調にした浴室は天井高3.2メートルと一般的な銭湯に比べて低いが、銭湯絵師・中島盛夫さんが描いた富士山が近くに見られる点をアピールするほか、天井の照明は「反射した光が落ちてくるよう」に設計するなど工夫した。洗い場は9つ、浴槽は小杉湯の特徴であるミルク湯に加え、44度の熱湯、水風呂の3つを用意し、「温冷交互浴」ができるようにした。同時に入れる人数は20人程度となる。脱衣所に用意するドライヤーはコインタイマー式(3分20円)で、トイレには男女共にベビーベッドを備える。
同社は、地下1階フロアを「チカイチ」と命名しフロア全体のプロデュースも担当。小杉湯原宿のほか、パートナー企業がコーナーを展開。サッポロビールはビールスタンドを出店し主力商品「黒ラベル」を生・瓶で提供。アンダーアーマーは、ランニングステーションとして荷物の預かりに応じるほか、ストレッチスペースを展開。「マイトレックス」は商品を無料レンタル。オープン時はヘッドスパと美顔器を用意し、順次拡大していく予定。花王は「花王石鹸(せっけん)」(現・花王ホワイト)をテーマにせっけんの展示などを行う。小杉湯原宿の浴室内では「メリット」「エッセンシャル」など同社が展開するブランドの商品をアメニティーとして採用している。
若者やインバウンド客など固有のターゲットではなく「誰にも閉じない衆浴場を作りたい」と考え、あえてサウナを作らず、5月12日までのプレオープン期間は、原宿地域(神宮前1丁目~6丁目)に住む人や働く人のみが利用できるようにした。5月13日以降は、プレオープン期間中の混雑状況を踏まえて方針を検討する。利用者は平日で300~400人、週末で400~500人、男女比は6対4程度と見込む。
営業時間は7時~23時(プレオープン中は7時~12時、18時~23時)。入浴料は、12歳以上=520円、6歳以上~12歳未満(小学生)=200円、6歳未満(未就学児)=100円。営業認可はスーパー銭湯だが、毎日利用するに当たり「必要な条件」と考え銭湯の料金に合わせている。木曜定休。