企画展「深掘り!浮世絵の見方」展が12月1日、原宿の浮世絵専門美術館「太田記念美術館」(渋谷区神宮前1、TEL 03-3403-0880)で始まった。
浮世絵の「押さえておきたい」知識やマニア向けの「ディープな視点」など、さまざまな鑑賞の仕方を深掘りする同企画。7章で構成する同展では約100点を展示する。
第1章では、国内外で知名度の高い葛飾北斎「冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏」を中心に取り上げ、絵師によって異なる波の形や、葛飾の作品に使われている人工的に作られた合成顔料「ベロ藍」などを紹介。葛飾の「諸国瀧廻り 和州吉野義経馬洗滝」は表と裏の両面を展示。滝の一部で墨の上にベロ藍を擦り重ねることで水の色に「深み」を出す工夫がされているのが見られるという。
続く第2章では浮世絵の制作過程を紹介。絵師が描く下描き「画稿(下絵)」や、木の板に貼り付けて紙も一緒に彫ることからほとんど残っていないという画稿を清書した「版下絵」、版木(木版)から色を指定するために刷る「競合摺り」などが並ぶ。
浮世絵は、着色したい部分を残す凸版画でありながら、対象物の輪郭が細い線でかたどられている。1ミリに3本程度の線を彫っている髪の毛、1文字約5ミリの大きさで左右反転させて彫られた文字など、第3章では「線」について深掘りする。最初に200枚程度を刷り、人気が出ると刷り重ねていたという浮世絵。刷られた時期により線や色、描かれているものなど違いがあるという。第4章では「刷りの違い」に焦点を当て、異なる時期に刷られた同じ作品を並べて、雨などの線や色の違いを比べられるようにしている。
担当学芸員・日野原健司さんが「一番マニアックかもしれない」と話すのは、浮世絵の「端」に着目した第5章。浮世絵の一般的な判型「大判」より小さいサイズは、大判1枚に2点または4点分の作品を刷った後に裁断されているのが見て取れる作品などを紹介している。第6章では、題名や絵師・彫師、版元(=出版社)のサインなど浮世絵に記されている文字に着目。初代歌川豊国が用い始め、歌川派の絵師がアレンジしながら用いた「年玉印」などを紹介。最終章では浮世絵に描かれた江戸時代の庶民の暮らしを紹介。浮世絵を販売する版元の店先を描いた「今様見立士農工商 商人」(歌川国定)の中には、同展で展示している作品も描かれている。
日野原さんは「いろいろな切り口があるが、初心者の方からマニアックな方までいろいろな視点で浮世絵の制作や技術、鑑賞のポイントを楽しんでいただければ」と呼びかける。
開館時間は10時30分~17時30分。入館料は、一般=1,000円、高校・大学生=700円、中学生以下無料ほか。今月24日まで。月曜休館。同館は2024年1月から3カ月程度、機械工事のため休館する。