スタッフと客が言葉を一切使わずジェスチャーで接客、注文する「言葉のない喫茶店」(渋谷区神宮前4)が11月1日、原宿に期間限定オープンした。
入り口のドアの前には「ここから言葉NG」の文字が並び、BGMだけが響き渡る店内。ルールは2点。コーヒーやカフェオレ、オレンジジュース、コーラなど計10種類のドリンク(各800円)の中から、入店前にメニューボードを見て注文の品を決め、店に一歩入ったら瞬間から「言葉」は禁止。注文も口頭ではできず、客は身ぶり手ぶりで、どのドリンクを持ってきてほしいかをスタッフに伝える。
カフェを企画したのは、店員が「友達」としてタメ口などで接客する「友達がやってるカフェ/バー」(神宮前6)などをプロデュースする、クリエーティブディレクター明円卓さん率いるチーム「entaku」。「もしこの世から言葉がなくなったら」という明円さんの発想から、伝わりづらいジェスチャーのみでの注文方法をあえて採用。「言葉がないと大変だなという思いや、逆に意外と伝わるものだなとも思えるなど、立ち止まって考えるきっかけになれば」(明円さん)と、体験してみて得る感覚を大事にしてほしいと言う。
実際に店を訪れると、エプロンを着けたスタッフが片手を広げ「こちらへどうぞ」と席へと案内。席に着くと、注文票を持ったスタッフが来て無言で客の注文を待つ。記者は「コーラ」を注文するため、まずコップの形を小さく手で描き、両手の指先を細かく速めに動かし、さらにコップを口に持っていくしぐさをして、眉間にしわを寄せることで炭酸のシュワシュワを表現。空中で文字を書くことを思いつき「コーラ」と書いてみせたが、スタッフは両手で「×」を描き、「エア筆談」はNGというルールが伝えられる。そこで「もうこれでいいです」と伝えるため頭を下げ、注文が確定。実際に提供されたのはジンジャーエールだった。
ドリンクが運ばれて来た際、「どうでしたか?」というような表情を浮かべ、こちらの反応を待つスタッフに対し、悲しそうに首を横に振ると、スタッフも申し訳なさそうな表情を浮かべ、手を合わせ「ごめんなさい」のポーズで対応。着ていた黒い服で「コーラ」の色を伝えると、「それは惜しかった」という笑いが互いに起き、笑顔でジェスチャー体験を終えた。
「言葉は便利なものだけど、使えないとなると、言語が違ってもフラットにコミュニケーションできるようになる。不便さを感じるとしても、いろいろな体験が生まれたらいい」(明円さん)と、実験のような場をイメージしている。「出てくるドリンクが間違っていても面白いと思ってもらえれば」とも。
営業時間は11時~19時(30分制、予約優先)。今月5日まで。