かつて渋谷・松濤エリアで栽培されていたという「渋谷茶」を復活させるプロジェクトが11月、立ち上がった。
プロジェクトを立ち上げたのは、一般財団法人「渋谷区観光協会」と、いずれも渋谷区内に本社を置く伊藤園(渋谷区本町3)、プランティオ(神泉町)、ゼットン(神南1)の4者で、「渋谷ブランド」の創造、新たな土産の開発、体験コンテンツの創出を目指す。
明治時代、松濤エリアでお茶の栽培が始まり、周辺一帯に茶畑があった。それは「渋谷茶」と呼ばれ、上渋谷村を中心に、原宿村、宮益町、代々木村、幡ヶ谷村と広がり、約200~300ヘクタールの広大な茶畑だったという。当時、渋谷駅前交差点の一角には「梅原園」という日本茶専門店があったが、静岡茶や宇治茶の流入、土地の宅地化が進むなど環境の変化により、「渋谷茶」の栽培はなくなった。時を経て2019年、鍋島松濤公園(松濤2)にかろうじて現存していた「渋谷茶」の苗木が発見されたことから、プロジェクトは動き始めた。
プロジェクト立ち上げに伴い、「SOCIAL INNOVATION WEEK2023(SIW2023)」で11月9日、「幻の銘茶『渋谷茶』復活プロジェクト始動!渋谷を彩るあらたな体験コンテンツ」と題したトークセッションを行った。
プランティオの芹澤孝悦社長は冒頭で、「西原から代官山の方まで広大な渋谷茶の畑が広がっていた。渋谷ではお茶が一大産業だった」ことを紹介。伊藤園販売促進部長の小林哲也さんは「渋谷と縁のある当社が、古地図の茶畑マークなどを頼りに『宝探しのような』気持ちで探った結果、鍋島松濤公園にかろうじて自生していた渋谷茶の4本の苗木を発見した。区の許可を得て芽の一部を切り取り、静岡の茶畑で培養した結果、少しずつ育ち始めた。来年の春には100本のほどの苗木が取れる見込み」と話した。
トークセッションの進行も務めた渋谷区観光協会の小池ひろよ理事は「大都会の渋谷でアーバンファーミングが展開されていく未来もワクワクするが、そこから一緒に育てる体験を提供するツアー企画、お茶摘み体験、お茶をいれる体験、土産の開発など、『お茶』という言葉の先にはたくさんの広がりがある」と期待を寄せる。
同プロジェクトでは現在、渋谷茶の苗木の提供先を募集している。提供は無償だが、渋谷の街で渋谷茶の苗木を「大切に育てられる」団体、農園運営者などを優先して抽選で決めるという。希望者は特設サイトのフォームで申し込む。