画家・平松麻さんの個展「脈脈(みゃくみゃく)」が現在、代官山のコンテンポラリーギャラリー「LOKO GALLERY(ロコギャラリー)」(渋谷区鶯谷町、TEL 03-6455-1376)で開催されている。
1982(昭和57)年生まれ、東京都出身の平松さんは29歳から独学で絵画制作に取り組み、展覧会での作品発表を軸に、新聞や雑誌、書籍などの挿絵も手がけてきた。俳優・小島聖さんとのユニット「おもいつきの声と色」では紙芝居も制作。油絵の具を積み重ね、掘り取り、研磨するなどして作る重厚な絵肌の上に、自身の「体内」に存在するという静謐(せいひつ)な「風景」を描いてきた。
「脈脈」と名付けた個展は今年6月に北海道・函館でも開いている。平松さんは「自分の体内に子どもの頃から広がっている景色を描いて発表してきた。展覧会をする度に、作品を見た人から『懐かしい』『知っている気がする』と言われることが多い。ということは、やはり私が潜って描いている絵(の景色)は皆も同じなのではないかという感覚が増した。潜っていくときに脈々とつながっている、自分だけではなくて古代からつながっている命綱のようなものをたどっていくと、下に下りていく勇気が増すような気がして、脈脈というタイトルを付けた」と展覧会名について話す。
今回展示している作品は、一部を除き全て新作。油絵17点、自身初となる銅版画7点。肉眼で作品を見られる場ならではの展示がしたいと、ギャラリーに併設する地下1階のカフェにも挿画作品の原画を展示し、マッチ箱に描いた絵にストーリーを付け映像化した動画も初めて流している。29歳で作家活動を始めて12年がたち、作家としては「中学生」とほほ笑む。
ロコギャラリーでの展示は今回が3回目。同ギャラリーオーナーの遠藤和夫さんは「今まではいわゆる『風景』を描いてきた彼女が、なぜそういうものが自分の体内に広がっているのかを突き詰めていったら、(1階に展示している)『現実と現実と現実』『原石II』『疾走、どこまでも』の3作品になった。いろいろとさまよっていた感じから、何かをつかんで本人が納得し始めているのでは」と話す。
制作を続ける中で平松さんが言語化した「脈脈」は、「自分がしている絵画で『潜る』作業が言葉にできたなという感覚。『生きている』という感じがする」と、今後も自身のキーワードになっていきそうだ。「いつも大小含めて40作品ほどを同時制作している。函館では街の外れのカフェで展示をした。扱ってくれる人や見てくれる街の人の雰囲気を大事にしている」と言い、「そういう活動自体も、自分の制作の過程の段階も脈脈ということなのかも」とも。
開催時間は11時~18時(日曜・月曜休館)。入場無料。12月23日まで。